決行の刻
遂に復讐を果たす時が来た。
その強い思いを胸にしたローラン、そしてその親友オリヴィエの姿はリュミエール宮殿の敷地内にある。
夜の闇に紛れた二人は、気配を殺して宮殿の厳重な警備を掻い潜りながら進んでいる。
「こうして宮殿の中に入るのは久しぶりだね」
「ああ。あの地下道も潰されずに残ってて助かったぜ」
宮殿だけでなく、首都中に厳重な警戒網が敷かれている中、どうやってここまで侵入してきたのかと言うと、秘密の抜け道を通ってきたのだ。
この首都リュミエールの地下には、王族しか知らない小さな道が張り巡らされている。
地上の厳重な警備の目を無視して宮殿まで一気に抜けられる経路も存在し、その抜け道は迷路のように入り組んでいた。
昔はよく二人で地下道へ探検に繰り出しては迷子になり、近衛隊長にこっ酷叱られたのも今では良い思い出であり、今日という日を迎えるための訓練だったと言える。
数々の探検を繰り返したおかげで地下道の経路の大半、特に首都郊外とリュミエール宮殿を繋ぐ経路は完璧に把握できている。
「元々は何かあった時に宮殿から脱出するために作られたものらしいんだけど、逆に忍び込むのに使う事になるなんてな」
「どっちでも良いじゃない。こうして役に立ったのなら無駄にはならなかったって事だし」
「そうだな」
その時だった。
「おい、お前達、そこで何をしている!?」
衛兵の一人がローランとオリヴィエに気付いた。
「ちッ! 気付かれたか。行くぞ、オリヴィエ!」
「うん!」
二人は腰の鞘から剣を抜き、一気に駆けて正面突破を狙う。
◆◇◆◇◆
リュミエール宮殿に敵襲を告げる鐘の音が鳴り響く。
その音に気付いたロベスピエールはその時、夜間にも関わらず執務室に籠もって公務に勤しんでいた。
「何事か?」
「公爵閣下、敵襲です!」
「敵襲だと? まさか、教会の残党か? それで敵の数は?」
「現在のところ確認できているのは二人のみです」
「たった二人だと? ふん! 馬鹿馬鹿しい。さっさと排除せよ」
「は、はい! 直ちに!」
衛兵が立ち去り、部屋にはロベスピエールただ一人が残された。
その時、窓が勢いよく開いて突風が部屋の中へと入り込む。
「彼等は実によく衛兵の注意を引いてくれているな。おかげでここまで楽に入ってこられた」
そう言いながら姿を現したのは、教会騎士団団長シャルル・ド・ボナパルドだった。
「な! しゃ、シャルル団長、やはり生きていたのか……」
「無論だ。あの程度で余が死ぬものか。もうお前の役目も終わった」
「ッ! ま、待て。そ、その声、その話し方、どこかで……」
ロベスピエールは悪寒のようなものを感じて、顔が青ざめる。
「ふん。そういえば、この姿でそなたと言葉を交わすのは、これが初めてだったか」
「ま、まさか……」
「気付いたか。如何にも。余こそはカルディニア帝国魔導教会法皇である! 今までご苦労だったな。おかげで魔導教会再建の時は来た。だがもう、そなたは用済みだ」
「よ、用済み、ですと? あなたは、私にこの大陸の支配権を下さると仰ったではありませんか!」
「おや? 誤解があったようだな。余はそなたの栄達に協力すると言ったのだ。現にこうしてヴェルサイユの支配者となれたであろう。だが、これ以後は余が全てを引き継ごう」
「そ、そんな、馬鹿な!」
「感謝はしておこう。ではな!」
シャルルは、鞘から聖剣ジョワユーズを抜いて一太刀でロベスピエールの首を切り落とした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます