同棲は卑猥に入りますか?
加藤那由多
1.恵良菫の告白編
1-1『市東蒼桜』
プロローグ1『同棲まで何があったのか:蒼空の場合』
中学校を卒業し、もうすぐ高校生になる。
僕ら兄妹は不仲ではないので、たまに雑談をする。今日もその日だ。
「そんなんじゃダメだよ。つかみが大事なんだから。もっとこう…
卒業してから入学するまでの隙間。
春休みという何者でもない時間、僕は鏡の中を冒険することなく、自室で妹と話していた。
とか」
「どっかで聞いたことある内容だな! パクるな!」
「心外だなぁ。パクリじゃないよ。パロディーだよ。作者さんはその巻好きだからね。使わせておくれ。なにせ心の中で叫んでたんだから。『○九○ぃ』って」
「おい
「平気だよ。タグ付けてるし。それに、私はメタ枠&パロディー枠なんだから、最初っからアピールしとかないとね」
「僕、そういう考えよくないと思う」
あと講○社ネタは使うな。
「集○社もダメ?」
「僕たちはKADOKAWA様の運営する世界で生かしてもらってるんだから、もっとKADOKAWA様に敬意を払うべきだと思う」
「私、そういう考えよくないと思う」
「ねぇ、蒼空兄も読んでたよね? 叫んだ?」
「いや、作者さんがその人推しのロリコンだっただけだと思うぞ」
「でも、小五ってロリなの? もしそうなら、ロリコンの作者さんは小五の妹さんにコンプレックスってことになるんだけど」
「いや、妹は別だろ。ロリな妹にコンプレックスを感じてる人はシスコンだよ」
「じゃあ、
「ばっ、お前。目の前に下着しか着てない女子がいたら誰だってそうなるだろ!」
「はぁ、アセクシャルも大変だねぇ。たしか、同棲相手との初顔合わせって明日でしょ? 折角私が話しつけたんだから、ちゃんと成果出してよね」
先日、アセクシャルの僕を見かねた蒼桜が提案してきたのだ。
[あのさ、お母さんの昔の友達の娘さんが、蒼空兄と同い年なんだって。それでさ、女の子に慣れれば恋愛をする切っ掛けになると思うんだ。一緒に暮らしてみない? あ、拒否権ないから]
「ああ、もちろん。善処するよ。ありがとな蒼桜」
「も、もー。何言っちゃってんの? そんな神妙な面持ちで最終回みたいな…この空気嫌だからとばすね」
「えっ、ちょっ待っ…」
翌日
僕は同棲相手と暮らす新居にやってきた。
外は寒いので家の中に入って、立ち話。
「一応蒼空兄には、この家の構造だけ説明しとくね」
玄関は見ての通り、十字路みたいになってて、
右手に洗面所とお風呂あとトイレ。
左手はリビングダイニングキッチン。
真っ直ぐ行くと階段。
一階は、お風呂とかを除くと、リビングダイニングキッチンだけしかないの。
でも、それなりに広くて、二人で住むには十分だし、友達も誘ってパーティーとかできそうだよね。
次は二階ね。
階段を上ると、すぐ右手に通路があって、道なりに進むと左の壁は、物を置けるように台みたいになってるの。
で、右に曲がると扉が二つある。
手前と奥で、どっちの部屋を見てみてもつくりはほとんど変わらない。どちらの部屋にもベランダがついてて、日当たりも良さそうでしょ? まぁ、お母さんが選んだんだけどね。
「さて、定期購読者が減る一番と言っても過言じゃない理由『説明描写』を終わらせたところで感想は?」
「子供二人で暮らすには広すぎやしないか?」
LDKは揃ってるし、三〜四人家族でも充分に暮らせそうだ。
「理由は二つ! 一つは、家賃を半分こしてる事。もう一つは、私が頼み込んだら、お父さんが初期費用を出してくれる事になった事!」
親父ぃ! 娘に嫌われないように必死すぎるだろ…
こんな親にはなりたくない。まぁ、親にはならないんだけどな。
「さて、もうそろそろ約束の時間だね。一回下降りよっか」
「うん」
階段を降りると目の前は玄関。
その扉が開く。
「お邪魔します」
可愛い子だと思った。
ほどけば腰まで届くであろう黒髪は綺麗に手入れされている。その髪は編み込んだうえハーフアップになっていて、とても似合っている。瞳は大きく、バランスのとれた顔立ち。雪のような白い肌は見るだけでもすべすべしていると分かる。そのうえ、出る所は出ていて引っ込むところは引っ込んでいる。抜群と呼ぶべきスタイルだ。モデルとして雑誌の表紙を飾っていてもおかしくないレベルの容姿。道行く人が二度見するだろう。
僕が本気で彼女を褒めるとこんなものか。はっきり言って、美少女だ。そこには美少女がいた。が、僕はこの人に一切の恋愛感情を抱かない。
「菫さんがこの家に住むんですから、お邪魔じゃないですよ」
「はじめまして。市東蒼空。見たまんまの男さ」
「蒼空兄もやっぱり気に入ってるんじゃん。講○社」
蒼桜がジト目で見てくる。やめてほしい。
「…あー、うん。はじめまして。
彼女は笑った顔もよく似合っていた。
蒼桜からは『市東家にしか用意できないとある報酬を欲しがってる人が来る』と聞いていたが、あまりの綺麗さにびっくりした。
綺麗な人がそばにいるのは、嫌なことではない。しかし、僕が彼女の時間を奪っているのだと思うと申し訳なくなった。
君がどんなに優しくても、僕の罪悪感は拭えない。
この同棲で頑張るしかない。
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