パリランピックに子どもの命を捧げよ。
「障碍者を応援している子どもたちの様子で、世界に元気を与えよう」
コロナコロコロナ禍において開催されたパリランピックのスローガン。感染リスクの高まる中、子どもを動員することに対する批判は高まったが、東京都知事大池菊子は、世論に対して凛として答えた。
「安全安心のパリランピックのために、子どもには犠牲になって頂きます」
非難轟々となる中、多くの市民、プロ市民がヘルメットと角材で武装し、東京都庁に押しかけた。中には、夜行バスで地方から出てきて、東京駅フィクション八重洲口に集まる者もいた。
機動隊と、市民が激突する中で、機動隊が発した言葉が物議を醸した。
「この土人が!お前らもかたわになってパリランピックに出場するか!?」
この発言は、土人、かたわ、パリランピックとスリーアウト発言とされ、機動隊員は懲戒処分となった。その取り調べにて、「あいつらのかぶっているヘルメットなんてね?中に発泡スチロール入ってるだけなんですよ。角材もね?ただの棒だから、俺らの持ってる鉛の入ってる警棒で、ちょいと押してやったら、割り箸よりも簡単に折れるんすよ」と、つかこうへい作品と全く同じテンションで語ったという。
機動隊とプロ市民が衝突し、安心・安全のパリランピック会場の外には、毎日のように流血が流れたし、パリランピックの感染に150万人の小中学生がコロナコロコロナに感染し、1万5000人が自宅療養中に死亡した。大池菊子都知事の見立てでは、後8万5000人が東京で死ぬらしい。パリランピックは、安全安心のパラレルワールドの中で、無事に閉会式まで行われ、完全に成功した。
「……なんてことが私のいた東京ではあったのですが、こちらの世界線の都知事はどんな人なんですか?」
早朝の隅田川で、全裸で発見された男は、毛布にくるまって、ホットココアを飲みながら語った。コロナコロコロナなるウイルスが蔓延した東京、別の世界線から、隅田川を泳いで飛び越えて来たと言う。
保護した手前、放り出すわけにもいかないので、頭の病気を見てくれる病院を探しているが、なかなかベッドが空いてないらしい。
そう言えば、東京都に非協力的な病院が都庁ホームページ公開されているらしいから、そこで調べれば、空いているベッドがあるかもしれない。
都庁ホームページにアクセスすると、本日の感染者数は5万2436人と出ていた。
「Go!富士山麓」
ホットココアを飲みながら、別世界線男はつぶやいた。
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