解瘴
「ふぅ・・」
運転していた友人はそう息を吐くとライトを消し、エンジンを切った
3台から皆が降りると、暗がりにポツンと光る自販機で各自飲み物を買い、堰を切ったかのように今しがた皆で見たものについて話し出した
そこで私は新しい事実を知る
それは、私が見たあの白い煙、木々の上の方に浮いていたあの煙、
いや、着物の女性について、私と横にいた先輩しか見ていないと思っていたが、
他にも同じ”もの”を見ていた友人がいたということ・・
私たちが”あの場所”で”みたもの”
「広場から降りる階段の道中で聞いた女性の声」
「木々の上に浮かぶ着物を着た女性」
「道路に両肘をついてこちらをみていた女性」
「車を出した際に車内で聞こえた女性の声」
「途中まで追いかけてきた着物の女性」
私にはそういう能力がないので断言は出来ないが、
全て別の女性だったように私は思う
何より私の正面に浮かんでいたあの白い煙が、
サーッと靄が晴れるようにくっきりと女性の姿になる様は
今でもはっきり思い出すことができる
さて、私を含め皆が見たこの着物の女性たちは”おいらんの霊”なのだろうか・・
それは誰にもわからないと思う
もし、直接あの”彼女たち”に聞いてみればわかるかもしれないが、
そんな勇気は私にはない・・
漆黒の山奥から解放され、
ひと気の暖かみがあるこの駐車場で私たちは徐々に平常心を取り戻した
夏の夜明けは早い
買った飲み物も空になり、頃合いとなった私たちはそれぞれ同じ方向の人間に分かれここで解散することになった
「きをつけてな!」
私は先に出ていく友人の車を見送った
その車には運転席と助手席、2人だけ乗っていたが、
出ていくその車の後ろ姿を見ていた私は、はっ!として
思わず隣にいた先輩に顔を向けた
「 言わないほうがいい 」
先輩はそう言うと、ふぅっと
煙草の煙を上に吐き出した
煙はすぅーっと直上に舞うと
薄く白みがかった空に溶けるように消えていった。
・・・
友人の車が駐車場を出ていくそのとき、
誰もいないはずの後部座席にフワッと
起き上がるように
人の後頭部が現れた
遠ざかって行く中で
その頭はゆっくりとこちらを振り返っているようだった
・・・
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