第19話 新しい約束

※誤字脱字、探せていません。

 なにか見つけても、見なかったことにしてください。

 もうしばらくこの見苦しい言い訳が続くと思います。


■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


 神王の手に私の手を重ねると、周囲は一度白い光に包まれた。

 そしてその白い光が収まると周囲の様子は一変する。

 石造りの建物の中にいたはずなのだが、いつのまにか木々に囲まれた森の中に立っていた。

 振り返ると背後には巨大な木が聳え立っているので、大樹に隠された黎明の塔から私が出てきただけなのだろう。

 壁は抜けたが、距離としてはそれほど移動していない。

 おそらくは、ここはまだエラース大山脈の頂上付近だ。


「エラース大山脈は、一年中雪に覆われた地だと聞いていたのですが……」


「この大樹が精霊の世界とこちら側を繋ぐ楔の役割をになっている。世界の混ざった特別な場だ。もう普通の『標高の高い山脈』ではない」


 単純に考えて普通の場所ではなくなってしまったので、本来の状態には戻らないそうだ。

 大樹にとって常に最高の条件が整い、その大樹自体も普通の樹木ではない。

 エラース大山脈は元から霊峰として崇められていたが、本当の意味でただの山脈ではない特別な地になってしまったようだ。


 ――おうさま もってきた。


 ――おうさま ほめて。


 見て見て、と葉っぱの髪を揺らして木の精霊が自己主張をする。

 数人がかりで手に持っているのは、どこかで見た覚えのある鉢植えだ。


「……ちょっと待ってください。どうしてグルノールの館にあるはずのわたしの鉢があるんですか?」


「どうしてと言えば……持ってこさせたからだが」


 何か問題があったか? と神王はかすかに首を傾げる。

 住居不法侵入を示す動かぬ証拠が目の前にあるのだが、神話の時代から好きに世界を巡っていた神王には他者の住居へ無言で侵入することぐらいなんでもないらしい。

 というよりも、冷静に考えれば精霊に人間の住居事情など正しく理解されているかも怪しいだろう。

 ほとんど精霊のような生活を神話の時代から続けてきた神王に、今さら人間ひとの世の常識を説くことは難しいのかもしれない。


「テオが迎えに来るまで、ここで待っているのだろう? 俺たちはテオが来るまでおまえを守ると約束した。となると、この地が一番都合が良い」


 そしてレオナルド――本当の名前はテオだったらしい――が迎えに来るまで、私がここで過ごすためには準備が必要だろう、と神王は言う。

 判りやすく言えば、いつ迎えに来るかも判らないレオナルドを待つのに、立ち続けているのは辛い。

 せめて椅子ぐらいはほしいとこだ。

 そして、迎えは本当にいつ来るか判らないので、身を休ませるための長椅子や、暇を潰すための本や刺繍の道具、喉を潤すための水、空腹を満たすための食事、風を避ける壁、夜露を凌ぐ屋根、とここで私がレオナルドを待つためには、実に様々なものが必要になってくるだろう。


「……え? 本格的に篭城するのですか、わたしは?」


「王都へ戻れば閉じ込められる、と言っていただろう。そんなことはさせない」


 ああ、そうだ、と言葉を区切り、神王は森へと何ごとか言葉を投げかける。

 そうすると、私にはなんと言ったのか聞き取れなかったのだが、木々の間から十三羽の梟が南へと飛びたった。


「一応、何を頼んだのか聞いてもいいですか?」


「イヴィジア王国には未だに精霊の声が聞こえる者が少ない、と問題になったのだろう?」


 梟たちは手っ取り早く精霊の声が聞こえる人間を増やしに行ったらしい。

 何故私に精霊の声が聞こえるのかと聞いてみたら、私は精霊に攫われすぎたため、私の中で精霊は存在してあたりまえのものになってしまっているからだろう、という回答をいただく。

 サリーサとレオナルドが精霊の声を聞いていたのも、私の保護者の立場にいたからだ。

 私が精霊に攫われすぎたため、レオナルドたちにとって精霊という存在は疑いようもなく実在するものだった。


 精霊の声を聞く素質としては、精霊の存在を受け入れられる純真さと、柔軟さが必要らしい。

 今さら精霊が見えるようになったからといって、大人が精霊の声を聞くようになるのは難しい、あるいは時間がかかるだろう、というのか神王の見立てだ。


「……ということは、あの梟たちは子どものところへ行ったのですね」


「一羽は王族の姫のもとへ向かわせた。親友の妹を囲おうと言うぐらいだ。自分の娘ぐらい喜んで差し出すだろう」


「ええっと……?」


 それはもしかして、アルフレッドの娘の元へと梟は飛んだのだろうか。

 顔には出ていないのだが、神王は私を閉じ込めようとしたアルフレッドに対して怒っているようだ。

 為政者としては仕方のない判断である、と一応の擁護はしてみたのだが、為政者ならばこそ、と神王は聞く耳を持たなかった。

 ついでに言えば、いつか言っていた転生者を政治的に利用しようとした、ということに腹を立ててもいるようだ。


「風の精霊の力を借りた情報収集は、わたしの方からやるって言い出したんですよ。アルフレッド様に利用なんてされていません」


「……まあ、精霊の声が聞こえる者が貴重なのは数年のことだ。すぐにそちらの方が普通になってくる」


 神王としては、本気でアルフレッドに報復をしたいわけではなかったらしい。

 考えようによっては、いち早く自分の娘が精霊の声を聞けるようになるのだから、為政者としては利益の方が大きいだろう。


 ……頑張れ、アルフさん。私の次の問題児は御自分の娘さんですっ!


 アルフレッドの心労はこの先も減ることはないようだ。

 あとはアルフレッドの娘と精霊の相性次第だろう。


「しかし、篭城か。上手いことを言うな」


 迎えを待って閉じこもるのなら、篭城するのに相応しい場へと整えてやろう、と言って神王は鉢植えのドールハウスを手に取る。

 最初は大きすぎる鉢植えが淋しくてピックで人形などを飾っていたのだが、興が乗って楽しんだドールハウスだ。

 無駄に凝っていて、今や私の老後に住みたい理想の一軒家と化していた。

 サリーサの希望で追加した使用人の離れもあるが、一軒家だ。


「良く出来た箱庭だな」


「途中から面白くなって、わたしの理想の家にしてみました」


 こじんまりとしていて落ち着くだろう、とドールハウスを自慢する。

 ランヴァルドが間取りを作り、サリーサが台所にこだわり、ちまちまと私がカーテンや布団を作ったドールハウスだ。

 ベッドに飾った黒い犬のぬいぐるみは子守妖精のお気に入りでもある。


「王都の離宮やグルノールの館より、このぐらいの小さな家が理想です」


 将来的にはオレリアの家のような、隠れ家的な小さな家でのんびりと暮らしたい、と続けると、神王は満足気に頷いた。

 ならばこれで丁度いいな、と。


「……何をするつもりですか?」


「篭城に向いた隠れ家がほしいのだろう?」


 任せておけ、と神王がドールハウスを宙へ投げると、放物線を描いて落ちるドールハウスは見る間に大きく膨らんだ。

 地面へと落ちる頃にはもう立派な一軒家の大きさにまで膨らんでいて、僅かな地響きを立てる。


「ほぉあぁっ!?」


 驚きすぎて、口から変な声が出た。

 本格的に作られていたとは思うのだが、それでもただのドールハウスだったものが、目の前で本物の家に変化している。

 これで驚かずにいられる人間は少ないだろう。


 中を確認してくるがいいと促され、出来たばかりの家の中へと入った。

 薄い一枚板で作られた壁は何枚もの板を連ねた本物の壁になっており、それらしく石膏で作られていた石壁も本物に変わっている。

 家具はどうだろう、と触ってみると、こちらも本物の家具に変わっていた。

 本棚には紙で作ったミニチュアの本が並んでいたはずなのだが、これも本物に変わっている。

 蔵書としては、グルノールの館と同じだ。


「すごいです、神王様。このまますぐにでも住み始められそうです!」


「そのつもりで整えている」


 外へ戻って感動をそのまま神王へ伝えると、呆れ顔の神王が家畜小屋のドールハウスを本物に変える。

 私が家の中を見ている間に井戸や使用人の離れのミニチュアが本物に変わっていた。


「……庭に希望はあるか?」


「花壇と……家庭菜園を希望します」


「昼寝のできる木陰も用意しよう」


 言うが早いか、下草がひとりでに地面へと引っ込み、木々は根を地面から抜き出して歩きはじめる。

 あっという間もなく花壇と畑、日光浴のできる庭が出来上がると、森と家の境に細い木が生え、枝を伸ばすことで隣の木と繋がって柵が完成した。


「……庭と外との境界が扉、というのはなんだか不思議な気がしますね」


 普通は柵と同じような作りの簡単な木戸だと思うのだが、何故かそこだけ普通の扉だ。

 後ろを覗き込むことはできるのだが、正面からは向こうが見えない。


「この扉は特別だからな」


 私の子守妖精は、扉の開閉をきっかけに移動を行っている。

 こう説明が続けば、この扉がなんのための扉かが判った。

 この扉は、この場所と外とを繋ぐ特別な扉なのだろう。

 神王が扉をノックすると、いつの間にそこへ入り込んでいたのか、鍵穴からいつもの大きさに戻った子守妖精が抜け出して来た。


「あれ?」


 鍵穴から出た途端に垂直に落ちる子守妖精を両手で受け止める。

 すると、外側から扉が開き、扉の向こうにはサリーサが立っていた。


「やっと繋がりました。クリスティーナ様、レオナルド様へ鉢を届けると言って、何時間かかっているのですか。これ以上アルフレッド様を誤魔化すのは……」


 アルフレッドを誤魔化すのは難しい、と言いながら、サリーサは遅れて気がついたようだ。

 メール城砦にいると思っていたはずの私が、屋外にいる不自然さに。


「……クリスティーナ様、説明をしていただけますでしょうか」


「えっと……色々あって、レオナルド様が迎えに来てくれるそうなので、それまでここで待っています」


 事情と要点をすっ飛ばして結論だけを言ってみる。

 無茶が過ぎる説明だったはずなのだが、サリーサはこれだけで納得してくれた。

 そうですか、と言って一度扉を閉めたかと思うと、次に扉が開いた時には私の荷物と自分の荷物を用意していた。

 驚くことに、アーロンも一緒だ。







 風の精霊が教えてくれたのだが、ジャン=ジャックは無事に国境の外へ放り出されたらしい。

 幸いというのか、グルノールの街近くへと放り出されたため、黒騎士に捕まってもそれはグルノール砦の黒騎士だ。

 元からの顔見知りであったため、捕縛されることもなく、すぐに服を借りることもできたようだ。

 一度グルノールの街へ戻ってジゼルを安心させたあと、私がするのを見ていたことから土の精霊を見つけ出し、この隠れ家へと自力でやって来た。

 精霊の方も、ジャン=ジャックが私の護衛であることは知っていたので、素直にジャン=ジャックを運んだようだ。


 この精霊と神王に守られた隠れ家周辺は、私が招いた客と、私の世話をする人間、私を守るための人間は普通に入ってこられるようになっていた。

 例外としては、アルフレッドとアルフがいる。

 この二人には私が弱いので、うっかり説得されて離宮へ戻ることがないように、と最初から神王の命令で精霊が近づけないようにしているそうだ。


 これでは私が神王に閉じ込められているように思えるのだが、これは少し違う。

 レオナルドは、自分が迎えに来るまで何からも私を守れ、と精霊に願った。

 そのため、人間と判断基準の違う精霊が、何かの拍子に『私を傷つけた』と誤認して他の人間へ報復行為に出るのを防ぐためという意味合いもある。


 一言でいえば、お互いのための住み分けと言うものだ。

 特に王子であるアルフレッドば、場合によっては私を利用することも考えなければならなくなってくるので、私は目の前にいない方が良い。


 カミールが『魔法』を作り出したということで、レオナルドを待つ間の有り余る時間を使って神王から『魔法』を教わってみることにした。

 『魔法』というと呪文を詠唱して発動する前世で遊んだゲームなどのものを思いだすのだが、この場合の『魔法』は精霊にお願いをして、その不思議な力を借りることだ。

 イメージとしては『精霊魔法』といったところだろうか。

 『癒しの魔法』は水属性、というような属性に縛りはないようで、火の精霊でも水の精霊でも、いわゆる『癒しの魔法』は行えるようだ。

 ただ、やはり得意、不得意という差はある。


 神王の指導の下、『癒しの魔法』を習得してみた。

 最初の実験台となったのは、走る時に足をもつれされる黒柴コクまろだ。

 解毒はすでに終わっていたので、手を貸してくれたのは水と火と土の精霊である。

 『癒しの魔法』と言ってはいたが、効果としては栄養のあるものを畑で土の精霊が作り出し、火と水の精霊が血の巡りを良くして、と『魔法』と聞くよりリハビリに近いものがある。

 物語に出てくる魔法のように『ヒール』と呪文を唱えただけで治りはしない。

 小さな擦り傷を治す程度ならできるが、これも火と水の精霊による共同作業で、血の巡りを良くして細胞を活性化させ、結果的に傷が塞がるのが少し早くなるだけである。


 劇的に早く治すこともできる、と神王は教えてくれたのだが、副作用が怖くて試す気にはならなかった。

 神秘の力で傷を塞ぐのではなく、あくまで回復を早めるという『癒しの魔法』は、回復を早めると猛烈な痒みに襲われるらしい。

 たしかに、考えてみればそこだけ細胞が活性化しているのだから、そういうこともあるかもしれない。

 あとは単純に、治りかけの傷は痒いというのもある。


 カミールはこれらを『魔法』と呼んで喜んでいたようだが、今のところはこんな程度だ。


 とはいえ、たとえ小さな効果しかなくとも、黒柴は走る時に足をもつれさせなくなったし、アーロンの視力も少しずつだが戻り始めた。

 私にはこの小さな『魔法』で充分だ。


 ……なんていうか、ここは極楽か? ってぐらい満喫してる気がする。


 神王が用意してくれた隠れ家は、恐ろしく気楽で住みやすい。

 気候の変化はあまりないが、精霊がいるので季節の移り変わりはちゃんと知ることができる。


 隠れ家に住むようになって、すでに半年は過ぎていた。


 その半年という時間を、私は実にのびのびと過ごしている。

 他人ひとの目がないということで無理に淑女として振舞う必要がなく、お願いすればサリーサも家事を手伝わせてくれた。

 畑を弄るのも楽しい。

 出かけたくなれば庭の扉から何処へでも行けるし、逆に引き篭もりたくなれば来客を拒むこともできる。

 家事をするのに疲れた日は精霊が変わってくれるし、そもそもミルクや卵を産む家畜たちは自分の世話は自分たちでしてくれた。


 心地よい疲労を伴う程度の労働と、それ以外は自由に使える時間のある生活。


 本当に、考えれば考えるほど隠れ家での生活は快適だ。

 ただお嬢様としてお世話されつつ、すべての時間を趣味に費やすよりも健全で健康的な気さえする。


 もう老後なんて待たずにここで暮らしたい、と思わずこぼしたら、庭に二本の木が生えた。

 見る間に蔓が伸びてきて、今では神王お気に入りのハンモックとなっている。

 私も時々借りて昼寝をするのだが、どうやら本気でこの隠れ家は私を駄目人間にしてくれる気だ。

 快適すぎて、人間ひとの社会に戻るのが少し億劫になってくる。







「……そういえば、レオナルドさんから聞いたのですが、神王様はわたしに何かお願いがあるようだ、って」


 それを伝えるために、いつか必ず姿を現すだろう。

 レオナルドからはそう聞いていた。

 いつか必ずどころか、レオナルドが迎えに来るまでの保護者代行として、もう半年以上も一緒にいるのは笑うところだろうか。

 この半年間というたっぷりとした時間の中で、神王からは様々な話を聞いていた。

 精霊との付き合い方や、神話の真実については少しずつ聞いていたのだが、神王の口から願いらしい言葉を聞いたことはない。

 忘れているのだろうか、と思いだしたついでに聞いてみたのだが、やはり神王自身忘れていたようだ。

 言葉が出てくるまでに少し時間がかかった。


「そうだった。俺にはおまえに叶えてほしい願いが一つあったのだったな」


「なんですか? わたしにできることでしたら、何でも言ってください」


 すでに散々世話になっているし、それでなくともできる範囲でなら願いを叶えてやりたい。

 ただの人間でしかない私に、神王のような不思議を操る力などないが、多少の不思議は精霊の力を借りて行うことができる。

 無理な願いでも、可能な範囲まで近づければ良いのだ。


 さあ、どんな願い出てくるのか、と身構えていると、神王は苦笑いを浮かべる。

 簡単なことだから、そんなに力む必要はない、と。


 すべての『精霊の座』が破壊されれば、神王はいよいよ正式に死ぬことになる。

 レオナルドさえ私を迎えにくれば、神王は心置きなく次の生に向かう予定だ。

 どこかへ生れ落ちて、新しい人生を歩き出すらしい。


「俺の願いは、本当に簡単なことだ。……どこかで会うことがあれば、また食事に誘ってくれ。おまえと初めて出会ったあの日、食事へと誘われて俺は嬉しかったんだ」


 どこか懐かしそうな目をして遠くを見つめる神王は、私と初めて出会った日ではなく、さらに昔を思いだしているのだろう。

 一緒に食事を、と誘われたのは私で二度目だと、言っていたのを覚えている。

 神王が一緒に食事をしたいのは、きっとその時の相手だ。

 そして、それは私ではない。


「……そんなことでいいんですか?」


「他には何もない。……そうだ。その時には、また玉子サンドが食べたい」


 あれはなかなか美味しかった、と神王が言うので、一緒にジュースも用意してやろう、とおどける。

 他にも食べたいものはあるかと聞いてみたら、神王の口から出てくるのは私の食べたことのあるものばかりだ。

 もしかしたら、風の精霊か何かに聞いて、私の好物を把握しているのだろう。

 レオナルドの作ったゴロゴロ野菜スープだなんて名前が出てくるのだから、間違いない。


「プリン、竜田揚げ、乾燥葡萄ヌゼールの入ったチーズケーキ、タビサの作ったシチュー、お野菜たっぷりゴロゴロスープ……、神王様ってけっこう食いしん坊ですよね」


「長く何も食べない生活をしていたからな」


 次の生では普通の家庭に生まれ、家族で食卓を囲みたい、と少し淋しそうに神王は笑う。

 神王という存在は、もしかしたら他者ひとと同じテーブルにつくことも少なかったのかもしれない。


「では、いつか。どこかに生まれた神王様と会えたら、一緒に食事をしましょう」


 約束の証として、なんとなく小指を差し出す。

 意味が判るはずのない神王が不思議そうな顔をしたので、『指きり』についてを簡単に説明した。

 前世で約束を交わす際に子どもたちがした、遊びのようなものだ、と。


 遊び、と言ったことが良かったのかもしれない。

 家族で食卓を囲みたい、と言った神王は、もしかしたら誰かと遊んだこともないのだろう。

 すごく複雑そうな渋面をしつつ「確かに約束をしたからな」と私の指へと自分の指を絡めた。

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