*第101話 汚れちまった悲しみに

真新しい血と、引きずられた跡が

草むらの中に続いている。


今日でさえ無ければ、

いや半日ずれていたら彼は死なずに済んだ。

そうしたら死神は場所を移動していたのだ。


「なぁ~んだぁ、小銭しかねぇよぉ。」

金目の物は無さそうだ。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330662437644660


「まぁいいか。」

驢馬ろばと荷車が手に入ったから良しとした。


人殺しにもうに慣れた。

強盗団のメンバーとして裏社会で名が通っていた。

心も体も汚れてしまったが、さりとて悲しくも無し。


「私は此処よ、モスクピルナスへ来て。」


精霊との契約など、別にどうでも良いが、

もしかしたら会えるかも知れない。

もう一度あの子に、伊予ちゃんに会いたい。


どんなに姿が変わっていても、

一目見れば判るに違いない。


あぁ・・・会いたい。


横井は伊予に恋をしていた。

ふざけた振りをして抱き締めたり、

口づけたりしたのも総て本気だった。


だから一緒に死ねたのも本望であった。


こうして自分が転生しているのなら、

きっとあの子も居る筈だ。

手掛かりは唯一つ、ならば行こう!


南へ、南へ、欲望のおもむくままに。

罪人つみびとの足跡を刻み、大陸の深淵へ。


「私は此処よ、モスクピルナスへ来て。」


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