*第34話 愛と死を見つめて

この世界にある魔法は総て四始祖達が残したものである。


魔法を創作する条件は明確なイメージと、

それを表現する言葉を組み上げる事。

そしてこの世界のシステムに登録申請の手続きを行える

人型精霊との契約だ。


明確なイメージとは、実際に見た事が有る場合や、

理論的な成り立ちを理解している場合を言う。


従って全くの空想の産物を魔法化する事は出来ない。

仮にタイムトラベルをイメージしても、

この世界のシステムに承認されたりはしない。


手のひらから水を出す魔法が在るのは、

水道を明確にイメージ出来たからである。


治癒や蘇生魔法は存在しない。

怪我や病気がたちまちに治るなど、

現実には見た事も聞いた事も無いからだ。


***


広場で教練を受けておりましたら、

森の中から十数人程の戦闘員らしき人達が

わらわらと出て来ましたの。


「あれも訓練ですの?」

チャーミィーが片手を腰に当てながら指を差しましたの。


「随分と汚れていますわね。

こちらに向かってきますわよ。」

オレリナ様も違和感を口になさいましたの。


「やぁ!きっと海賊だよ!」

ここは森の中ですわ殿下。


きらりと光が見えたと思った瞬間に

ルルナが私の前に居て何かを握っていましたの。

石弓の矢ですわね。


「もしかしたら私を狙ったのかしら?」

「そうみたいですね。」

随分落ち着いていますのねルルナは。

私もですけれど。


だってそうで御座いましょう?

私を傷付け様としても無駄ですもの。


「貴様ら何者だ!何のつもりか!」

聞いて答える様な間抜けな襲撃者はいませんわよ教官様。


「我らは聖女に用がある!邪魔をするな!」

間抜けでしたわ!


あら?あれはカルアン?

何故ここに居ますの?

どうして血まみれですの?

危ない事をしてはいけませんわよカルアン。


あっ!なんて事をっ!


大変ですわ!

カルアンが大怪我をしてしまいましたわ!


「カルアン!避けて!」


あぁ・・・

カ・・・カルアンが刺されましたわぁ~

どうして・・・


おのれぇ~!

よくも私のカルアンを~!


「『吹けよ風!呼べよ嵐!地獄突き!』」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330659041439494


一切の容赦など致しませんわよ!

塵も残さず滅して差し上げますわ!


***


今日で5日目、ずっと昏睡状態ですの・・・


襲撃者は全員殺しましたわ。

あんなにも激怒したのは初めてですわ、

私にもそんな感情がありましたのね・・・


空中に巻き上げて雷撃で焼き尽くしてやりましたの。

肉の一筋、骨の一欠片ひとかけらも残してやるものですか!

当然で御座いましょう?


カルアンを虐めて良いのは私だけですのよ!

「ねぇそうでしょう?カルアン。」


話し掛けても返事がありませんの・・・


「マルガリテが泣いていましたのよ。

お守りを渡せばよかったって。

私のパンツをおねだりするなんて

貴方らしくて素敵ですわ。」


話し掛けても返事がありませんの・・・


「なにも貴方が危ない真似をしなくても宜しかったのですよ?

私とルルナは無敵ですもの。

でも嬉しゅう御座いましたわ、

命がけで守ろうとして下さいましたのね。」


話し掛けても返事がありませんの・・・


「ご褒美に取って置きのパンツを差し上げますわ。

ルルナとお揃いのフリフリ紐パンツですのよ。」


だから・・・ねぇカルアン・・・

目を開けて下さいましな・・・

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