終章 私達のお母様

*第127話 二人はラッキーペアー

上も下も無く、右も左も区別出来ず、

前も後ろも存在しない世界に彼女はただ居る。


見えているのでは無い、

聞こえているのでも無い、

感覚せず知覚のみ有る。


死の瞬間や時間の経過など一切不明だ。


しかし彼女は自分がここに居ると言う自我を認識した。


***


『どうでしたか?充実した人生でしたか?』

かつてルルナであったものが問いかける。


(えぇ!とても楽しかったわ!)

エルサーシアとしての生を終えたものが答える。


(ところで貴方達の目的は達成が出来たのかしら?)

彼女は思うがままに生きて来た。

ルルナ達の本当の目的など気にも留めて来なかった。


『まだ実験の段階ですからねぇ。

結果が出るまでには数万年掛かるでしょう。』


(随分と気の長い話ですこと。)

『私達にとっては一瞬ですよ。』

此処では時間と言うものが存在しない。


『今の所では順調ですから、期待が持てますね。』

(何を期待しているのかしら?)


『肉体を保持したままで私達との直接のコミュニケーションが

可能な存在の誕生ですよ。』


(私がそうだったのでは無いの?)

『貴方の場合は仮想人格を移植したのですから、

根本的にイレギュラーな存在だったのですよ。』


(あぁ、成る程ねぇ~

つまり種族としてと言う事ですわね。)

『そう言う事です。』


(そんな事が可能ですの?)

『さぁ?どうでしょうねぇ。』


(何故そんな事をしますの?)

『独りは淋しいのですよ。』

(お友達が欲しかったの?)

『そう言う事です。』


(現状では無理ですの?)

『お友達と言うのは対等な存在でしょう?』

(あぁ~そう言う訳ですのね。

今の人類から見たら貴方達は神様ですものね。)


『でしょう?それでは淋しいのですよ。』


(上手く行くと良いわね。)

『何を他人事みたいに言っているのですか?

さぁ!次の世界へ行きますよ!』


(え?私も行きますの?)

『当然ですよ、ラッキーペアーですから!』


(それなら、そうと早く言って下さいましな!)

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330664476573536

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