第10話 理想の自分と今の自分
「はい、喜んで!」
「馬鹿かあんた!」
妹から紅茶のティーカップが投げつけられ、避けきれず顔面に激痛が走る。
「熱い!」
「ちょっと模月先輩どうしたんですか、家族でも人質に取られましたか!?」
「ははは、やっぱりここは退屈しないなぁ」
「ごめんなさい説明不足だったわね」
模月先輩はコホンと咳払いし姿勢を正した。
「最近あなたが色んな人と関わりを持ってるって学校で有名なの」
「それでほら私その恋愛とか疎くてデートとかした事無かったから
そんな貴方と数日だけでも付き合って、恋人になれば何か変われるんじゃないかと思って」
おいおいどんな薄い本の導入だよ、いやってか薄い本の導入の方が余程丁寧かもしれない。
俺の周りには頭のおかしい人しか集まらないようだ。
いったいいつルート選択とパラメータの割り振りを間違えたのだろうか、
生まれつきか。
悟史は笑い転げ、妹はスマホで変動を血眼で確認し、琴音さんは変なオーラを
出していた。
「先輩変わってますね」
「えっとまた私、変な事言っちゃったのだとしたらごめん」
このいい方だと、ちょくちょくこの様な自体があるのだろう。
「まあ、せっかくの相談部への依頼なんですし数日くらいであれば付き合ってみたら」
ここで模月先輩をアシスタントするって事は変動的には好都合なのか。
嫌でもまてよ!?これ以上俺の女性関係が増えよう物なら翌日学校の俺の机が墓に代わっていてもおかしくないのではないか。
ここは丁重に断ろう。
「でもいきなり付き合うとかはちょっと…
「みんなには納得してもらえるだけのデマを流しておくから心配しなくていいよ」
「僕なんかで良ければ数日の間よろしくお願いいたします」
持つべき物はやはり宇宙人である。
「なら先に明確な期間を決めてくれないかしら、ダラダラとした付き合いにはなって欲しくないの」
今度は琴音さんが模月先輩に鋭い目線を送るが、模月先輩は余裕の表情である。
「確かにそうね、期限をきめましょうか」
「なら体育祭終了の日まででどうです?丁度一週間くらいでいいんじゃないでしょうか」
「いいわね、良太君もそれでいいかしら?」
「私は一向にかまわん!」
「これも何かの流行りなの?」
模月先輩が困った目線を妹に向ける。
「いえ、兄は初めで出来る彼女に緊張しているだけですよ」
「それならいいけど、やっぱり私も初めての事だから緊張するわね」
「なら僕が相談役になりましょうか?面白そ、いえ、同じ部員として助けたいので」
「あなたなら慣れてそうだし安心ね、とゆうか貴方と付き合ってもいい気がするわ」
ヤバい、付き合ってすらいないのに寝取られ展開だ。
「僕もうすでに彼女がいるので、流石にそれは駄目ですねって良太君顔怖い!」
オッといけない、封印されしクズの力が湧き出てきそうだ。
スマホのメールの着信音がなったので見てみると、冗談だよ♡と送られてきていた。
気持ち悪いが、クズの力は収まる。
「でも先輩に彼氏がいなんて以外でした」
見た目や口調は少しきつい感じはあるが、実際話してみると気さくで優しくて
それでいて美人なのだからモテるとは思うのだが。
「そうかしら、私なんて面白くもないし真面目でモテないと思う
んだけど」
「そんな事ないですって、実際先輩と話してると楽しいし」
「お世辞が上手なのね、でも嬉しいわ」
そんなつもりじゃないんだけどなぁ。
「じゃあ逆に先輩の好きなタイプってあるんですか!」
妹が身を乗り出して、目を輝かせながら近づく。
いつの時代も恋バナが好物の女の子は多いらしい。
「う~ん、好きなタイプね…包容力があって優しいとか?」
「意外とピュアですね先輩って」
「そうなのかしら、私は基準が分からないのよね
逆にあなたの好きなタイプはどんな感じの人かしら?」
「わ、私ですか?」
逆に自分に返って来るとは思っていなかったようで、首をひねりながら考え始める。
「背が高くて、イケメンで、収入が高くて、それから困った時にはすぐに駆けつけてくれて、落ち込んでたらそっと抱きしめてくれるみたいな」
思わずボソッと口からこぼれる。
「ドラマの見すぎだろ」
「なんか言った?」
「何でもありません」
ギャルっぽい見た目でマジのトーンでそれは怖いって。
「それなら僕の彼女になったら?」
「それは一億と二千年後でもお断りね」
「それは残念だね、琴音さんは?」
「今度一切私の目の前に現れないのなら考えなくもないわ」
「つれないなぁ、流石の僕も傷つくよ」
「口ほどにも思ってないのによく言うわね」
「良太はもちろん俺と結婚してくれるよね」
「俺は男には興味ないから」
ここでタイミングよくメールが来ていて、それに悟史がウィンクしているので見てみる。
「僕、見た目を変えてるだけだから女の子にでもなれちゃうぞ♡」
「もう俺は何を信じていいのか分からない」
力がぬけその場に崩れ落ちる。
「ちょ、どうしたのよ良太!」
俺の意識はそれ以上に考える事を拒否し、気絶する事を選んだ。
目が覚めるとそこは保健室で、消毒液の何とも言えない匂いが漂っていた。
隣には琴音さんが心配そうにこちらをみて座っている。
「良太くん大丈夫?」
「大丈夫だよ」
俺は心配そうに見守る琴音さんに見守られながら体を起こした。
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