第20話 修学旅行初日
修学旅行初日の朝はとんでもなく早かった。
午前八時半の集合時間に間に合わせるために起きたのは午前四時、まだあたりが暗い時間帯に起こされたんだ。
わたしは父さんに簡単な軽食をもらい、制服を着て外に出ることにした。
コートは必要ないと思ったのでカイロを持って制服の上にカーディガンを着る。
「
「うん」
夜空がだんだんと白み始めたとき、わたしは普段通学では使わない地元の駅のホームでおにぎりを食べていた。
電車は始発から一時間が経っているとはいえ、かなりホームは閑散としていてましてや制服を着た生徒がいるのは珍しいと思う。
「あ、来た」
電車に乗って西武線に乗って高田馬場で山手線に乗り品川へ、そこで京急に乗り継いで羽田空港の第一ターミナルのうどん店の前が集合場所になっている。
わたしは一応遅れないように余裕を持ってきたけど、意外と早めに着くかもしれなかった。
だんだんと通勤ラッシュの時間帯になって来たのか、京急に乗り始めたときには電車が混み始めていた。
京急の品川駅に着くと、同じ制服を着た子が見えて向こうから駆け寄って来た。
「あ!
「おはよう! 偶然だね」
少し慌てたように日菜がこっちにやってきて、ホッとしているようだったの。
こっちもホッとして彼女の手を握ってしまったんだ。
「よかった……」
「これから空港の第一ターミナルだよね」
わたしはそのときに修学旅行のしおりを片手に話をしようとしていた。
そのときに笑顔になってから話すことにしたんだ。
「そういえば、沖縄まで三時間くらいだよね? 寝れるかな」
「寝れるよ」
スマホはあまり使うことは少ないかもしれない。
でも、連絡とか写真を撮るカメラとして使用は可能になっている。
「それじゃあ。空港まで行こう……」
羽田空港の第一ターミナルのうどん店の前に着いたのは午前八時になったところだった。
わたしは日菜と待っていると同じ班の子が何人か来ているのが見えた。
「おはよ。みんな」
「あ、瀬倉さん!」
同じクラスのみんながほとんど到着してきて、残りはあと三人が来るまでを搭乗手続きの時間まで待つことにしたんだ。
そして、二年生全員が集合して搭乗するために出発ロビーへと向かった。
そのまま飛行機で沖縄へ約三時間のフライトが始まったんだ。
スマホの電源をオフにしてからリュックから小説を取り出して、移動時間には必ずそれを読むことにしたんだけど……バスのときはあきらめるかもしれないけど。
周辺の座席は朝が早かった子が寝ているのか、とても静かで他のクラスの方がにぎやかになっていることが多いんだ。
わたしは父さんが適当に持たせてくれた本は、たぶん書斎で一番新しい本なのかもしれない。
小説は一年のほとんどを冬の極寒の地域で生まれた少女が魔法を使って冒険をするという異世界ファンタジーの小説だった。
でも、一冊読み終わってから自分も疲れが出て一度寝てしまった。
それから意識が戻ったのは沖縄へとたどり着くというアナウンスと、先生たちが降りるために準備をするようにと声をかけているのが聞こえてきた。
「日菜、起きてたんだ」
「うん。もう沖縄に着いたみたいだね」
すっきりしたような表情でこちらに話してくるので、寝不足は少し解消されてきたのかもしれない。
そのときに飛行機が着陸してから、頭上の荷物を下ろしてから空港の到着ロビーに向かう。
「あ、少し暖かくない?」
「確かに……」
みんなが口々に言うように那覇空港に到着して、何となくカーディガンが少しいらないような気温になってきたかもしれない。
そのときにこれからバスで首里城の方へと向かうことになっている。
首里城はわたしが中学生のときに焼失している、父さんによると約三十年にわたって行われていた復元工事が終わってわずか約十か月後のことだったと教えてくれた。
たぶんいまの大学二年生の人たちが一番きれいな首里城を見たのかも。
写真でしか見ることができない首里城はまた復元を行っていくのが進んでいっている。
「すごいね……」
首里城の建物はないけど、昔の写真を調べて比べながら見ていた。
また復元工事が終わるのは数年はかかるから、また復元完了してから来ようと考えた。
スマホで首里城のあちこちを写真を撮りながら、公園のなかを回っていく。
「全然、東京と違うね。建物が」
「うん。もともと琉球王国だったからね。範囲は奄美の方から沖縄県」
歴史が得意というかある程度覚えていることを話していく。
「美琴、この辺って全部残っていたの?」
班の一人が建物がない下の土台の場所を指さしている。
「うん。あそこが世界遺産に登録されている基礎の部分、建物は後から建てたんだ」
そう言った話をしていると、あっという間に時間が無くなってしまう。
そこから沖縄のことが知れる場所で紅型の着付け体験とかをしたり、お昼ご飯とかを食べたりして夕方に一軒目のホテルに入ったんだ。
今日は那覇市のホテルに一泊。
二人部屋で各自のスーツケースを片手にホテルの部屋に入っていく。
「わあ。結構広いね」
「うん。早速着替えよう。制服を汚したくないし」
これから夕飯までは自由時間になっているので、それぞれがおみやげ店を見に行ったり、各部屋で遊んでいたりしている。
「部屋の外に出るときはくれぐれもカードキー、誰かしら持ってて」
「うん」
ホテルの部屋のカードキーを誰かしら持っていないといけない。
誰も持っていないと大変なことになると先生から言われている。
「ベッド、どっちにする?」
「左側が壁の方が良いんだけど……」
「了解」
わたしは希望通り壁に近い右側のベッドの上でスーツケースを開けて、私服と制服を入れ替えていく。
「明日は移動がメインになりそうだね」
「うん、バス移動。動きやすい方がいいよ」
日菜は黒のシンプルなパーカーにズボンに着替え終わっていた。
「やっぱり、スニーカーにして正解だったね。今日は」
「うん。ローファーを持ち歩くの、めんどくさいからね」
通学時はローファーというのが決まっているけど、修学旅行とかは移動距離が長いのでスニーカーを使用することを推奨されていた。
わたしは混色のチェック柄のシャツに黒のスキニージーンズというスタイル。
あまり私服のこだわりがないけどあまり色の派手なものは好みではない。
だいたいが暗めの色かくすみカラーの服とかしかないんだよね。
明るい色を着ても良いけど似合うか不明なので、手が出ないんだよね。
自由時間はLINEの確認とかをしていくことにしたんだ。
あまり連絡とか写真を撮る以外の使用は禁止されているけど、日菜はお構いなしにスマホゲームを起動させている。
「日菜。あまり音量は上げないでね」
「うん、イヤホンしてるからね。今日はイベントだから推しのSSRを出したい」
日菜がやっているのはバンドが主体の音ゲーみたいなもので、とてもハマっているらしい。
夕飯と入浴を終えてからは疲れてしまったので、すぐにベッドに入ったら就寝時間直後に寝てしまった。
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