異能少女・西鶴果実のとある1日

白木錘角

第一話 9月某日 AM8:05

 どうも皆さん初めまして! 私の名前は西鶴果実さいかくかじつ、花も恥じらう高校2年生の女の子です。

 私はどこにでもいる普通の女の子、と言いたいのですが、実は私にはちょっとした秘密があるのです。それは……。

 ……まぁ説明するより実際に見てもらった方が分かりやすいでしょう!


「あ、果実ちゃんおはよー」


「おはよ! 今日の数学の宿題ってやってきた?」


「あれ、宿題あったっけ? もしかしたらやってないかもー」


 登校途中、私が同じクラスの友達と喋っていると、がさっそく来ました!

 背中のちょうど真ん中に針で刺されたかのような痛みが走ります。痛みはそのまま左の肩、つまり友達がいる方へ移動して、そこで消えます。


「ん、果実ちゃんどうかしたの?」


「あーなんでもないよー。ちょっとボーっとしてただけ」


(今ぐらいの痛みだったら、怪我をするとかかな……)


 これが私の持っている不思議な力の1つ……名付けて予知能力・遍クヲ識ル天地ノ眼ゼウス・アイズです!

 親しい人に“不幸”が迫っている時、その人に近づく事で背中にさっきのような痛みが走り、私に知らせてくれます。ざっくり不幸と言っても、うっかり宿題を忘れて怖い先生に怒られる程度の軽い不幸から、交通事故に巻き込まれて大怪我をしてしまうレベルまでけっこう幅広いのですが、痛みの大きさによって不幸のレベルを判断する事もできてしまうんですよね。

 ですがこれだけだと、ただ不幸を知る事ができるだけの能力です。この能力の真価、それはと併せることで発揮されます。


「今日風強いね」


「ほんとー。せっかくいい感じに髪セットできてたのに、ぐちゃぐちゃになっちゃう」


「教室はすぐそこだし、荷物おいたらトイレに行ってセットしなおしたら?」


 正門を通り、昇降口に行くまでには校庭のそばを横切る必要があります。校庭と道の間に飛んできたボールを防ぐためのネットはなく、度々流れ球が生徒にぶつかる事件が発生している危ない場所です。もし友達の身に何かがあるとしたらこのタイミングでしょう。私は変に思われないよう自然体を装いながら、校庭の方に意識を集中させました。


「そうしようかな。じゃあ先に行ってるね」


 彼女がそう言って走っていったのとほぼ同時。視界の端で、野球部の男子がボールを投げました。高校から野球を始めた初心者なのか、ペアに向かって投げられたはずのボールはその遥か上空を通過し、大きな弧を描いて落ちていきます。どこに? もう言うまでもないはずです。私は全速力で走りだします。

 まるで目でもついているかのように、友達めがけて落ちていくボール。それに彼女は気づいてさえいません。仮に気づいたとしても、回避しようとする前にボールがぶつかってしまうでしょう。

 

(間に合え――!)


 3、2、1、で思いっきり踏み切り、ジャンプ。ボールが彼女の頭にぶつかりそうになったその刹那。私の手がしっかりとボールを掴みました。


「え、か、果実ちゃん……?」


 何が起こったのか分からないといった様子の彼女に、手に持ったボールを見せてあげます。


「危ないところだったね。でも、もう大丈夫。私がしっかり“捕った”から!」


 これこそが私のもう1つの能力。不変の運命を変える力、その名も消失セシ定メノ鎖バニシング・ファタムロックなのです!


 

 

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