僕が生きた日

NOTTI

第1話:戸惑い

 2021年、結愛は双子の子供が生まれた。しかし、彼女はどうしてもこの現実を受け入れる事が出来なかった。なぜなら、彼女は幼少期から心の身体の性が一致しない病気を発症していて、自分は子供を欲しいとは思っていなかった。ただ、彼女は性転換手術を受けるお金も勇気もなかったため、この世に生を受けた性別で生きていこうとしていた。


 彼女が今回産んだ子供は性別が男の子と女の子で男の子の方はお父さんにそっくりで、女の子の方は目と鼻はお父さん、口と輪郭はお母さんとバランスの良い顔立ちをしていた。


 しかし、彼女は両親とは絶縁状態になっていて、子供たちを両親に見せたとしても和解するのは難しいほど両者のあいだには大きな溝が生まれていた。


 経過観察を終えて、1週間後に退院すると、今まで3人で住んでいた2SKのアパートでの生活が始まった。


 ただ、彼女は今でもこの子たちを育てて良いのか分からなかった。実は2人には3年前に生まれた長女がいて、その長女を産んだときも今回と同じ葛藤をしていたのだ。


 彼女はあることが引っかかっていた。それは、彼女の友人の紅愛と萌香にも最近、子供が生まれたが、紅愛はシングルマザーとして、萌香は彼女だけで子供を育てていくことになっていて、彼女とは違う方向に進んでいることが分かった。本当なら彼女たちに子供の育て方を教えてもらいながら自分の体調を整えていきたいところだが、紅愛は仕事の都合で地元を離れ、萌香も結婚したため都内の高級マンションに住んでいるため、彼女の近くに住んでいる子は誰もおらず、彼女はどうやって子供に接して良いのか分からなかった。


 なぜなら、子供たちと過ごしていくうちに上の子との違いが少しずつ顕著に表れていて、育児の大変さを痛感していた。例えば、上の娘が生まれたときは夜泣きもせず、母乳をあげても、粉ミルクをあげても素直に飲んでいたのだが、今回生まれた息子と娘に母乳をあげるとよく飲むが、粉ミルクをあげると息子は嫌なのか泣き出してしまう。そして、息子は夜泣きがひどく、お父さんが休みの日は彼の横に付きっきりで過ごすことが多かった。


 一方で娘は何でもよく飲んで、1日中よく寝ていた事もあり、両親はあまり心配していなかった。


 母親は息子が不安で仕方がなく、どうすると彼も同じようにゆっくり寝て、たくさん飲んでくれるのかを毎日時間があるとずっと考えて、頭を抱えていた。


 彼女にとって今回の子育ても長女の時の子育てのイメージが強すぎて、昔成功していたことが使えないもしくは使えたとしても一時的など新しい壁の前でたくさん足踏みをしながら戸惑うことが少しだが多くなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る