自分本位

凩カエデ

第1話 主人公とヒロイン




世の中がいう青春に紛れている違和感

それが僕だった

周りから冷たい目で見られること

度々感じる劣等感が嫌だ

当たり前を努力するのが嫌だ

両親の期待してない態度が嫌だ

担任教師やクラスメイトが

「またかよ」という顔するのが嫌だ

慣れてしまおうとしている自分が嫌だ


押し潰されそうになりながら耐え続け、気付けば高校三年生の夏を迎えていた







最初の友達づくり失敗した僕は相変わらず独りで歩いている


青春ドラマみたい楽しげに会話をして歩いている同級生を見るとげんなりした気持ちになる



朝からすこぶる機嫌が悪くなったがこれからの楽しみを想像すると直ぐにどうでもよくなった



学校の校門を過ぎると部活を終えた生徒たちがいた

「めんどくせぇ」と思いながら足早に教室に向かった



前のクラスメイト集団に紛れて教室に入り直ぐに自分の窓側の一番後ろの席に着いた



チャイムが鳴るまでガヤガヤとした教室の中で僕は視線を教室の真ん中に向けた


邪魔な女子生徒の中に輝く光がある

その光"工藤由実"は僕がこの息苦しい学校生活の中での救いだった


誰にでも明るく接していて生徒会役員やクラス長などの責任のあることにも率先して取り組み

周りにはいつも人が居て、嫌いになる要素を持ち合わせいないのではないかと思ってしまうほど完璧だった



僕には手が届かない事ぐらいは分かっている

それでも思わず目で追ってしまう


悲しいことではあるが人にはそれぞれ最初から決められた役がある

そう僕は思っていた


漫画や映画でいったら彼女はヒロインであり、現実でもヒロインの役だと僕は思っている


僕は顔すら描かれない、ぼかされ通りすぎるだけの通行人、そんな役が僕にはお似合い


交わることなどあるわけがない



だから僕は"主人公探し"を始めた

誰となら彼女と一緒に居ても仕方ないと諦めがつくか

そんな悲しいゲームを始めた


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