焼きそば

ノスタ公爵家のメイドはとても優秀だ。翌日の朝までに全てを揃えてくれていた。仕事が早い。

アルスは朝食後、すぐに調理に取りかかった。

調理にはノスタ公爵家の料理人3人が手伝ってくれた。

ノスタ公爵家には10名の料理人がいるが全員一流の料理人だ。

今回、手伝ってくれる料理人たちはその中でもトップ3と呼ばれる人達だ。

焼きそばという聞いたことの無い料理を作ることに料理人魂が燃えていた。この3人にはソース作りを担当してもらう。

ソースのレシピを渡し、アルスは麺づくりをはじめた。


麺の生地はまず、小麦粉、塩、重曹、水をあわせてこねて、こねた生地をのばして細く製麺する。最後に茹でることで焼きそば用の麺は完成する。

この世界にはパンは存在するが麺は存在しない。パンには重曹またはベーキングパウダーが必要だ。もし、パンが存在しなければ、麺を作るのはかなり厳しかった。


料理を始めて2時間、こちらの世界に来て初めての料理であったが難なくできた。本当に検索スキルは便利すぎる。


ソースを担当してくれた料理人たちも終わってひと息ついていた。

ソースの出来はとても良かった。さすが一流の料理人達である。


最後は野菜と豚肉を加えて、麺とソースを絡めて焼いて焼きそばの完成だ。

ソースのとてもいい匂いがキッチンを覆う。


(これこれ!この匂い!)


アルスはとても懐かしい気持ちになった。

この匂いにつられて料理人全員が集まった。味見をしてもらうと大好評であった。

アルスももちろん味見をする。


(う、うますぎる!!)


アルスは完璧な仕上がりに感動した。これも検索スキルと料理人たちのお陰だ。


アルスはロフ達にも食べてもらうことにした。今日のランチに出してもらう。

もちろん内緒にしてだ。

みんながどんな反応をするか、アルスは楽しみで仕方なかった。


ランチの時間になり、ロフ、サリー、サイル、リエラがダイニングに集まる。

朝食は別々に皆とっているため全員が顔を合わせるのは今日初めてである。

既に料理は並んでいる。当然焼きそばもだ。


「今日は見たことのない料理が並んでいるね。とても不思議だ。」


「でも、いい匂いがします!!」


サイルは不思議がり、リエラは釘付けになっていた。


「まぁ頂こう。いただきます。」


「「「「いただきます。」」」」


ロフに合わせて、感謝をし食事がはじまる。

焼きそばは、箸で食べるのが普通だが、フォークにしておいた。箸が存在しないこの世界で1から扱い、広めていくのは難しいと考えたからだ。


皆、フォークを使いながら焼きそばを食べる。


「とても美味しいわ!」


「お母様!こんな美味しい料理、食べたことありません!!」


サリーとリエラ大興奮だった。


「この料理を作った料理人を呼んでくれ。」


ロフは近くにいたメイドに呼んで来るように指示した。


「旦那様、その料理を作ったのはアルス様でございます。」


メイドはそう答えると4人の顔がアルスに向けられる。


「これをアルスくんが作ったのか!!」


「まぁびっくり!料理まで出来るなんて!」


「すごいな、本当に5歳なのか?」


「さすがアルス!」


ロフ、サリー、サイル、リエラはとても驚いていた。まさかこんな料理を一流の料理人でないアルスが作るとは誰も思わない。


「祭りの屋台で出せないかと思いまして、試しに作ってみました!どうでしょうか?」


「ぜひ出そう!これは売れる!!」


ロフは大賛成してくれた。

他の3人も出すべきだと言ってくれたこともあり、祭りで売り出すことがあっさり決まった。


この後、ロフと色々と調整した結果、銀貨2枚で売ることにした。フォークについては、木材から作り無料で配布する。これも検索スキルを使って設計をしたものだった。木材には間伐材を使い、環境に優しい循環型だ。製造については、ノスタ公爵家が信頼する工場に焼きそばと共に商業登録してから外注することにした。少しでも経済を回すためだ。

出店もノスタ公爵家で出店してもらうことにした。


祭りを盛り上げる準備は整った。あとは成功を祈るだけであった。






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