いつしか芽生えた想い

朝香るか

電話の向こうは愛しい声

1話

 何時しか芽生えた想い


 近くにいるのに

 届かない。



 近くにいたのに

 離れてしまう。

 そんな恋愛の癖。


 あなたにもあるかもしれない。

 彼にもあるかもしれない。



 勉学している間にすり抜けていく彼との時間。

 でも、ずっと一緒にいれるよね?


 毎日電話するようになってどれほどの時間が経ったろう。

 わたしの一年前の手帳には

 面白半分でつけ始めた星マークが並んでいるよ。クリスマスからずっと。


『もう11時だな。おやすみ』

 

 小さなスマートフォンから愛しい声が聞こえる。


「おやすみなさい」



 今日も私は返事をする。

 いつもならそこで切れるはずだった電話。

 けれど今日は違った。『あ、言い忘れてたけど

 もう俺からは電話しないから』


「……え」


『いや、メールもだな。

 これからはただの友達

 ってことでよろしく』


 アイツは言った事は曲げない。


 それを知ってるから動揺した。


「……これからって何よ。

 今だってただの友達でしょう」


 電話から聞こえる笑い声。

 私はその声が好きなのに。



『お互い、受験に向けて勉強しないとな。

今まで愚痴聞いてくれてサンキュ』


 私は声が震えないように言葉を紡ぐ。

「バーカ。キモチワルイっての」

『美沙、ゴメンな』

 そんな言葉を残して電話は切れた。


「ゴメンってなんなのよ。

馬鹿にしないでよ。私は暇つぶしの相手だったのかな……拓斗」


 私は声をあげて泣いた。

 拓斗がどんな思いで

 話したのかなんて

 考えもしなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る