心の色が見える男

ジャメヴ

第1話

「……そうなんだ。日吉君、プロボクサーライセンス受かったんだ」

「ああ、また試合が決まったら見に来てよ」

「うん。もちろん、見に行くわ」

「じゃあ、明日は残念だけど……」

「うん。また、連絡するね」


日吉栄一郎(24歳)は警察官でありながら、プロボクサーという異色の経歴を持つ。身長は175センチ。刈り上げられた短髪の黒髪で、少しだけ顎髭が伸びている。眉毛はつり上がるように整えているがタレ目だ。色黒で、ややすきっ歯の為か見た目で賢そうには思われない。

電話の相手は山村由美子。かなりの美人で、日吉とは高校時代の同級生。日吉は何度か彼女に告白しようとしたのだが、空気を読まれ、はぐらかされていた苦い思い出がある。卒業後も多少連絡を取る仲だ。そんな中、今日、久しぶりに電話があった。

日吉は明日、友人主催のパーティーに招待されている。今日の山村からの電話は、明日のパーティーへ一緒に行こうという話かなと思ったのだが、生憎行けないとの連絡だった。更に、最近籍を入れたという報告も受けた。西脇へ名字が変わっていると言う。だからと言って、落ち込んだりはしない。とうの昔に失恋済みだからだ。と言っても、告白して振られた訳では無い。

彼女は高校時代、結構地味なタイプで、そこまでモテていた訳では無かった。ところが、卒業後、どんどん垢抜けて、かなりモテるようになる。ただ、徐々に派手なメイクとファッションになり、日吉の好みでは無くなった。日吉は間接的に失恋したのだった。

明日のパーティーの主催者は佐藤とおる(24歳)。父親が IT 関連の社長をしており金持ちなので参加費は無料。日吉が佐藤主催のパーティーへ参加するのは今回が2度目だ。小さなホテルの会場を貸し切って行なわれる。

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