第10話 地下100層ボス戦①
「ここが、ボス部屋か。」
目の前に広がるのは、象が通れるくらいに大きい、観音開きの扉だ。
扉越しでも、強い気配が伝わってくる。
「ステータスオープン。」
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イロアス 12歳 Lv99 魔力量495000/495000
【称号】
[俊足の暗殺者]
[忍び寄る者]
[暗殺者]
[スライムキラー]
[ゴブリンキラー]
[英雄]
[到達者]
[ダンジョンに挑みし者]
[進みし者]
[蓄積した努力]
【イレギュラーユニット特典】
・1LvUPごとに魔力量+5000、ステータスポイント+10。
・10LvUPごとにエクストラポイント+1
【ステータスパラメーター】 SP…0
・筋力…400 ・魔法防御力…390
・知力…350 ・物理防御力…390
・素早さ…380 ・器用…230
【エクストラスキル】 EP…3
・〈鑑定〉Lv3
・〈超回復〉Lv5
【スキル】
・〈忍び足〉LvMAX
・〈回復促進〉Lv9
・〈ランページ〉Lv6
・〈英雄の一撃〉LvMAX
・〈暗視〉LvMAX
・〈努力の研鑽〉Lv6
・〈原初の魔力〉Lv5
・〈状態異常耐性〉Lv88
【アイテムボックス】
・リフレ草×256
・ボタナ草×86
・傷薬入りのビン310g
・輝緑石×80
・魔力石×7
・ダークオーガの大剣×1
・魔導鋼×580
・フェルスの杖×1
・ミスリル1.1Kg
・オリハルコン12g
・ファルシオン×1
・干し肉×15
・食塩362g
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「魔力よし、SPよし、ビームセイバーよし、レールガンよし!」
さっき干し肉に食塩を振りかけて食べたので、腹も減ってはいない。
【アイテムボックス】に容量上限があるのか分からないが、一応、整理してきた。
じいちゃんの剣もあるし、準備万端、時は来た。
頑強な扉は、見た目に反して軽く押しただけで内側に開いた。
「すげぇ。」
扉が開くと、壁に取り付けられたガス灯が燃える。
今までのボス部屋とは大違いで、天井は見えないほどたかい。
広さは、99層全体くらいだ。テニスコート8面くらいか?
「っつ。」
その中央に
ゴーレム達に比べると小さいが、ボスオークよりは大きい。足は無く、黒い瘴気が地面に付くか付かないかギリギリのところで、浮かんでいた。
「〈鑑定〉〈フレアランス〉×3」
【スキル】と魔法を同時使用するが、〈フレアランス〉は空を切る。
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デスリーパー Lv99
・---
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「?」
明らかに何かがおかしい。
そう思ったとき、
背後に殺気を
感じた。
「っつ。」
振り返ろうとした時、さっきの違和感が行動を押しとどめる。
0.0何秒の逡巡の末、
「上か!」
顔を上げると、銀に光る鎌が眼に映る。
手を上に挙げ、【アイテムボックス】から、じいちゃんの剣ファルシオンを出し、鎌を受け止めようとする。
キンッと高い音が響き、火花が散る。ファルシオンを通して重い剣撃が伝わった。
(〈鑑定〉。)
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デスリーパー Lv99
・常闇のダンジョンの最終ボス
・死神の複製体
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まさか、本当に死神だったとは。てか、この世界は神がいるのか?
まぁいい。そんなことは後だ。
「〈ウインドカッター〉×3!」
空気の斬撃は、デスリーパーの身体である瘴気に当たってもダメージを与えなかった。
「ሞት」
デスリーパーが小さく何かを呟くと、奴の右目が強い輝きを放つ。
一瞬、デスリーパーから視線を外して周りを見る。
何か、利用できるものはないか?地の利を活かせるような・・・無いな。
壁も天井も遠い。一面平らな床だ。
だったら、
「〈ウォール〉×2」
数よりも高さ重視で防御壁を築くのと同時に、デスリーパーから姿を隠す。
デスリーパーが紅色の攻撃魔法を放つと、俺の防御壁は一瞬で崩れ去り、土ぼこりが舞う。
よし、計画どおり。この土ぼこりで、奴は俺を見失う。
攻撃が来る頃には右へ回り込んでいた俺は、デスリーパーの背後をとる。
「はぁっ。」
右手にビームセイバー、左手にファルシオン。二刀流で、きりっとばかりに斬りかかる。
そこまでカッコよかったかは、分からないが。
「ምን」
左手のファルシオンは外套に傷を付け、左手のビームセイバーは黒い瘴気を蒸発させる。
なるほど、外套は魔法無効で身体である黒い瘴気は固体ではなく物理無効、しかも風属性と火属性は効かなかった。
つまりは、ダメージが入るのは雷属性の光魔法。多分、一番入るのは聖属性なんだろうけど、使えないし、ロザリーもいない。
しかし、有効打になりそうなモノならある。
「〈シャイニング〉。」
光魔法を放ち、動きを鈍らせる。
そのすきに、
「〈ウォール〉×10!」
さらに、
「〈ウォール〉×15!!」
デスリーパーと俺を岩のドームに閉じ込める。
「ሞት」
が、すぐにドームは破壊され、デスリーパーは俺を警戒してか、距離をとる。
「ちっ。」
魔力が無駄になった。まだ、残量は膨大だけれども無駄使いはできない。
ビームセイバーとレールガンを交換して、狙いを定める。
パンッ
小手調べに軽く放ってみると、簡単に避けられる。弾丸はガス灯の1つをかすめて、壁にぶち当たる。
まだ、スピードが足りない。もっと出力を上げないと。
バンッ。
再度撃つが、空中を縦横無尽に飛び回るデスリーパーには当たらない。
もう一度、狙いを定めて・・・
「あれっ?」
トリガーを引いても、軽い感触があるだけ。何も起こらない。トリガーを戻してまた引くが・・・
「弾切れか!」
あたふたとしている俺を見て、これは好機だとばかりにあいつは動き回るスピードを速める。
「ምን」
瞬時に背後をとったデスリーパーは、イロアスに直接攻撃をしようと鎌
を振りかぶり距離を詰める。それなのに、イロアスは微動だにしない。
鎌の刃がイロアスにあと少しで届きそうというとき、デスリーパーに背を向けたイロアスは口角をつり上げた。
「〈ウォール〉×15!」
俺とデスリーパーを取り囲むように、ドームを形成する。
「ሌላው ምንድን ነው?」
デスリーパーは、いきなりのことに対応できなくなったのか、困惑した声を上げる。しかし、慣性の法則に従った鎌は、スピードを減少させつつもそのままイロアスの方に吸い寄せられるように動き、、
イロアスの背中を切り裂いた。
「痛っ。」
クソッ。ここまで計算していなかった、まさか鎌があの状態で届くなんて。
でも、やることは変わらない。
「〈超回復〉!」
緑色のライトエフェクトが輝くと、デスリーパーが苦しそうにうめく。
「ጉዳት ይደርስብሀል」
やはり、〈超回復〉は聖属性のスキルのようだ。つまり、回復系のスキルがここでは、最大火力の攻撃系スキルになるのだ。
俺の背中の傷が塞がっていくのに対し、光の粒子に触れているデスリーパーの黒い瘴気は、どんどんと蒸発し霧散していく。
さすがにデスリーパーも1回の攻撃でやられるほどヤワなやつでは無かった。
自爆覚悟で、あの紅色の破壊魔法を放ち、俺の回復攻撃から逃げる。
だが、距離を取られたなら、レールガンで狙撃するだけだ。弾丸を再装填し、奴を狙う。
「っつ。」
完治した背中の傷の所に激痛が走り、反射的に背中をさする。しかし、〈超回復〉によって、そこには傷痕すら残っていない。
なのに、激しい痛みが走る。徐々にその痛みは頭の中に響くようになった。
「ぅがっ。」
頭痛がひどくなり、めまいも襲ってくる。
二重に重なり、ブレていく視界の中央に、いつもとは違った通告表示が出る。
《呪い・ダンジョンの縛り》
呪い……だと?状態異常とは違うのか。
しかし、あいつはまだ死んでないから見るのはあとだ。
通告表示が出された後、徐々に頭痛は収まっていった。
「
頭痛に襲われている俺を、何故か攻撃しなかったデスリーパーは頭に響く声を発した。言語は分からずとも、意味だけが伝わる不思議な声を。
「知るか!俺は長生きをしたいんだよ。」
バトルの再開の合図として、レールガンを1発お見舞いする。
「ሀም」
簡単に避けられるが、それはもう知っている。
これはただの目くらましだ。
俺はすぐさま準備に取りかかる。
オリジナルの対闇属性モンスター必中必殺貫通魔法の発動の為の詠唱を開始するのだ。
『黄道のように円を
詠唱をしつつ、相手の攻撃を避ける。常に魔法のイメージは忘れない。
頭に鮮明にイメージするほど、魔法の熟練度が上がり、精度も増す。
『放たれるは
デスリーパーの周りに、黄金色の魔法陣が円形に展開されていく。
デスリーパーは魔法陣の射線上から逃れようと動くが、魔法陣は常にデスリーパーの方を向き、自動追尾する。
『聖なる炎が闇を
ついに、合計で20
奴は俺への攻撃よりも自身の防御を優先したのか、俺と魔法陣から距離をとる。
『
1つひとつの魔法陣が黄色く輝き、光の
「〈ソーラーレイ〉!」
俺がそう叫ぶと20本の太陽光線が
魔法が着弾する寸前に、奴が外套で全身を覆ったのが見えた。
つまり、今、奴は前を見ていない。
後ろに隠し持っていたレールガンを左手から右手に持ち替える。こいつには、詠唱する前からずっと魔力を貯めていた。おかげで、ほとんど魔力が残ってねえ。
静かに、しかし素早く狙いを定めると、
「打ち抜け。」
〈ソーラーレイ〉よりも速いスピードで、弾丸が跳ぶ。弾丸がデスリーパーを貫通したあと、遅れて爆音が鳴り響き、広い空間に響き渡った。
時間差で、天井近くに居たデスリーパーが落ちてくる。
カツンと軽い音を立てて、おでこの部分が砕けた骸骨が転がる。それに被さるようにして、傷つき、穴の開いた外套がふわりと舞い降りた。
「ም・・・」
最後に何か呟くと、紅色の右目から光が消え、動かなくなった。
「レベル100になりました。魔力量が500000に上昇し、ステータスポイントが10ポイント付与されました。レベル100に達したため【エクストラスキル】〈成長限界突破〉を獲得しました。【スキル】〈恐怖耐性〉がレベル2になったため、〈状態異常耐性〉がレベル89になりました。【称号】[踏破者]を獲得しました。」
おー。なんか新しい【エクストラスキル】来た。てか、魔力量50万よ。多すぎでしょ。
『初めての常闇のダンジョン踏破者に、固有魔法と闇の紋章を贈与する。』
デスリーパーの声みたいに、頭に響く声が聞こえる。
一瞬、奴が復活したのかと身構えてしまったが、振り返っても見えるのは、死神モドキの
しかし、いきなり床が紫色に光り出す。
「っつ。」
なんだこれ、この床全体が刻印となっているのか?見たところ、この魔方陣は知らないが、古代魔法みたいだな。
輝きだしたボス部屋の床に驚きつつも、逃げ場がないので何も出来ないでいるしかない。
「ん?」
右目の視界が何かに遮られる。左目を
ファルシオンの刀身を鏡代わりにして、右目を見てみると、右目全体に何か魔法陣っぽいマークが紫色に輝いている。
床の刻印が強く光輝くと、体内の魔力が大きく脈動する。
一体、何が起こっているんだ?
「ふぅー。」
大きな波が引くと、少しづつ床の光は失せていった。それと、右目のよく分からんやつもなくなった。
「あ、そうだ。死体回収しないと。」
デスリーパーの死体を【アイテムボックス】に収納すると、忘れていた呪いについても確認する。
「ステータスオープン。」
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イロアス 12歳 Lv100 魔力量201000/500000
【呪い】
《ダンジョンの縛り》
【称号】
[俊足の暗殺者]
[忍び寄る者]
[暗殺者]
[スライムキラー]
[ゴブリンキラー]
[英雄]
[到達者]
[ダンジョンに挑みし者]
[進みし者]
[蓄積した努力]
[踏破者]
【イレギュラーユニット特典】
・1LvUPごとに魔力量+5000、ステータスポイント+10。
・10LvUPごとにエクストラポイント+1
【ステータスパラメーター】 SP…10
・筋力…256 ・魔法防御力…135
・知力…240 ・物理防御力…135
・素早さ…200 ・器用…230
【エクストラスキル】 EP…4
・〈鑑定〉Lv3
・〈超回復〉Lv5
・〈成長限界突破〉Lv1
【スキル】
・〈忍び足〉LvMAX
・〈回復促進〉Lv9
・〈ランページ〉Lv6
・〈英雄の一撃〉LvMAX
・〈暗視〉LvMAX
・〈毒無効〉Lv7
・〈努力の研鑽〉Lv6
・〈原初の魔力〉Lv5
・〈状態異常耐性〉Lv89
【アイテムボックス】
・リフレ草×256
・ボタナ草×86
・傷薬入りのビン310g
・輝緑石×80
・魔力石×7
・ダークオーガの大剣×1
・魔導鋼×580
・フェルスの杖×1
・ミスリル1.1Kg
・オリハルコン12g
・ファルシオン×1
・ゴーレム・デストロイヤーの残骸×5
・ゴーレム・ガーディアンの残骸×6
・デスリーパーの頭部×1
・デスリーパーの外套×1
【固有魔法】
・〈シェイド〉
【刻印】
・闇の刻印
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やっぱり、なんか呪われてるな。デスリーパーが
【固有魔法】ってのも増えているけど、それはさっきの床の刻印によるものか?
取りあえず、【呪い】のところをタップしてみる。見るからに一番ヤバそうだ。しかも、状態異常とは違うらしく、【スキル】が作動していない。
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【呪い】
・《ダンジョンの縛り》
・半年間、1度もダンジョンを踏破しないと死ぬ。
・1ヶ月間、1度もダンジョンに踏み入れないと死ぬ。
・この呪いを解呪することは出来ない。
・来るべき災厄に備えろ。
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「はぁっ?」
いや、なんともクソみたいな縛りだな。強制的に死地に
『来るべき災厄』なんてものには、自分で備えとけよ。と、文句を吐き捨てたいが、もう喰らっちまったものはしょうがない。
俺を巻き込まないで欲しいのは、やまやまなんだが。
長生きしたいのに、何故かこの世界は俺に対して不条理なんだよな。
暗いニュースだけじゃ嫌なので、【固有魔法】と【刻印】のところも見てみる。
多分こっちは明るいニュースだろう。
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【固有魔法】
・〈シェイド〉…闇を具現化させ、自由自在に操る。濃い魔力から成る闇は実体を持ち、物理攻撃も防げる。使用時には、闇の刻印が作動する。
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闇のオーラみたいなのを使えるのか。一回試しに使ってみたい。
暗殺者には相応しい魔法だな。攻守両用の万能魔法だなんて。
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【刻印】
・闇の刻印…右目に刻まれた、闇属性魔法の補助強化する刻印。自分の意思で使用できる。しかし、強大な魔法や、固有魔法を使う時などは、自動で発動する。
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おおー‼あからさまな厨二設定。俺の厨二心がくすぐられる。
『俺の右眼がうずく、邪眼が発動してしまう!』とかやりたい。
包帯と眼帯を探さないと。
そんなしょうもないことを考えていると、ふと暗がりの先に扉があるのに気づく。いや、扉というよりかは木でできた普通のドアみたいだったが。
入り口とは比べものにならない小ささで、成人男性なら、背をかがめなければ入れないほどだ。
「なんだあれ。」
明らかにダンジョンに似つかない代物だ。まるで誰かが後からつくったような・・・
引かれるように、そのドアへと歩み寄る。
一応のため、デスリーパーの外套をまとい、魔力を完全回復しつつ。
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