血が美しく咲く
はじまりは、広がる畳の中央に、三つの柔らかいシルクのような美しい蕾であった。
甘い香りに窓から照らす夕日の輝きは、僕に繊細な蕾に水と肥料を与えようとする、気持にさせるには十分だった。
それに答えるように蕾はそれぞれが囁きながら戯れている
囁きは僕に安らぎを与え、恐怖も与え始めたのだ
蕾は大根のように成長していき、ついに、花を開いた。
畳の下からうでとして、うでが咲いたのだ。
うでは美しく畳から踊る。
五本の指か怪しく踊る。
何かを求めるように、くねくねと、くねくねと。
時には指は輝かしく喜ぶように開き、時には何かをえぐるように強く握りしめる。
うでは求める。
甘く、どんよりとした香り、新鮮さを強く求めるような、紅色の濃厚な人の体にある液を。
僕はうでが可愛くて仕方なかった。
いつも、うでに抱かれて眠る日が続いた。
僕は時々苦しい時があった。
気がつくと僕の首にまとわりついているではないか。
喜ぶように微笑みながら、僕のもがく姿が見たかったのだろう。
は、夢だったのか。
「あなた、さっきから、らうなされていたけど大丈夫?冷や汗でびっしょりよ。体を拭いて挙げるから、寝巻きを脱いで。」
「ああ、ありがとう」
「あら、背中はどうしたの?」
「ああ、なぜかかぶれたみたいで、どろどろしているだろう」
「そうね、待っていて」
ガリガリガリガリ
「うわああ、何をするんだ」
「大丈夫よあなた、血が吹き出しているだけだから」
「やめてくれ」
「あなたが、あの時に……」
「ああ、許してくれ」
わあああ
「どうしたの、あなた」
「助けてくれ、許してくれ」
「何をですか?京助さん」
「私は何もしていないわよ。背中をかきむしっただけよ」
「悪かった、悪かった」
「あなた、どうしたの?」
「許してくれ。許してくれ」
「何をですか、冷や汗をかいていますよ。また、幻を見たんじゃないの?先生から、あれだけ、お酒をやめなさいと言われているでしょ。幻覚を見たのよ。あなたは、アルコール依存性だから。背中をさわってみて、どうもなっていませんから」
「ああ、本当だな」
「じゃあ、背中を拭いて挙げるから」
「ああ、ありがとう」
ガリガリガリガリ
「うわああ」
「あなた、死んで。あなたが、毎日のように酒浸りでどれだけ、私が辛い思いをしたことか、血が吹き出ているから、かいて挙げるわ」
ガリガリガリガリガリガリ
「やめろ」
「待って、あなた、死んでください」
わあああ
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