掌編集
@k-aran
斜陽
黄色一色だった広大な砂砂漠は、いつの間にか橙色に変貌していた。その色も見る間に時の流れに侵食され、茜色に変化しつつある。
私は空の上から感嘆しながらその光景を眺めている。
砂漠は茜色から純粋な赤、やがては深紅になるだろう。そして段々と暗さを増し、やがて黒になる––その瞬間、私は役目を終えて死ぬ事になっている。大昔から続く慣習に従って。
けれど私は、自分の死期を嘆くより眼下の景色を追うことに夢中だった。何と言っても、私にとっては一生に一度の光景なのだ。
ふぁさっ、という音に振り向くと、黒い大きな翼を広げた『夜』が私の側にいた。
「やあ、初めまして。」私は夜の黒い瞳を見てにこりと笑う。
「こちらこそ、初めまして。……綺麗な景色だな。」夜はそう言って、濃紺の砂漠を見る。砂漠の真ん中には幼い子供が二人いて、私に向けて手を振っていた。
「ばいばい。」私がそう言い終えるのと、夜が私に大鎌を振り下ろしたのは同時だった。
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