第13話 学年1位の男

 アルヴィスも皆と同様にフィールドから演習場を出ようと歩きだし、アンヴィエッタの横を通り過ぎる。




 ――ガシッ!




「うぉっ!?」




「坊やは私と一緒に来い」




 だがアンヴィエッタに肩をガッシリと掴まれ、向かっていた方向とは真逆のもう一方の出入り口へと引っ張られる。




「ちょっ、先生、歩きづらいから離してくれ」




 横を通りすぎたはずのアンヴィエッタに肩を後ろから掴まれているのだ、必然アルヴィスは後ろ歩きで歩かされている。




 手を外そうと右手で左肩にあるアンヴィエッタのそれを掴むがぴくりともしない。




「無駄だよ坊や。いくら魔力量が桁外れだからといって坊やの魔力操作じゃあこの私には通じんよ」




(おいおい、てことは教授達に捕まったら逃げれないということか? いや、いくら俺が下手とはいえある程度の差なら魔力量でカバーできる。――先生、あんたも相当な魔力量ってことだな?)




 アルヴィスはアンヴィエッタにさらに興味が沸いたのか鋭い眼差しで注視する。そしてその僅かな変化にもアンヴィエッタは気づいた。




(坊や、だんだんと頭を使うようになってきたじゃないか。さきの戦闘での魔力操作といい今の量と操作の力の関係といい理解は早い。だが――)




 アンヴィエッタは出入り口を出たところでアルヴィスを自身の前方へ投げ転がすように解放する。




(この差をどう埋める?)




 アンヴィエッタは眼鏡の奥に潜む双眸を光らせ両者を見詰める。




「痛いてぇな先生……。なにも投げ飛ばさなくてもいいじゃ――」




「俺をこんな所に呼び出した用件はなんですか、教授? ――まさか」




 アルヴィスはアンヴィエッタに文句を言いつつ腰をさすりながら見上げると、1人の男子生徒の存在に気付き言葉を止めた。一方その男子生徒は、演習場出入り口横の外壁に寄り掛かり腕を組んで立ちながらアンヴィエッタに質問を投げ掛けている途中、アルヴィスと目が合い答えを既に察した様だ。




「ロベルト、こいつをどう見る?」




「……E、いやDか。だが俺の相手ではない。――この男がなんだと言うんです?」




 ブロンドヘアに碧眼の少年は自身の瞳の色より冷めきったような口調で冷たく言い放つ。




「この坊やと今から試合してほしいと言ったら?」




「ご冗談を」




「おいおい、EだのDだの俺を見てあんたらなに話してるかわからないけどよ、先生こいつは誰なんだよ? さっきからなんか随分と偉そうなんだけど」




「あぁ、すまない坊や。紹介しよう。彼はロベルト――学年首席、つまり序列1位だ」




(こいつが!?)




「そんなものに興味はない。俺はあいつを超えたいだけだ。あなたがそのための役に立つかもしれないと言うから来たが、それがこいつですか?」




「まぁそうかりかりしてくれるなよロベルト。こいつは先程あのロキとの試合で勝った男だ。つまり私が受け持つ1寮の1年生で2番目の実力ということになる――興味が沸かないかい?」

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