桜色の思い出

@390shaa

思い出す

ふわっと風が吹き桜色の花びらを舞い上げる。

その色を見ると毎年思い出す‟男の子”がいる。


あの子、どうしてるかな。



『せんせー!!俺、絶対有名になるから!』



そう言ってにかっと笑って卒業証書を手に手を振ったあの子。



『俺、せんせいのこと、マジで好きです。』



真面目な顔でボタンがほとんどなくなった制服を着て告げられた。



『でも、俺、夢があるから、だから、、、せめて俺の気持ちだけ、

 覚えておいてください。』



深く頭を下げたその子の頭は桜色に染まっていた。


卒業式の日になんっていう色の頭してんのよ。


って思ったけれど、それが夢のためだとわかっていたから、我々教師は黙認したんだっけ。

その最後にみた桜色の頭がずっと思い出に残っているのは、あの時、たしかに私の胸が思わずときめいてしまったから。


今までだって生徒に告白される事がなかったわけじゃない。

でも、彼らは結局恋に恋してただけだったり、あの世代特有の欲が爆発しただけだったり罰ゲームだったり、


きっと一過性だろうな、、、


そんな風に感じるものばかりだったから、こちらもそれなりに対応できた。

告白しといて、返事をもとめなかったのは後にも先にも‟あの子”だけだったな、、、。


ふわっと口元がほころぶのが自分でもわかる。



年が違いすぎてまったく恋愛対象にならなかった男の子。


街を流れる今女子高生たちにじわじわと人気になってる4人組ボーイズグループ。

そのメンバーの中にあの桜色の頭を見つけるのは、もう少し先の話。



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