アルスとロフ
建設祭の次の日の朝。ノスタ公爵家の庭園でアルスは訓練をしていた。
サーナス侯爵領に居た時から続けている日課であり、剣術と武術を練習する。
アルスは木剣で素振りをしていると後ろから声をかけられる。
「素晴らしい腕前だ。」
アルスは素振りをやめて振り向くとロフの姿があった。
「おはようございます。ノスタ公爵。」
「おはよう、アルスくん。朝から訓練とはさすがだよ。」
挨拶を交わすとロフが近づいてきた。
ロフは運動ができる身軽な服装で左手には木剣を持っている。
「ノスタ公爵も朝は訓練をされるのですか?」
「毎日ではないけどね。朝はできるだけするようにしているよ。」
ロフはそう言うと素振りをはじめた。
ロフの素振りは無駄のない綺麗な素振りだ。普段から訓練をしているのがすぐにわかった。
「ノスタ公爵、見事な腕前です。」
「そうかな?アルスがくん、良かったら手合わせしないかい?」
ロフはアルスに提案した。
アルスとしては断る理由もなかったため承諾した。
アルスとロフはお互いに向き合い、木剣を構える。アルスはロフの目を見た。
(目がさっきまでとは違う!)
ロフの目は騎士の目をしていた。
今にも斬りかかってきそうな程だ。
アルスとロフは先にどちらが動くか、睨み合っていた。
先に動いたのはアルスであった。アルスは素早くロフの間合いに入り、切りかかる。
この時、アルスは違和感を感じた。
ロフの動きがスローに見えたからだ。アルスはそのままロフに斬りかかり、勝つことが出来た。
「いやー、さすが加護持ち!勝てないな...」
ロフはステータスボードを見してもらったことからアルスが8神の加護を持っていることを知っている。負けても驚かなかった。
アルスの剣術、武術の腕前は剣神、武神の加護があることから上達スピードが早い。
既にこの世界トップクラスだ。簡単に負けるはずがない。
その後、少しロフと話しているとリエラの話になった。
「アルスくんはリエラのことどう思っているんだい?」
「リエラはとても大切な友達です。」
「1人の女の子としてはどうなんだい??」
「...」
アルスは答えられなかった。
1人の女の子としてみる。恋愛対象として見れるかという話だ。
貴族は政略結婚がほとんどである。恋愛結婚はそうそう無い。
「リエラはアルスくんのことを好いているようだからね。父親として応援してあげたいんだ。」
ロフはリエラをとても大切に思っている。父親愛が強く伝わってくる。
「まぁ、まだ君たちは5歳だ。婚約とかの話はまだ早いが、もしアルスくんがリエラと婚約してもいいって思った時はぜひ頼むよ。リエラには幸せになって欲しいんだ。」
「ノスタ公爵は、政略結婚には反対ということですね。」
「あぁ、やっぱり恋愛結婚をして欲しいんだ。私も恋愛結婚だったからね。」
ロフは妻のサリーとの話を聞かせてくれた。
サリーは現国王の妹であるらしい。ロフは公爵家ということで小さい時から親交があり、仲を深めていき、恋愛をして結婚したそうだ。
本当に好きな人と結婚出来て良かったとロフは言う。
なぜなら、政略結婚で結婚した貴族達は夫婦仲が良くなく、色々と問題を抱えている家が多いからだ。リエラにはそうなって欲しくないし、そうさせないようにロフは日頃から気にしているようだ。
ロフの話を聞いて、アルスは自分の将来のことをイメージした。
アルスはサーナス侯爵家の長男であり、家を継がなければならない。そして、結婚して世継ぎをもうけなければならない。
(真剣に考えないとな...)
アルスは初めて真剣に将来の事を考えた。
そうこうしてるうちに朝食の時間になった。今日は商人が訪ねてくる。
アルスはロフと共にダイニングに朝食を食べに向かった。
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