終わりに・・
ふとした拍子に思い出した花魁渕・・
いかがでしたでしょうか
これは作り話ではなく、実体験なんですよね
極力変な脚色も加えず、当時の記憶のまま書いたので味気ない感じになりましたね
まあ、現実なんてそんなものではないかと思います
さて、、
魑魅魍魎という言葉があります
「魑魅」とは山林の異気から生ずるという怪物のことと言われ、顔は人間、体は獣の姿をしていて、人を迷わせると言われ「魍魎」は川や木石の精霊とされ、山・水・木・石などあらゆる自然物の精気から生じ、人を化かし、姿は幼児に似ていて、2本足で立ち、美しい髪と人に似た声をしていると伝わります
この二つを合わせ「魑魅魍魎」といいます
日本には古くからこのような言わば”もののけ”つまり妖怪のような類の伝承が多く存在しています
私と友人達があの時見たのは、非業の死を遂げた”おいらん”達の霊などではなく、この類ではないかとも思います
山の木々や川、石、それぞれに魂として宿り、その精気が形となり不用意に踏み入れた人間を迷わせ、化かすというのであれば、私たちが見たものこそ魑魅魍魎と言ってもいいのでないかとも思うからです
もしそうであれば、”それ”はあの場所に限らず、どこにでも存在するということになります
木々や、石などに纏わる所謂祟りや怨念の話は各地にあります。例えば、切れば祟る、持ち帰ると祟る・・などがそうです。ですが、はたしてこれらを祟りなどと一括りにしてよい物なのかとも思います
子供の頃、早く寝ないと鬼に攫われるなどという類の話をされた経験はありませんか?
夜笛を吹くと蛇が来る、火遊びをするとおねしょをする、など色々ありますが、その全てに共通するのは言わば”戒め”ですよね。
要約すればそれぞれ、
「早く寝なさい」
「夜は静かにしなさい」
「火遊びはしてはいけない」
ということを伝えているのです
古くより自然を愛でてきた文化が日本にはあります
四季折々の草木や花を慈しむ文化です
もし、そこにある自然を変えることなく愛でるこの考えから生まれた”戒め”が、魑魅魍魎の伝承だとすれば、人里離れた山中において、その静寂を脅かし、不用意に立ち入った私達が見たものは霊などではなく、個々の”自戒”が生み出した幻想だったのでないかとも思うことができます
全国には”いわくのある”場所が数多くあります
この”いわく”というのが子供の頃に聞いた戒めと同じではないでしょうか
行けば帰れない、不幸が起こる、事故を起こすなどの”いわく”は、
「勝手に入るな」
「荒すな」
「来るな」
ということを伝えたいだけの”戒め”ではないでしょうか
しかし、残念なことにこのような”いわく”が余計にそこに人を呼び寄せていることも事実でありこれは皮肉なことだと思います
”おいらん渕”を訪れた私達ですが、
幸いなことに誰一人ここに行ったことが起因と思われるような不幸に見舞われてはいません
私はこの話を今まで沢山の人に伝えてきました
もう、わかりますね?
心霊スポットなどと呼ばれている場所に意味もなく踏み込んではいけません
この話は”戒め”です。
令和三年 八月晩夏
山口めんたいこ
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