私たちの始まりと過ごした日々を

朝香るか

1.旦那様への不満と心配と

「ねぇ、覚えているかしら?」

 お互いの誕生日と結婚記念日。

 そして出会った日。


 祝ってほしいと思うのはいけないことなの?


「信じられる? あんなに熱烈にアタックしてきたくせに」

 電話の相手は大学時代の悪友。

 

毎夜、合コン三昧だったルミに言う。

『あんたもノリノリで心理合戦していたじゃない』


 私たちはもうアラフォー。

得るものもあれば失うものもある。


 年を取ることの喜びを知る代わりに、

シミしわがふえる。


 旦那の頼りがいに比例して、

肥満になっていく白髪も増える。


 もういい年なのだ。

いろいろな意味で。

「昔はね。いまは会社の付き合いだって言って終電でも帰ってこないのよ。

 それも毎週」

おかげでタクシー代がかさむ。

徒歩での帰宅も増えて靴のすり減りがひどい。

靴を買い替える頻度も増える。

『あっ。

ルミのだんなさんって会社でも重役に昇進したって話していたよね』

「そうそう」

『付き合いって色々あるんじゃない? 

感染症にかからないためにも

門限くらい決めておいたらどう?』


「そうしたいわよ。でもダメなんですって。

 一番偉い人が飲み会大好きで

断れないことが多いんだって。

 若手を逃がすので精一杯なんだってさ」


『大変なのね。あ、旦那、帰ってきたからごめんね』


 軽い挨拶をして電話を切った。

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