余談(作者独白)


 圧倒的ヒロイン。と言いたいところだけれど実際は親子に似た関係性の二人っていうのが実質的な夕陽と幸の関係性。

 とはいえ幸自身は幼いながらも夕陽のことは一人の男の子として普通に好いてるし愛してる。夕陽の為なら自身の命くらいは余裕で投げ出す。

 そもそもが座敷童子という存在自体が人間達から望まれた『最適化された童女の人外』であるからして、言ってしまえば幸は固定化された幼子の精神から逃れることが出来ない存在であるということ。人から望まれるままに生み出された人にとって都合のいい人格、精神性を宿しそこから変動することはない。

 でも夕陽と共に経験を積んで人を識り好意を知り愛情を覚えた今代座敷童子である幸は上記の状態からはほぼ脱却している。ようは初期設定がそういう設計で生み出される存在というだけで、その後はどういう出会いと経験を重ねるかによってそれぞれに変わるということ。


 常に日向夕陽の幸せを願ってはいるけど、どうすれば幸せに至るのかまだよくわかっていなくて悪戦苦闘中。お金があれば幸せかな?と考えれば幸の妖怪種としての〝幸運〟が働いて夕陽がやたら金銭の落とし物を拾うようになったりする。でもすぐ夕陽にはバレるからそのたびに対話をもって教育が始まる。何故か『自分が一緒にいれば幸せだろう』という考えには至らない様子。無自覚で自己評価が低い子。

 

 戦闘においては〝憑依〟によって夕陽を内側からサポートするバフ要員。〝憑依〟の解放段階は夕陽と幸の相互同意によって初めて承認・展開されるものだが、あまりに深度を上げすぎると痛覚まで共有してしまう。この一線をなるべく超えまいと夕陽は常時考えながら戦っているが、幸にとってはなんの懸念にもなっていない。手足が千切れる激痛を夕陽共々味わっておきながら正気を保っておけるのも彼女が人外たる所以か、あるいは主を想うが故のものか。


 夕陽が望むのなら地獄の果てまで付き添う所存ではあるが、幸という少女の本質は極めて温和で優しい性根をしている。本当であれば毎日甘いものを食べて夕陽と遊んで一緒に寝て朝には起きる。ただそれだけを繰り返していきたいと考える至極真っ当な平穏を願っている。その点においては共に家で寝食を共にする夕陽、日和、篠らとも共通した願いを秘めている。


 いつかは本来の〝幸福〟を取り戻して、日向夕陽が送る修羅のような日々を幸せに満ちた毎日に変えたいとも願っている。そこに、自分の姿や居場所が無くなってしまっていたとしても。

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