エルメル攻防戦
ブルターニュ王国の王城であるエルメル王宮では、王都エルメルに全兵力を集結させて決戦に及ぶという意見が多数派を占め、国王アラン五世の勅命を以て実行に移された。
ヴェルサイユ国防軍を正面から迎え撃っても勝ち目が無いと分かっているブルターニュ側の将軍達は、城塞都市としての機能も持つエルメルに立て籠もった方が良いと判断したのだ。
城塞都市には巨大な対空砲も設置されており、これがあれば大空を飛ぶ魔導飛行船の接近にも対応ができる。
つまり、空からの襲撃に応戦ができるという事だ。
「良いか! 何としても持ち堪えるのだ! 我等がここで堪え続ければ、まだ残っている同盟国が救援に駆けつけてくれるはずだ。そうなれば講和の道も見えてくる」
「「おうッ!!」」
ブルターニュ王国は徹底抗戦の構えだった。
◆◇◆◇◆
ローランとオリヴィエが率いるヴェルサイユ国防軍の大部隊は、エルメル付近の草原で艦艇を着陸させ、部隊を上陸させた。
エルメルの堅牢さは有名であり、下手に魔導飛行船による空からの強襲作戦はリスクが大きいとローランは判断したのだ。
「
老練な将軍の一人がそう語る。
「分かっている。だが、ここを落とさなきゃ戦争は終わらない。何として落としてやるぞ!」
ローランは改めて決意を固める。
「でもローラン、落とすと言っても策はあるのかい?」
「勿論さ!」
そう言ってローランはニシシッと悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「……」
オリヴィエは知っている。親友がこんな顔で笑う時はたいてい本当に名案が浮かんでいる時なのだと。しかしそれは必ず、オリヴィエ自身にとって容易には受け入れがたい内容なのだとも。
◆◇◆◇◆
ローランの作戦。
奇襲作戦だった。
ヴェルサイユ国防軍全軍を地上から進軍させて、敵の注意を引きつける。
その間にローランとオリヴィエが密かにエルメルを取り囲む城壁へと接近して聖遺物を使って城壁を破壊。あわよくば対空砲台も破壊しておきたいところだが、そこまでは流石に欲張りすぎというものだろう。
そう考えたローランとオリヴィエはあくまでも城壁の破壊に全神経を集中させる。
作戦決行は月明かりすら乏しい曇り空の夜遅く。
ヴェルサイユ国防軍はエルメルに向けて進軍を開始した。
あたかも夜襲を仕掛けようとするかのように。
エルメルを防衛しているブルターニュ軍は、城壁の内側に籠もりつつ、ヴェルサイユ国防軍への迎撃準備を進めた。
城壁を縦としながら、弓矢や魔法砲撃と言った遠距離攻撃でヴェルサイユ国防軍を迎え撃つ構えを見せたわけだ。
籠城戦をしているのだから、ブルターニュ軍としては当然の戦術と言えた。
しかし、それだけにその動きはローランの思惑通りだった。
その城壁の手前には、既に夜陰に紛れてローランとオリヴィエの二人が迫っていたのだ。
「よし。味方も所定の位置に付いたな」
「うん。そうだね。そろそろ始めようか」
「そうだな! ……
ローランが魔法術式を唱え、聖剣デュランダルが真っ赤な光を放つ。
剣から炎があふれ出し、炎の大剣を形作った。
「いっくぞー!!」
ローランは聖剣を横一線に振るった。
すると斬撃は炎と共に放たれて目の前の城壁へと打ち付けられる。
最高司祭パトリアルケータの遺産とも言える聖剣デュランダルの炎は、対魔法処理が施されたエルメルの城壁を焼き尽くそうとする。
本来、燃えないはずの石造りの城壁は、その超高温に晒されてあちこちにヒビが入った。
「よし! 今だ、オリヴィエ!!」
「うん! ……
オリヴィエが握る聖剣オートクレールを縦一線に振るうと、その斬撃は氷の津波を生み、熱せられた城壁へと叩き付けられた。
超高温にまで熱せられた城壁に氷の津波が衝突した事で水蒸気が発生。
熱風と共に辺り一帯に吹き荒れた。
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