第13話 ギルドと冒険者登録
シルフィはじいちゃんとばあちゃんに打ち解け、今ではばあちゃんに魔法の修行をしてもらう仲?となっている。
まだ学園に入学するまで2年近くあるが、修行がほとんど終わってきて、ダンジョン攻略はもう終わったので、冒険者ギルドで冒険者登録をすることにした。
まぁ、こっちの世界のバイトだな。命がけだけど。
◇
「へぇ、ここが冒険者ギルドか。」
テンプレだったら、ここでガラの悪い奴に絡まれて、ボコボコにやり返したりするんだけどな。
「お?お前さん、見ない顔だな。」
筋骨隆々とした男性が話しかけてくる。
まさか、本当にテンプ・・・
「あ、はい。冒険者登録をしに来たんですが。」
『ここはガキが遊びに来るところじゃねぇ。』とか言わないかな?というか、行って言ってほしい。
「そうか、頑張れよ。」
「・・・はい。」
何もないんかーい!なんなら、激励の優しいまなざしをありがたく頂戴したわ。
期待していたから、妙な間ができちゃったよ。
「すみません。冒険者登録をしたいのですが。」
受付の方に話しかける。ちなみに、受付は全員女性だった。ここはどうやらテンプレどおりらしい。しかも、みんな可愛いし。
「新規冒険者登録ですね。ステータスプレートを見せて下さい。」
「あ、」
ヤバい、そこ考えていなかった。
てか、そいつの存在忘れていた。一応、あのあと血を垂らしてステータスプレートにしたけど、そっちに表示された魔力量はやはり桁違いで、五属性全てに適正があった。あと、闇属性もあったな。
どうする?いや、でも、登録したいし。
「これってプライバシーの保護とかされるのですか?」
「ぷらいばしー?」
コテッと受付嬢は首をかしげる。キャラづくりのためにやっているのだろうが、可愛いな。
そう言えば、プライバシーって言葉はこっちに無かったな。あんまり不用意に地球の言葉を使わない方が良いかもしれない。悪目立ちしそうだ。
「えっと、自分のステータスプレートの内容って他の人に見られたりしませんよね?」
「はい、大丈夫です。私とギルドマスターしか見れません。」
だったら良いか。
俺はポケット(正確にはアイテムボックス)からステータスプレートを取り出して見せる。
「じゃ、はい。」
ステータスを表示して、受付嬢にプレートを渡す。
もちろん、表示されている魔力量は約800000だ。
周囲のは冒険者達の会話で騒然としているし、そもそもこっちを見ている人はいない。これなら大丈夫・・・
「ええっ!!!」
驚愕の声に、周囲の視線が突き刺さる。
おい、フラグかよ。
「これって、本当ですか?」
「逆に、ステータスプレートって改造できるんですか?」
「う~ん?ちょっと待って下さい。」
そう言うと、奥の方に行ってしまった。
てか、ステータスプレートって改造できなくても、似た金属板をそれっぽく作れないのかな?光魔法とか上手く使ったらいけそう。
「ギルマス、彼です。」
しょうもないことを考えていると、
「ほう。まだ青いのにしっかりとしている。」
なんか強そうな人が来たー!ギルマスはギルドマスターの略名だな。
この人の雰囲気がじいちゃんに似ている。この人も武人だ。
「あの、何かやらかしました?」
めっちゃ心当たりがあるのですが・・・
「ああ、ちょっとあるからこっちに来い。」
そう言うと、一般人立ち入り禁止のギルドカウンター奥へと進む。
そのまま、ギルドマスタールーム、通称ギルマス部屋へと入った。
「で、何故こんな高い能力を持っているのかは聞かないでおく。」
「はぁ。」
それは、助かる。
けど、何で?普通は気になるだろ。
「その高い能力を見込んで、話しというか依頼がある。」
依頼だと?何か面倒ごとを背負いそうな気がする。
「それは、強制ですか?」
「…いや、違う。依頼だ。だが、引き受けてくれると、とても助かる。逆に引き受けてくれなければ、甚大な被害が発生する。」
何だ?天災級の魔物討伐とかか?さすがに1人じゃキツいな。
てか、このおじさん断りづらい言い方してくるな。
「依頼達成報酬として、冒険者ランクはBランクから始められるようにしよう。」
ん?Fランクスタートのところを、4つもランクを飛ばしてくれるのか。
「では、肝心の依頼内容はなんですか?」
これを聞かなきゃ始まらないだろ。
俺でも出来ることと、出来ないことがあるし。この惑星の地軸を変えるのとかは難しそうだ。魔王討伐は、聖剣があれば行けないことはないかもしれなくもない。
「スタンピードを食い止めてくれ。」
バンッと両手を机につけて、ギルマスは勢いよく頭を下げた。
「はぁっ!?」
出来ないことは無いだろうが・・・・めんどくさっ
「スタンピードが起こるのはいつなんだ?」
事前に発見出来たのは、街の結界か、森の制界のおかげだろう。しかし、この2つの魔力感知及び魔法防御結界は、すぐには発見出来ない。スタンピードの準備がある程度進み、空間魔力が濃くなって来たら魔力反応を察知し、作動するのだ。
「み、3日後だ。」
おぅ?『みっか』って何日後だ?
あれ、何かあと72時間くらいしか無い気がする。
間に合わなくね?
「町の人の避難は?」
「パニックになるのを危惧して、まだ知らせていない。」
「……」
(あー、このギルマスダメだわ。優柔不断過ぎんだろ。)
町が壊滅状態になるのと、町人がパニックになるのでは、天秤にかけることもなくどっちが重要か俺にも分かるのに。
「つまり、正確にはスタンピードが起こる前に魔物を狩りまくって阻止するか、原因となる魔力石を回収・魔力吸収しろってことだろ。」
「まぁ、そうなるな。」
けど、ここらの魔物は経験値が少ないんだよな。凶暴化したら、経験値上がるんか?
「その前に、町の防御結界を強化しておくよ。」
念には念をで、魔力を20万くらい使って強化するか。
別に大量に魔力余るし、結界の構造を見てみたいし。
後者がメインの目的じゃないかと疑った奴ら、それは気のせいだ。
◇
「ここだ、町の防御結界はここですべて担っている。」
そうやって言われて来たのは、町の中心部にあった噴水だった。
前にここを通った時はには何も気づかなかったが、〈原初の魔力〉を通して見ると、中に大きな魔力石があるのが手に取るように分かる。
「中にはどうやって入るんだ?」
噴水の水管にあたる部分に魔力石があるのだろうが、あたりの水場が近づくのには邪魔になる。
「開け、結界よ。」
ギルマスがそう唱えると、噴水が重々しい音とともに真っ二つに割れた。
「はっ?」
割れたのも相当驚きなのだが、それよりも水場の水が重力という大きな物理法則に抗っているのに衝撃を隠せなかった。
「あ、なるほど。結界を張ってあるのか。」
結界装置に結界を張っているのようだが、これはこの装置を守るためのものには見えないんだが。
まぁ、早く強化して魔物討伐に行こうか。
…
「はい、終わりました。」
魔晶石を壊すという前科があったため、慎重にやっておいた。
まぁこの魔石、ほとんど魔力飽和状態だが。
「ありがとう、本当に助かる。ところで、強度はどのくらいなのだろうか?」
「う~ん、超級魔法なら3回は防げると思います。」
「なっ!?」
な?ってなんだ?弱すぎたか?余裕持って3回って言ったけど、超級の基準知らないし。まぁ、魔力17万しか込めてないけど、それじゃ不満だったか?
「そうか、ありがとう。その強度なら大丈夫だ。」
なら良かったが、なんでそこはコソコソ話している?目の前で内緒話されても困るんだが。
ギルマス 「おい、今の聞いたか?超級魔法3発だとよ。」
受付嬢 「帝都の結界にも引けを取らないですね。」
ギ 「正直、この結界だけでスタンピードを止められそうだな。」
受 「そうやって
ギ 「まぁ、彼に期待だな。」
2人の会話がイロアスに聞かれることはなかった。
受 「はわ~。イロアス様強い、カッコいい。なんとしてでも気に入ってもらわないと。」
そして、受付嬢マーラの呟きは誰にも聞かれることはなかった。
◇
ギルドに戻ると、色々な視線を浴びたが特に何かが起こるわけでもなく、誰もイロアスに突っかかっては来なかった。
依頼掲示板を見ると、見覚えのある魔物がいたので依頼表を数枚とり、さっきの受付嬢のところに行く。
「これ、お願いします。」
さっきの依頼表を出したのだが…
「あの~、実はこれDランクからでして、イロアス様には受けることができないのですが…。」
「じゃあ、結界強化でチャラにできません?」
声を細めてイロアスは願い出た。この時の2人の距離がちょっと近かったのだが、イロアスは特に気にしていなかった。
実際、俺がスタンピードを食い止めたらBランクに上がるわけだし、Fランクの薬草集めとかダサいし。
「う~ん。まぁ、失敗するとは思えないですし、特別に良いですよ。」
「ありがとうございます。」
「あ、でも。」
すでに振り返った俺の背中に声がかかる。
「これは私達だけの秘密ですからね。」
と、ウインク付きでマーラは言った。
そばで2人のことを見ていた男性冒険者達は、その可愛さに頬を緩ませて見惚れていたのに対し、イロアスは軽く手をひらひらとさせるだけだった。
「じゃあ、少し魔物を間引いてきますね。」
俺は出口でギルマスにそう告げて周辺の森を散策するとともに、魔力石の在り処を探すことにした。
「しっかし、ばあちゃんが今日行って来いって言ってきたからきたんだが……」
改めて面倒くさくなってきた今日の依頼を思い返し、空を仰ぐ。
「巻き込まれすぎだろ、不幸事とか死亡ルートに。」
門をくぐって町を出ると、鬱蒼と生い茂る森林が目の前に広がる。
いつも使う北門ではなく、魔物が多く生息するこの森に近い東門から出たため、見慣れない光景ー目の前の大森林ーに圧倒されていた。
「近くに魔力石はないな。」
〈原初の魔力〉によって魔力を可視化できるようになったイロアスは視覚と魔力の両方で敵を視ることができるようになっていた。
スタンピードを起こすほどの魔力石は、長い間蓄積された空間魔力を膨大に溜め込んでいるため、〈原初の魔力〉でよく見える。つまり、視認できる範囲にあるならば、イロアスにはよく視えるのだ。それは、魔力量の多い人間や魔物にも言えることだが。
「じゃ、魔物を間引きますか。」
………
それから1時間半程度、足を魔力で強化したあとに、〈ブースト〉で森中を駆け回り大量の木々と一緒に魔物を狩りまくった。
周りの魔物はあまり強くなく(イロアスにとって)、なんか見慣れた魔物がいた気がするのだが、ほとんど居なくなってしまった。その代償として森がだいぶ見通しがよくなってしまったのだが、まぁ、スタンピードとなら天秤に掛ける余地もない。
あまりにもイロアスの駆けるスピードが早すぎて、死体を【アイテムボックス】に入れ逃したものもあるが、死体遺棄にはならないだろう。
ちなみに、切り倒した木材はちゃっかりと【アイテムボックス】に入れている。
◇
「すみません、依頼達成報告と魔物素材の買取をお願い出来ますか?」
さっきの受付嬢がいなかったので、空いている別の受付嬢に声をかける。
「あ、あなたはイロアス様でしょうか?」
今日来たばかりの俺の顔を覚えているとは、記憶力がすごいな。
「はい、そうですが。」
「少し待って下さいね。今、マーラを呼んできます。」
そう言うと、彼女は奥へと行ってしまった。
マーラとは?テンジクネズミ科のげっ歯類の名前かな?
「早かったですね、イロアス様!」
笑顔一杯で出てきたのは、さっきの受付嬢だった。その張り付いた笑顔は職業スマイルだったが、それでも可愛さは十分だった。
あ、すみません。げっ歯類なんて言って。
と、イロアスは胸中で謝っておいた。女子に向かってげっ歯類なんて言うのはだいぶ酷い。そんなこと言うやつは男じゃない。
「まぁ、暴れまわったので、だいぶ乱雑に狩ってしまいましたが。」
そう言うと、イロアスは【アイテムボックス】から、大量の魔物の死骸を取り出した。
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