人の感情を音として聞くことができる少年と、その幼なじみの物語。
ほろ苦く甘酸っぱい片思いの様子を綴ったBLです。
事実上のすれ違いの物語であるにもかかわらず、主人公には人の心を読む力があるという、このなんだか矛盾して見える構成が面白い。それも単純に心の声を聞くというものではなく、「感情が何かの音となって聞こえる」という設定が非常に印象的でした。
タグにもある「じれじれ」、ずっとすれ違ってばかりの彼らを見守ることの、このやきもき感が魅力的。
まさに青春というか思春期というか、この怯えと不安と遠慮とあと言ってしまえば逃げるための言い訳みたいな、いろんな感情がない混ぜになった独白のこの味わい。
また主人公・ハルの一人称体による物語でありながら、彼の幼なじみである海斗の内心まで(読者の視点ではバレバレ的な意味で)読み取れてしまうところも楽しく、当人たちだけが無限に悩んでいるじれったさが際立つようでした。
終わり方というか、幕切れの潔さが好きです。
凛と澄み切った感じの結びの一文。肝心要の本番を伏せているようでいて、でもここまでを読者目線で追ってきたからこそ「その先」を確信できる、その感覚にはとても心地よいものがありました。