領地視察6
水路整備2日目、今日中に早くも水路が完成するようだ。
そのためまだ魔法の使えないアルスは完成予定の夕方まで、今回の水不足で被害を受けている農地をサノスとセシルと訪れていた。
「これは...酷い...全滅ですね.....」
現場の姿を見てアルスは絶句してしまった。
ここは葉野菜を中心に栽培しているが、前もって報告を受けていた通りの状況であった。
「被害額も相当なものになるだろう。セシル、いま報告されているだけでどのくらいになる?」
「はい、旦那様。モカ様らが集計された現時点での被害額は白金貨200枚程でございます。」
「やはり、そのくらいにはなるか…」
サノスはセシルの報告に納得しているようだが、アルスは白金貨200枚と聞いてとても驚いた。
この世界ではすべての国で共通通貨・共通貨幣が使われている。使われている貨幣は、白金貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨だ。
価値を日本円で表すと、
白金貨 1,000,000円
大金貨 100,000円
金貨 10,000円
大銀貨 1,000円
銀貨 100円
銅貨 10円
に相当する。
つまり今回の被害額は2億円に及んでいた。
カマの農業生産額は年間で白金貨5000枚。
この規模の被害額はかなり深刻だ。
「父様、住民たちへの支援策を考えねばなりませんね。」
アルスはすぐにでも支援をしなければならないと思い、サノスに支援するように提案した。
「あぁ、実は支援金を出せるようすでにモカに指示をしてある。安心しろ。」
それを聞きアルスは安心した。
農地を見て回っていると、次第に時間が過ぎていく。すると、役所の職員が馬でやってきた。
「お知らせします。無事、水路が完成しました!」
その言葉にアルス、サノス、セシルは笑顔になった。
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夕方、ついに水を流すことになった。
バーノア川まで来ると前日までなかった立派な水門が完成しており、水路もしっかりとできていた。
住民たち現地へやってきたアルス達を見つけると歓声を上げた。
「「アルス様ー!!」」
あまりの歓声にアルスはとても驚いた。
アルスの先を歩くサノスもびっくりだ。
「アルス、人気者になったな。」
サノスはアルスの人気ぶりに少し嫉妬したが、それよりも自分の息子が領民に受け入れられ、認められていることに父親として誇りに思った。
水門にはすでにモカ一家が待機していた。モカが手を振ってくれる。
「こっちよー!!!!」
モカは水路が完成したことに興奮しているのか、とても声が大きかった。
そして、いよいよ水門を開く時がやってきた。水門は番人が開閉装置を操作することで開閉できる。
「さぁ、アルス。お前の合図で水門を開く。頼むぞ。」
普通こういうイベントでは領主の合図で行うものだがサノスはアルスにその権利を譲った。
「父様、いいのですか?」
「あぁ、いいのさ。お前の手柄が大きいしな。あと、合図の前には挨拶があるから頼むぞ!人気者!」
サノスはアルスの人気ぶりに嫉妬し、挨拶をしたくなかった。つまり逃げたのだ。
たが、アルスはそんなこと気づくことも無く、挨拶をする。
「皆さんの協力のおかげでわずか2日でこの大規模な事業を終えることが出来ました!この水路はみんなで作り上げたものです!!本当にありがとうございました。これからもみんなで協力してこの地域が発展していくよう頑張ろー!!!」
こう挨拶すると一気に歓声が沸いた。
そしてその時はきた。
「開門!!」
アルスが合図するとバーノア川から水が流れ込む。水は1度貯水池に溜まり、水路に流れていく。バーノア川は大きな川だけあって10分程で貯水池が一杯になり水路を流れる。
こうして、水不足は解消した。
それと同時にアルスの名声が国中に広がるのである。
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