エピローグ

※誤字脱字、探せていません。

 なにか見つけても、見なかったことにしてください。

 もうしばらくこの見苦しい言い訳が続くと思います。


■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


 ……あ。


 クリスティーナとの間に生まれた次男を抱き上げると、不意にクリスティーナが八歳だった頃の姿が思いだされた。

 なぜ今になって、とは思ったが、答えにはすぐに思い当たる。

 俺は『テオ』として十七歳まで時を戻した時に、三十歳まで生きた記憶を失くした。

 それと逆のことが起こったのだろう。

 クリスティーナと出会った時の年齢になったため、当時の『ティナ』のことを思いだしたのだ。


 ……誰の仕込みだ?


 つくづく、上手く仕込んでくれたと思う。

 八歳のクリスティーナの姿を思いだすと、すべてではないが当時の記憶や考えが思いだせた。

 ここから察せられることは、そのまま大人になっても、俺はクリスティーナを嫁にはできなかっただろう、ということだ。

 ティナはレオナルドの妹である、と名付け親であるサロモンから託されている。

 『レオナルド』のままでは、クリスティーナは妹としか思えなかっただろう。


 ……まあ、今さら妹とは思えないけどな。


 『レオナルド』としては『ティナ』を妹としか思えなかったが、今の俺は『テオ』であったし、クリスティーナは『クリスティーナ』だ。

 『クリスティーナ』はテオの妹ではないので、今さら『ティナ』と兄妹として過ごした記憶が戻ろうとも、俺たちに変化はない。

 俺は『テオ』で、クリスティーナは『俺のお嫁さん』だ。

 二人の間に二人も子どもが生まれているというのに、今さら兄も妹もないだろう。


「とーさん、今日はごちそうだよ」


 次男をあやしていると、長男が扉を開けて子ども部屋へと入ってくる。

 黒髪は俺とクリスティーナと同じ色だが、青い目をしているため顔つきは心なしかクリスティーナの方に似ている気がした。

 ベルトランが付けた本名は少し長いのだが、クリスティーナは彼を『タロー』と呼んでいる。

 日本式の名付けで、太郎、二郎、三郎と生まれた子の順番が判るらしい。

 つまり、クリスティーナはまだまだ家族を増やしてくれるつもりのようだ。


「とうさんはお野菜たっぷりゴロゴロスープを作る役だって!」


「そうか。クリスティーナは……またプリンか?」


「かあさんはプリン作ってる。あと玉子サンドと、たつたあげと……」


「……ご馳走のメニューを選んだのはタローか?」


「そだよ。玉子サンドだいすき」


 一年前に嫁いだミルシェが、今日は赤ん坊を連れて遊びに来ることになっていた。

 そのご馳走として、クリスティーナは台所で張り切っているらしい。

 メニューを聞く限りは、サリーサは乾燥葡萄ヌゼール入りのチーズケーキを作っているのだろう。

 チーズケーキはまだまだ他人ひと様に出せるものではない、とクリスティーナは自分では作らない。


「プリンと、玉子サンドと、たつたあげと、シチューと、とうさんのお野菜たっぷりゴロゴロスープと、ヌゼール入りのチーズケーキがあったらぼくは幸せ」


 ご馳走だよ、と無邪気にタローが笑う。

 普段は澄ました、おとなしい子どもなのだが、ことご馳走メニューについてはうるさい。

 うるさいといっても、毎回同じ物を指定してくるだけだ。

 タローが言うわがままらしい唯一のわがままなので、俺もクリスティーナも毎回受け入れている。

 どれもクリスティーナの好物でもあるので、反対する必要もない。


「タローは果物を採ってくる係か?」


「そうだよ。かごを持って、庭に出るだけ」


 そうしたら土の精霊が籠へと果物を入れてくれる、といってタローは笑う。

 生まれつき精霊に好かれる性質をしているらしいタローは、家の外に出れば精霊に群がられる。

 そのタローが果物を求めて籠を掲げれば、精霊は進んで果物を運んでくることだろう。

 少し精霊に好かれすぎるところが心配だが、時折顔を見せてくれるレミヒオがタローに精霊との付き合い方を教えてくれているようなので、それほど心配はしていない。


 なんとなく自立が早そうだとは思うが、それぐらいだ。




                               ―― 終 ――




■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


おまけの更新は、とりあえず誤字脱字探しが終わったら。

最終章からほぼ誤字脱字探せていません。

余韻? ナニソレ? 美味しいものー?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る