離縁宣言されたので、離縁いたします。

世界の西にあるデイビス国は、海も山もある。そのため、夏は暑いし冬は海風が強くてとっても寒い。


 ようやく夏の暑さが終わりを告げて秋に変わり秋風が吹くようになった。そろそろ、栗やさつまいも、カボチャや葡萄などの秋の食材が収穫できる時期がやってきた。



「リディア、君とは離縁させていただく! 愛するメアリーとの間に子供が出来たんだ」



 入ってきたのは、この国・デイビスのムーア公爵家の分家当主である私の夫であるカルロ・ムーロ。

 その後ろには、胸が大きくて魅力的なボディをしていらっしゃるメアリー……という女性。


 まだ婚姻関係がある人の前で腕を組んでいる。これ、私が悪者みたいね。



「みなさんいらっしゃるのよ? そんな大事なことをこんなに大勢の人の前で言って」


「ちょうどいいじゃないか。皆が承認だ! 俺とお前は離縁し、俺はメアリーを妻にできる!」



 何をバカなことを言ってるんだろう……この人は。私が何も言わないのをいいことに、彼は勝ち誇った顔をしている。



「……そうですか、分かりましたわ」



カルロ様が持ってきた【離縁届】にサインを私がすると、バカな二人は「やった! これで結婚できるね、メアリーちゃん」と言っている。

それだけじゃなくて、大勢の人が見ている中でキスをし始めた。



「じゃ、早く出ていってくれよー! 元、公爵夫人っ?」


「言われなくても出て行きますよ」


「その部屋は、メアリーちゃんの部屋になるんだから」



 はぁ、そうですか。

 離縁したんだから居座るつもりはないわよ。


 彼らは再び、腕を組むとこの部屋から出ていった。



「……皆さんすみません。お騒がせしてしまって」


「リディア様、気にしないで下さいまし。噂は常々聞いておりましたし……ですが、まさか誕生日になんて何を考えていらっしゃるんでしょうね」


「えぇ、折角皆さん準備してくださったのに台無しにしてしまって申し訳ないですわ」



今日は実のところ私の誕生日だった。いつもお茶会をしているメンバーで私の誕生日会をしていただいていたのに、あの人の乱入……。



「リディア様は、ご実家に帰られるんですの?」


「えぇ、そうしようかと思います。もう離縁しましたし、今日にでも帰ろうと思っています」



 誕生日会を早くお開きにすると、私は自分の部屋に戻った。トランクに自分のドレスや服、ジュエリーを入れると外に出た。



「本当にいかれてしまうんですか?」


「えぇ、離縁しましたし私がいる必要ありません」


「そうですか……。リディア様、お元気で」



私は結婚してから今までお世話になった執事やメイド、料理人さんたちにあいさつをして公爵邸を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る