洗濯機

3.14

洗濯機

ガタンガタン

洗濯機の音が、鳴り響く。

「はぁ、」

俺は、ため息をついた。

今日は、日曜日。なのに雨が降っている。

小降りなんてものじゃない、どしゃ降りだ。出掛けようにもこの雨じゃ無理だ。

無論、出かけられる金もない。しがない大学生だ。今ここに住んでるアパートもボロボロ、今にも天井から雨が降ってきそうだ。

電化製品が付いてあるからここにしたが、やはりオンボロアパート。やめておくべきだったか…。

俺は、雨による憂鬱さでブツブツと文句を言っていた。

しかしそんな事を言っていても何も変わらない。

せっかくの日曜日だし今日は、家でゴロゴロしまくろう!。

俺は、寝転がり手元にあった漫画を読むことにした。

そして何分か、経っただろうか。

俺は、何か異変を感じた。

もしかして…、俺は、すぐに立ち上がり部屋のドアを開けた。

ギィィ…、そこには、長い廊下があった。雨のせいか、いつもは、付いている蛍光灯がチカチカと点滅していた。しかし俺は、意を決して進むことにした。ヒタ、ヒタ…、自分の足音だけが響く。

あっ。もうすぐだ、左に扉が見えてきた。

俺は、ゆっくりと近づきドアノブを握った。

「キィィィ〜」

そこには、年季の入った風呂場と洗濯機があった。

あぁ、やっぱり、

俺は、そう声を漏らした。さっきからガタンガタン、動いていた洗濯機が止まっていたのだ。

最近、何故か洗濯機が急に止まる、俺は、少しイライラしてきた。

「さっきまでガタンガタン動いていたのに急に止まんなよ」

つい洗濯機相手に言ってしまった。

俺は、また電源をつけ直しさっきの部屋へと戻って行った。部屋につき、また寝転んでいると少しウトウトしてきた。雨は、相変わらず降っている。俺は、小さくあくびをし、そのまま夢の世界へと行ってしまった。ガタン…ガタン、。


ガタガタガタガタ突然耳を壊す様な爆音が鳴り響く。

「はっ、ぁ、何だ…この音は…。」

「どこから鳴ってやがる…。」

「この先か…?」

俺は、部屋のドアを開けた。

するとまた大きな音が鳴り来る。

「ゔッ…この野郎…」

俺は、また薄暗い廊下、いや爆音が鳴り響く廊下を歩いた。するとうっすらと扉が見えてきた。

「ここだっ」俺は、勢いよくトビラを開けた。

ガタガタガタガタガガタガタガタガ

「うるせぇなぁっ」(ピッ)

すぐさま電源ボタンを押し洗濯機の暴走を止めた。

「急にガタガタ鳴らしやがって。ふざけんなよ、」ガンッ。俺は、軽く洗濯機を叩いた。

「あ〜うるさかった、ちょっとは、静かに動けよ」

俺は、そう言いまた電源を入れ直し部屋へ戻った。

「ふぅ、疲れた。寝るのは、辞めてテレビでも見っか」

俺は、机の上にあったリモコンを手に取った。

こうして長い間テレビを見ていると、また何か異変に気づいた。

「ん?、何か静かくね…?」

勿論テレビもついているし雨も降っている。その音では、無い…俺は、すぐさま洗濯機へと向かった。

「なんだよ…、」洗濯機は、いつものように動いていた…騒音を除いて。

「はあー、ガタンガタン鳴ってねぇから、また止まったのかと思ったじゃねぇか」

「静かすぎるんだよこのオンボロが」


「"ガガンッ"」


俺は、かなり強めに洗濯機を蹴ってしまった。洗濯機の表面は、大きく凹んでいる。するとそのとき、

ピーッピーッ。洗濯が終わった音だ。

俺は、洗濯機の上のフタを開けた。

そして洗濯物を取ろうと手を突っ込んだ。

「ジュプッ…」

「んっ?何だこれ…、」何だか真っ黒いネバネバした物が洗濯機の中で蠢いている。

そしてそれが突っ込んだ俺の手に絡みつく。

「えっちょ、」どんどん俺の手を傳っていき体に登ってくる。

「う、うわァーッ、手を抜こうにもネバネバして離れない。肩にまで登ってきて物凄い力で引きずり込んでくる。足の先が少しずつ浮き出す。

そしてその粘液は、体全体へと回って行き。

視界が大きく傾いた。足が大きく上がり、顔の目の前には、黒く蠢く"何か"が迫っていた。

しかし"それ"は、引く力をやめず…

ドゥプン…、真っ暗な世界へと、引きずり込まれて、しまった。

ザァーー。

雨は、降っている。

雨は、相変わらず降っている。

まるで何事も無かったかのように。

ぴちょん、ぴちょん…。

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