第6話 滅紫




 おまえの両親には補修者として特訓してもらう事になった。

 身の安全は保障するから、両親の事は気にせず人命救助をしてろ。


 元ナンバーツーヒーローであり、現補修者である師匠にそう言われたが。

 気にせず、など、無理だ。

 何故なら、悪の手先が出たと情報を得て出向いた先には、ほぼ、両親が人質に選ばれているのだ。


 悪の手先がナンバーワンである自分の両親だとの情報を得ているが故だろう。

 でなければ、こんなところにと驚愕する場所でも両親が人質に取られるわけがないだろう。

 つまりは、わざわざ両親を探し出して人質に取り、ナンバーワンである自分の動きを封じようとしているのだ。


 本来ならば、安全第一で両親にはヒーローの本拠地に住んでそこから一歩も出てほしくないのだが。

 両親は嫌だとはっきり言ったし、自分も両親の自由を奪いたくなかったので、住居を転々と移動してもらいながらも平穏な生活を送ってもらっているわけだが。


 人質になる頻度が高すぎる。


 ヒーローオタクの両親がわざわざ自ら人質になっているのではと邪推してしまうくらいに高すぎる。

 師匠に頼み込んで、師匠の知人に両親の警護を頼んでいるのに、まるで役に立たない。

 一度も会った事もないその知人を何度クビにしてくれと師匠に怒鳴ったか。

 もう両の手を合わせても足りないくらいだ。


(まあ今回は師匠が直接警護していると言っていたから、安心か)


 けど、補修者だなんて。

 護身術を学ぶのは賛成だけど、自ら危険に。

 いや。自分がヒーローの道を進んだ時点で、危険が及ぶのは明白だった。

 わかっていて、選んだのだ。




『さあ。もうあんたの泣きべそを見るのはこりごりだ。一緒に闘うよ』






「強くならないとな」






 両親の前で笑顔で助けに来たと言えるように。












 けれどすぐに無理だと悟った。












(2022.11.20)


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