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 そいつは何か生命維持装置のようなものを背中に担いでいて、そこから口元にホースが伸びている。その上はゴーグルのようなもので覆われていて全く見えない。顔の下の全身には、ピッチリした黒光りする服が張り付いていた。


 たまらずぼくらは走りだす。


「マテー!」


 待てと言われても待つわけにはいかない。とにかくぼくらは来た道を全力で走った。宇宙人の足はぼくらよりも遅かったが、ぼくらの方が先にバテてきた。結果的にどんどん追いつかれてきてしまった。


 そして。


「うわっ!」


 いきなりツトムが転んだ。


「ツトム!」


 あわててぼくは戻ろうとするが、


「来るな! お前は逃げろ!」


 座り込んだままのツトムが叫ぶ。


「そんな……お前だけを置いていけないよ!」


 なんだかいろんな映画やアニメで聞いたようなセリフをお互い口走っているような気がするが、そんなことはどうでもよかった。


「ぼくに考えがある!」


 そうツトムが言ったとき、宇宙人が彼に追いついた。そして彼を捕まえようとした、その時。


 続けざまに閃光が走った。


「グワーッ!」


 宇宙人が両手で目を押さえて立ち止まる。とっさにぼくが体当たりをかますと、そいつはあっけなく地面に転がった。


「逃げろ!」


 ぼくが叫ぶと、ツトムも立ち上がり、ぼくの後を追って再び走り始めた。


 ようやくぼくらは息も絶え絶えに自転車までたどり着く。振り返ると、もう宇宙人は追ってきていないようだった。


「助かった……」肩で息をしながら、ツトム。


「お前……何をやったんだ?」


 息を切らしながらぼくが聞くと、ツトムは得意そうな顔で、言った。


「あいつの目の前で、フラッシュを連射してやったんだ。真っ暗な中でフラッシュを目の前で何度も焚かれたら、当分何も見えなくなるよ」


 ……。


 どうやら宇宙人の目も、人間のそれとあまり構造が変わらないみたいだ……


---


 こうしてぼくらの一九九九年七の月は終わった。


 人類が滅亡することはなかった。だけど、少なくとも、ぼくらの目の前に、恐怖の大王は降り立った。でもぼくらはそれを撃退したんだ。ひょっとしたら、ぼくらは人類を救ったのかもしれない。そう、ぼくらは「日の国」に現れた「別のもの」だったのかも……


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