第2話夏休み

最強のカブトムシを採取するため長谷川 雄也は山を走る

「5時の鐘がなったら帰ってくるんだよ」

「わかってるって」

てきとうに母に返事をした。

家族で祖母の家に帰省して3日目

おにぎりに虫籠、それに虫取り網をもって朝早くに家を出た。今日こそは大きなカブトムシをとって学校で同じクラスの健太と優斗に自慢するんだ。2人とは今年こそ夏祭りに行こうと約束していたがそのお祭りもなくなり少し寂しいけどそんなのなくたって悲しくない。いや嘘だ本当は少し寂しいけどそんなことを嘆いてもお祭りはないままだ。だから僕はこの夏いっぱいカブトムをとって楽しむと決めた。そう決めたのだ。でもやっぱり何かが足りない。そんなことを考えているうちに足取りが悪くなる。でもそんな場合じゃない早くしないと虫たちが逃げてしまう。そう思い少年はまた山を走る。いつもとは違う 物足りない夏に何かを求めて。



もう何時間探したことだろう。虫1匹と見つからない。もう少し念入りに調べてくるべきだったのか。小学3年生の雄也はカブトムシが何時に取れるのか知らない。少なくとも森にいることだけは確かだ。とにかくもう少し探してみようとただひたすらに樹木を蹴って揺らすばかり。

とは言ってももうずっと探している。そろそろお腹も空く時間だ。どこかで持ってきたおにぎりを食べようとあたりをみわたす。

「あ!」

何時間も見てきた樹木と雑草の中にこれまでの光景とは違うものが見えて思わず声が出た。

気になってそれに近ずいて見る。近くまで来るとどうやら建物のようだ。誰かの家なのか、これがなんなのかは少年には分からない。表に回ってみると建物は自分の家と同じくらいの大きさのものが1つと物置部屋のような小さい建物の2つに別れていた。

物置部屋のほうはドアが空いていたので気になって入ってみる。

「わぁぁぁ」

中に入ってまず目に入ったのは7つほどあるボトルだった。中でも机の上に置いてある物は海の輝きまで上手に表現されていて少し遠くから見ていても美しいと分かる。もっと近くで見たい。そう思った。気づくと僕はそれを手に取っていた。

「誰だ!」

「はっ」

後ろで誰かの声が聞こえた。僕は驚いて声をあげる。

その時には自分の手にボトルがないことに気づいていた。顔から出た汗とそのボトルが音を立てて地面に落ちるのはほぼ同時だった。


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