工場
アルスとリエラは馬車に乗り、職人街を訪れている。
服屋アルス・リエラの自社工場を作るためにノスタ公爵家が所有する物件を視察するためだ。
職人街は様々な工房があり、商人が多く訪れていてとても活気がある。
馬車は職人街に入って5分ほどの所で止まった。
馬車を降りると、この職人街では一際大きい建物がある。二階建ての建物でノスタ公爵家が所有する建物のようだ。
「大きい...」
アルスは建物の大きさに驚いた。
「元々、職人街を管轄する役所が入ってたらしいけど、数年前に移転したらしいわ。」
「だから、こんなに大きいのか。」
リエラの説明にアルスは納得した。
そして2人は建物に入った。
1階は広いひとつの部屋になっていた。役所時代に使われていた椅子や机は残されており、裁縫師見習いの研修生と道具や材料を揃えれば直ぐにでも製造を開始できる状態だ。
そして2階は4つの部屋に別れていた。2階も1階同様、椅子や机が残されていた。
アルスとリエラは一通り建物を見た後、具体的に工場について話し合った。
話し合った結果、1階は全て工場とし、2階の4部屋は事務所、従業員控え室、応接室、倉庫とする事にした。
事務所には5名の職員を配置し運営や研修生への指示等をしてもらう。
5名の職員については、ショッピングモールに出店するお店の従業員と合わせてリエラが集めてくれることになった。
これにより、製造拠点と店舗については整いつつあった。
あとは材料についてだ。布生地などについては全てユース商会で用意してもらえるようにシリルに手紙を通じて頼んでいた。ちなみにシリルからは供給して貰えるよう確約を貰えている。
「良かった、これで製造を開始できるわ!!」
リエラは安堵していた。
服屋アルス・リエラに1番力を注いでいるのはリエラであり当然のことだ。
「アルス、いつから製造する?」
リエラは直ぐにでも製造を開始したいようだ。
工場と言っても手作業に違いは無い。早めに製造をして在庫を確保しておきたいようだ。
「そうだね、ユース商会から材料とか揃ったら早速始めようか。」
こうして今日の視察は終わった。
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視察から1ヶ月ほどたった。
リエラはこの間、事務所職員やお店の従業員集めに奔走し、事務所職員5名、お店の従業員8名を集めてくれた。事務所職員達は既に働き始めてくれている。
リエラは仕事が出来るとアルスはとても感心した。
アルスも工場の整備を中心に行なった。
材料が揃い、研修生が来ればすぐに製造出来る状態に整備した。
そして、今日はユース商会の会長シリルがノスタ公爵邸を訪れていた。
今はロフと応接室で話し合いをしているため、アルスは話し合いが終わるまで部屋の外で待つことにした。
シリルが部屋を出たのはアルスが待ち始めて5分ほど経ってからだった。
「シリルさん、ご無沙汰しています。」
「これはアルス様。お元気そうでなによりです。」
シリルは笑顔で応えてくれた。
アルスがシリルを待っていたのには理由がある。ユース商会に頼んでいた布生地等の材料の件だ。
「この前話した布生地などの材料の話をしたくて待っていたのですが、お話大丈夫でしょうか?」
「あぁ、その件ですね。実は今日ある程度の量用意してきました。この後、工場の方に届けようかと。」
「えっ!もう準備して下さったんですか!?しかも、会長自ら届けてくれるなんて。」
アルスは驚いた。まさかもう準備してくれているとは思わなかったからだ。
「私自身アルス様達の事業は大成功するだろうと思い、急ぎ準備致しました。工場にも興味がありましたから。」
シリルはかなり期待しているようだ。
「良かったら工場の見学でもしていきますか?」
「はい、ぜひ見学させてください。」
この後、アルスは材料を届けるシリルと共に工場に向かい、工場を見学してもらった。
工場を見学したシリルは工場に可能性を感じたらしく材料の安定供給と材料の値引きをしてくれることになった。嬉しい話だった。
見学を終えてアルスは職人街の裁縫師達の工房に工場の始動を伝えた。
次の日には各工房から20人もの研修生を集めることができ、製造が開始するのだった。
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