第75話


「ケイト、昨日は、大変だったね。気持ちは落ち着いたんだね。」と言うと、ケイトの横に座り、手を握って来た。


「マ―ぷ、ケイト、このままこの国で、生きたいの。

学園を卒業してからも、この国に居たいの。だめかな?

どうすれば、この国で暮らしていける?」


「ケイト、この国で、生きていくって、どうしたいんだい?」


「どうしたいって?」


「この国で生きるのだったら、

仕事をするにしても、何をしたいのか?

結婚をするにしても、誰を好きなのか?

好きでもないけれど、政略結婚でもいいのか?

と言う事だよ。来年は15才だよ。自分がどうしたいのかを考える時期だ。

16才になったら、貴族は、社交界にデビューだ。その時は、誰の養女になるのか?も考えて、結婚相手を探す事になるだ。


ケイトも、そういうお年頃になったんだね。」慈しむ様に優しく微笑んでいる、そして、握った手は優しく握っている。


「ケイト、もしだよ。カポーティブレナン王国のエリザベスとして、生きるなら、違うだろう。

その国の状況で、違ってくるからね。


それに、、ダンフォース皇子だけが、ケイトの事をエリザベスと言っているが、国王や、他の者が違うと言えば、また、立場も変わってくるだろう。だから気を付けなくてはいけないよ。」


「そうね。マーぷ、だから、ダンフォース皇子が、スチュアート王子とマーぷと私を招待したんだと思うの。」


(エリザベスと言う事は、国王も第一皇子も知っているけれど、王家の秘密だから、話せないの。嘘を言って、ごめん、マティー。)


「そう言う事か。まあ、政権争に巻込まれたのだから、解らないからね。

スチュアート王子には、話すのか?」


「まさか~、スチュアート王子に話す気はないわ。

知っているのは、マーぷとカルヴィン様だけよ。

ダンフォース皇子が、カルヴィン様をケイトの身辺警護と虫除けと言っていたわ。両方ともいらないのにね。」と笑った。


「そうだな。スチュアート王子に話す必要はないよ。

ケイトの事を知っているのは、最小限が良いしね。

後は、カルヴィンが知っているんだね。」


「そうよ。まあ、私の事を探して、状況を報告しているのだから、知っていて当たり前よね。」


「そうだな。ケイト、学園生活は、今までも、色々あったろ。

最終学年になると、今まで以上の事をされるかもしれないからな。気を付けるんだぞ。」


「マーぷ、大丈夫よ。その時には、マーぷの婚約者にしてもらうわ。ダメ?」と言いながら、頭を傾けると、マティーの手が離れ、頬をなでた。


「ケイト、そんな事を言っては駄目だよ。みんなが本気にするからね。

ケイトは、まだ、子供なんだよ。お父さんのお嫁さんになる、と同じ様に言ってはいけないんだ。この間も言ったろ。


マーぷには、解っているから、良いけれど。


もし、僕を結婚させたがっている人に聞かれたら、本当に結婚させられるよ。」と言うが、

喜びと、悲しみの苦悩に満ちた表情になっている。


「マーぷ、の事好きよ。あたしは本気だよ。」


「ケイトを養女にする事は、有っても、

婚約者、側室にもしない。いいね。理解できたね。」と語気を強めて言った。


「マーぷ、マティー様と言えばいの?」


マティーが、優しく頬を撫でながら、


「ケイト、僕と君の年齢の差を考えた事が有るかい?

僕は、ケイトのマーぷでいいんだ。

言ったろ、僕はロリコンじゃないんだからね。

どこかの、爺さんみたいに若い女性を迎えるつもりもないよ。

ケイトと同じような年齢の人と婚約する事がいいんだよ。


マーぷの養女になって、カルヴィンの婚約者になるのは、どうかな?」と寂しそうな表情になった。


「マーぷ、あたしこのままでいい。


マーぷの養女にもならない。このままでいさせて欲しい。

ごめんなさい。マーぷを困らせる我儘を言ったわ。

昨日から、色んな事が、有りすぎて、冷静でいなかったと思う。


マーぷから、言われて、この国で生きていく事を簡単に考えすぎていた。


平民として、仕事に就く事や、貴族として、社交界にデビューの事など、何も考えていなかった。


マーぷから言われて、慌てたの。


マーぷと一緒にいるのが、あたしは、楽しくて、自分自身に嘘が無くて、幸せだから、マーぷの婚約者になりたいと言ったと思う。


本当にごめんなさい。」と言うと。


「ケイト、解ったのなら、もいいよ。

どんなに、大人っぽくしても、マーぷには、まだまだ、幼子なのだよ。


まあ、昨日は、ダンフォース皇子の側室と言われて、僕も慌てたからな。似たようなものだよ。」と言いながら、膝の上に抱え頭を撫で始める。


「マーぷ、ケイトは、来年、魔法学園を卒業するのよ。

もうすぐ、社交界にもデビューできる年なのでしょ。

膝上抱っこは、人に見られると恥ずかしいわ。」


「だから、屋敷にいるんだ。魔法学園の寮では、出来ないな。

今日はね、ケイトを甘やかす為に、屋敷で休ませたんだ。

可愛い娘だよ。ケイトは、娘だよ。」とマティー自身に言い聞かせる様に言った。


「マーぷ。もう少しだけ、甘えさせて。」胸に顔を寄せた。


(マティーは、自分に言い聞かせているんだ。あたしも諦めが悪いよね。マティーから離れないといけない。

だって、マティーも自分の婚約者を見つけて、結婚しないといけないのに、あたしがいるから、婚約者も見つけられないんだ。

あたしも自覚して、マティーに甘えるのを止めなくては駄目ね。)


「マーぷ、もう、大丈夫よ。ありがとう。」

と笑顔を見せた。


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