第4話あの景色をもう一度
目が覚めると砂浜の上に寝転がっていた。
「ぺっ ぺっぺっ」
口から入り込んだ砂を出しながらあたりを見回す。
「ここは・・・」
この景色には見覚えがある 。ついさっきまで見ていたような。
「白浜・・・か?どうして?いてて」
ダメださっきの光のせいで頭が痛い。1回深呼吸をして状況を整理してみる。
「さっきまで叔父の別荘にいて、ボトルビューを作って。それから ソファーにいたら足音が聞こえて工作室に行って見ると少年がボトルビューを持ってて、えーっと声をかけるとそれを落として光が・・・あ」
せっかくの作品が壊れてしまったことを思い出した。
昼間の白浜海岸に来ているということは、あの瞬間から自分はここまでワープしたことになる。原因はあの光と考えていいだろう。だがそうなるとあの少年もここにいるはず。少し落ち着いてもう一度あたりを見回してみる。
「いた! 」
縦に広い砂浜の中に少年を見つけた。
「君、大丈夫か?おい?」
「え? うん」
そう言って少年は気がつくと目をこすってお決まりのセリフを言う
「ここはどこ?」
「ここは静岡県の白浜海岸だ 」
的確にそう答える なぜならそこは私の故郷であり少年が抱えているボトルビューで作った景色そのものなのだから。
「ところで君名前は?」
「長谷川・・・ 雄也」
少年は少し怯えた声でそう言った。作品を壊してしまったことに対して私が怒っていると思っているのだろう。
「何年生?」
「3年生」とだけ答えた。体格からして小学生だ。
「おじさんそこら辺見てくるからここで待っててね」
「うん」
人の家に勝手に入った割には随分と物分りのいい子だ。
とにかく今は少しでも情報が欲しい。どうしてここに来てしまったのか。近くにあったコンビニに入り、入口付近にある新聞をとる。
「え・・・」
日付を見てゾッとした。年も日にちも違う。読み間違えていないか指でなぞって小さな声でもう一度読む
「2007年 ・・・7月」
古い新聞もあるのかもしれない。そう思った。だかそれが間違っていることは流れてくるラジオがすぐに教えてくれた。
『2007年7月の天気は本当に最高ですね〜 晴れた日がつづきすぎて困ってますよ〜』
ラジオで日付を間違えることなんてありえない。まさかワープしただけでなく時間まで戻ってしまったのか。何が起こっているのかさらに分からない。少し混乱しながらおいてきた少年のもとに戻る。
戻ると少年はおにぎりを食べているところだ。少年の隣に座ると
ギューーー
お腹がなる。そういえばまだ昼ご飯を食べていなかった。
「はい 梅干しが入ってるけど好き嫌いはしちゃだめだよ」
「いいのかい?」
「うん」
少年からひとつおにぎりを貰ってしまった。
海辺で小学生とおにぎりを食べるなんて数分前には想像もしていなかった光景だ。久しぶりに見た海だが相変わらずとても美しい。その景色を見ながら少し落ち着く。
少年の膝の上にはひびの入ったボトルが置いてある
けど何ががおかしい、よく見るとボトルの中にある景色が違う。ボトルにはこの白浜海岸が作られているはずだ。でもそこにあるのは私の工作室、いや正確には叔父の工作室だが。
「あ・・・」
その時頭の中で何かが繋がった気がした。瞬間、梅干しが、膝の上に落ちる。
「あ!おじさん、梅干し落ちてるよ 好き嫌いはダメって言ったのにちゃんと食べなきゃ」
「ごめんごめん」と少年に謝り膝に落ちた梅干しを口に入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます