運命の再会
剣闘試合という名の餌やりは、運営側の予想に反する結果で幕を閉じた。
ローランとオリヴィエは、地下牢へと戻された。
牢に入れられて牢番がその場を離れると、途端にオリヴィエはローランを前に跪く。
「必ずや生きておられると信じておりました、殿下」
「オリヴィエこそ、よく生きていてくれた。まずは顔を上げてくれ。俺達は親友だろ」
ローランは心底嬉しそうにしながらオリヴィエに立つよう促した。
「殿下……。僕にはあまりにも畏れ多いお言葉です」
そう言ってすぐに立とうとはしないオリヴィエ。
やむを得ず、ローランは自分がしゃがみ込んでオリヴィエに視線を合わせた。
「殿下は止めてくれ。俺はもう王子じゃないんだからな。それに二人だけの時は、名前で呼ぶ約束だったろ。敬語も無しだ。俺達の関係を勘繰られると面倒だからな」
「……分かりま、分かったよ、ローラン」
「そうそう。その調子で頼む」
ローランは嬉しそうにニコッと笑う。
「……あれから、王城が燃えたあの日からどうしてたの?」
「父上の臣下が匿ってくれて、あちこちを転々としてた。でも追手に嗅ぎ付けられて、逃げ回っていたら奴隷商人に捕まって、気付けば鎖に繋がれてたよ。それからはスラム街で奴隷としてずっと働かされてた」
「そんな、お痛わしい……」
オリヴィエはローランの境遇を聞き、今のローランの姿を見て涙する。
ローランは食事もろくに取れておらず痩せ細り、風呂にもろくに入れず肌は垢と泥にまみれていた。
それでは誰が見ても王子だとは思わないだろう。
「まあ、おかげで正体がバレずに済んだと思えば、儲けものさ」
「でも、」
「辛かったのはお互い様。いや、むしろオリヴィエの方だろ。ずっとこんな所で戦わされて……」
ローランは臣下であり、友人でもあるオリヴィエが闘技場で戦わされている事を風の噂で聞いて知っていた。
スラム街にまで轟くほどオリヴィエの闘技場での武勇伝は有名になっていたのだ。
その小さな身体には、これまでの戦いの傷痕が無数に刻まれており、見ているだけで痛々しい。
「ローランに比べれば僕なんて大した事ないよ」
「あれから捕まって、ここで戦わされてたのか?」
「うん。王室に仕える騎士の子なら良い見世物になるからって」
「それにおかげでこうして鍛えられたし。これからはローランのために戦う事ができる」
そう言ってオリヴィエは鍛え上げられた身体をローランに見せる。
まだ小さいながらも、よく鍛えられたその身体は温厚そうなオリヴィエの容姿からはあまり想像ができないほどの肉体美を醸し出していた。
「オリヴィエは相変わらず前向きだな」
「ローランほどじゃないよ。ローランは昔から一度こうと決めたら絶対に諦めない奴だったからね」
「だっていつも傍にはオリヴィエがいてくれたからな。俺達二人が力を合わせれば何だってできるさ!」
かつて二人は、いつも片時も離れずに一緒にいた。
何をするにも一緒だった。
表向きの立場こそ主従であったが、二人はお互いを無二の親友だと思っていた。
そして、それは今も変わらない。
「ローラン……。うん! そうだね!」
「まずはここを出る! そしてあいつを、ロベスピエールをこの手で殺してやる!」
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