第10話

日吉は野々村との電話を切ると直ぐに中村刑事へ電話を掛け、野々村の仮説を伝えた。


迷宮入りかとも思われた今回の事件だったが、翌日、一気に終結する。野々村の予想通り、サクラの男、花沢友和が犯行を自供した。スマホに被害女性の西脇由美子と連絡をとっている履歴があり、言い逃れ出来なくなった為だ。花沢は由美子の元交際相手。結婚してからも由美子にしつこく復縁を迫っていたようだ。半ば強引に家の中に入る事は出来たが、絶縁話を切り出され、衝動的な犯行だったとの事。殺害してしまった話を親友の早川に相談したところ、早川の趣味である、手品を利用して、心の中が見えるトリックで、西脇良平の犯行に見せようという作戦だったようだ。


日吉は御礼を伝える為、その日、野々村をディナーに誘った。


「今回の件、ありがとうございました」

「無事解決して良かったな」

「ただ、西脇の表情からかなりの違和感を覚えたのですが……」

「そんな曖昧な表現をされても俺が見ていた訳じゃ無いから分からない。お前も人の心が読める訳じゃ無いだろう?」

「野々村さんは読めるんですか?」

「まあ、お前の心ぐらいなら読めるけどな」

「じゃあ、読んでくださいよ」

「そうだなあ……。今日は事件を解決してもらったお礼に野々村さんを誘ったから、自分が食事代を払うべきなんだろうけど、野々村さん払ってくれたりしないかなあ、ってとこじゃないか?」

「テヘ、バレました?」

日吉は払ってもらう気満々でした感を出しながら、野々村に返答する。

「いいよいいよ。俺が払うから」

野々村はしょうがないな、という感じで話した。

「あざーっす! ゴチになります!」


日吉と野々村の心理対決……。今日に限っては日吉が1枚上手だったようだ。


自宅に着いた日吉は、電子タバコを吸いながら、高校のアルバムを開き、山村由美子との記憶を思い出す。

好きだった頃の想い出

卒業後の想い出

先日の電話での会話


全てが昨日の事のように思える。日吉は涙を拭きながら、電子タバコの煙をフーッと大きく吐き出した。

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