第4話 魔法を求めて苦戦する英雄

「あった、ここだ。」


 この前見つけた洞窟の前に立つ。

 太陽の光は差し込んでなかったが、洞窟内には、輝緑石きりょくいしと呼ばれる、ほのかに緑色に光る石のお陰で、松明がなくとも先が見えた。


「しょうがない、行くしかないか。」


 洞窟へと、一歩踏み出した。


 ◇

「あれは、魔物か?」


 角の先に少しだけ、黒い何かが見える。

 洞窟内は、薄暗く、輝緑石の光だけが頼りだった。


「〈鑑定〉。」


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 オーク Lv40

 ・群れで行動することが多く、大きな集団になると、ボスオークやオークロードなどが生まれ、群れを統制するようになる。

 ・棍棒こんぼうを使った打撃性の攻撃力が高い。

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「オークか。しかも、現在レベルは36と俺の方が劣っている。」


 〈忍び足〉を発動して、不意打ちで行くしかない。

 〈忍び足〉はLv4、普通に歩けば音は出ない。ゆっくりと距離を詰めて、剣を取り出す。あいにくと、オークは俺に背を向けている状態なので、気付かれることはない。

 力強く踏み出すと、そのまま剣を突きだしオークの胸を貫いた。


「ゴガッ、グゥ。」


 叫び声を上げることなく、オークは崩れ落ちた。

 おかげで、仲間を呼ばれる心配もない。


『レベル37になりました。魔力量が185000に上昇し、ステータスポイントが20ポイント付与されました。』


 ステ振りは適当にやって、次に備える。まだ魔物はいるはずだ。


 …


「クソッ。なんでこんなにオークが多いんだよ。」


 かれこれ30分近く、オークとずっと連戦している。

 曲がりくねりしているが、ここまでの1本道に何十体ものオークがいた。


「またいたし。」


 ずっと〈忍び足〉は発動しているので、そのまま歩みよっていく。

 ぐさりと一突き、オークは崩れる。

 もう何回もやっている事だ。


『レベル48になりました。魔力量が240000に上昇し、ステータスポイントが10ポイント付与されました。』


 またレベルアップしたのか。

 オークとの連戦はキツいが、高い経験値はおいしい。


「ん?ここで行き止まりか?」


 オークを狩りながら進み続けていたが、とうとう行き止まりまで来てしまったようだ。

 曲がり角の先は、壁だった。今までは、どんどん続いていた洞窟もどうやらゴールに到達したようだ。


「無かったな、魔力石。・・・・・ん?」


 壁にもたれつつ、干し肉を食べようとアイテムボックスから取りだそうとしたとき、横に小さな隙間があることに気づく。


「この細さ、前世の俺じゃ無理だな。」


 だが、5歳児のこの身体なら、進入は可能だ。剣を一度アイテムボックスにしまい、ほふく前進で前に進む。


「うあゎ、すげぇ。めっちゃ綺麗。」


 狭い石部屋の中で燦然さんぜんと光っている輝緑石は幻想的だった。

 そして、その中央の壁に埋め込まれているのが・・・・


「これが、魔力石。やっとあった。」


 深い青色は、深海かおとぎ話の竜の瞳のような色だった。

 魔力石に手を伸ばし、取れるか確かめようとしたとき、


 不意に、


 背後から気配が・・・



 「GRRRRRR!」



(ヤバっ、、、、


 振り向こうとしたときには、もう身体が宙を舞っていた。

 何が起こったか確認する間もなく、硬い壁に叩きつけられる。


「がっっ。かはっ。」


 痛い、焼けるような痛みじゃなくて、ズキズキと響くような痛みが全身に走る。

 どうやら、肋骨が数本折れたようだ。

 しかし、なんだあいつは。どこにいた?

 オークに似ているが、体格が倍くらいある。

 〈鑑定〉してみるか。


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 ボスオーク Lv51

 ・オークの群れを統制する。

 ・オークよりさらに攻撃力が上昇し、危険度が増している。

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 レベル差は3。狭い部屋の中、圧倒的に不利な状況だ。あそこまで逃げれるか?

 ボスオークの後ろにある細い入り口に目をやる。・・・いや、無理だろ。

 しかも、ここまで来て引き返すわけにはいかない。


『【スキル】〈苦痛耐性〉を獲得しました。』


 〈鑑定〉してて気付かなかったが、また新しい【スキル】を獲得したようだ。

 でも、いくら〈苦痛耐性〉があろうとも、もう一度あの攻撃は喰らいたくない。


「やってやろうじゃないか。」


【アイテムボックス】から剣を取りだし、起き上がる。


「grr!」


 ボスオークが小さく唸ると、メイスが横凪ぎに迫ってくる。

 バックステップでそれをかわし、剣でボスオークの右腕を切る。しかし、巨体には差ほど効かなかったらしく、すぐに攻撃がくる。


「おらッ。」


 威力が弱いなら、数で補えとばかりに、連撃を繰り出す。

 ボスオークはそれをうざったそうに、大振りをするが、剣で軌道を変えつつ、避ける。


「grrrraaaaa!!」


 斜めに降り下ろしてきたメイスが、火傷のある左腕にかするが、叫んで痛みを紛らわす。


『【スキル】〈苦痛耐性〉がLv2になりま・・・

「がああああぁっ。」


 再度、連撃を繰り出し、ボスオークの身体は全身切り傷だらけで、大量の出血をしていた。そのせいか、さっきよりも少し動きが鈍って来ている。しかし、俺も骨折しているので、どちみち不利な状況は変わらない。


『【スキル】〈ランページ〉を獲得しました。』


 なんだか分からないが【スキル】を獲得したなら使うべき。

 じゃなきゃ、この状況を打破出来ない。


「〈ランページ〉!」


 そう叫んだ途端に、身体が軽くなった。

 さっきまでの重みが嘘のように吹き飛び、剣を振る速度も上昇した。


「喰らいやがれっ!」


 切る斬る斬る切る斬る

 さらにボスオークの身体に傷をつけ、ダメージを深くしていく。


「grr G.GRRRRRR!」


 怒りに顔を歪ませたボスオークはとてつないスピードでメイスを横に凪ぐ。

 さっきまでなら避けられた攻撃だったが、〈ランページ〉を発動していた俺はすぐに避けに転じることが出来なかった。

 その一瞬が致命的なミスになる。


「ヤバi・・。」


 巨大なメイスに嘘みたいに吹っ飛ばされた俺は、洞窟の壁へと叩きつけられた。

 今日2回目のダメージだ。


「がはっ、ご、くはっ。」


 壁からの反動で咳き込んだ俺は、そのまま床に崩れ伏した。

 口元を押さえた手には、鮮血が付着していた。内臓までが損傷したらしい。

 しかし、戦場で敵は待ってくれない。ボスオークは、俺にとどめを刺そうと、近づいてくる。


『【スキル】〈苦痛耐性〉がLv3になりました。』


 全然使えねぇぞ、〈苦痛耐性〉。めっちゃ痛いもん。

 けど・・・・・


「ここで、こんな所で。」


 ボスオークは俺の目の前で立ち止まる。

 剣を握る手に力が入る。目には、不屈の精神がうかがえる。


「負けるわけには。」


 振りかぶられたメイスの合間を縫って、蒼色の光の粒が、俺の身体の周りで光り始める。

 なぜだろう?満身創痍まんしんそういなのに、力がみなぎってくる。


「いかないんだぁーーー!!!」


 立ち上がるのと同時に、勢いよく前へ剣を突き立てる。

 ボスオークの身体を貫いた確かな感触があり、振り下ろされかけていたメイスは、俺の近くで転がった。


 ほとんど前を見ずにただ前に突き出した剣は、綺麗にボスオークの胸を貫通していた。


『レベル56になりました。魔力量が280000に上昇し、ステータスポイントが90ポイント付与されました。レベル50に達したため、【エクストラスキル】〈超回復〉を獲得しました。また、【スキル】〈英雄の一撃〉を獲得しました。【称号】[英雄]を獲得しました。』


 なんか、めっちゃ来たけど特に今使えそうなものh・・・・


「ちょ、〈超回復〉。絶対に強い。【エクストラスキル】だs、がはっ。」


 また咳き込み、血を吐き出す。体内のダメージが深刻なようだ。

 〈超回復〉で回復か治癒が出来ればいいけれど。


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【エクストラスキル】  EP…4

 〈超回復〉Lv1…消費魔力40000

 ・身体全体の10%の怪我や病気を完全回復させる。

 ・闇属性魔法によるバッドステータス効果は回復できないが、状態異常なら回復出来る。

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 10%だと、多分間に合わないけど、レベルを上げたならどうだろうか。もう時間もないし、全EPを振るか。


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【エクストラスキル】  EP…0

 〈超回復〉Lv5…消費魔力200000

 ・身体全体の50%の怪我や病気を完全回復させる。

 ・闇属性魔法によるバッドステータス効果は回復できないが、状態異常なら回復出来る。

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 消費魔力20万か・・・・足りるか?


「ステータスオープン。」


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 イロアス 5歳 Lv56 魔力量200300/280000


【称号】

 [俊足の暗殺者]

 [忍び寄る者]

 [暗殺者]

 [スライムキラー]

 [ゴブリンキラー]

 [英雄]


【イレギュラーユニット特典】

 ・1LvUPごとに魔力量+5000、ステータスポイント+10。

 ・10LvUPごとにエクストラポイント+1


【ステータスパラメーター】  SP…106

 ・筋力…80     ・魔法防御力…70

 ・知力…80     ・物理防御力…70

 ・素早さ…80    ・器用…80


【エクストラスキル】    EP…0

 ・〈鑑定〉Lv2

 ・〈超回復〉Lv5


【スキル】

 ・〈忍び足〉Lv3

 ・〈熱耐性〉Lv4

 ・〈苦味耐性〉Lv5

 ・〈回復促進〉Lv3

 ・〈苦痛耐性〉Lv3

 ・〈英雄の一撃〉LvMAX


【アイテムボックス】

 ・セプチーニの枝×1

 ・スライムの破片×47

 ・リフレ草×64

 ・ボタナ草×9

 ・傷薬入りのビン117g

 ・輝緑石×6

 ・オークの角×24

 ・ボスオークの角×2

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 20300!使ったら300しか残らねーし。

 でも使うしかない。


「〈超回復〉」


 緑色の光が身体を包む。傷がどんどん治っていくのがむず痒い。


「ふぅ。生き延びた」


 ちゃんと肋骨の骨折も、内蔵の損傷も、ついでに左腕の火傷もすべて回復した。しかも、傷痕も残っていない。


 しかし、なぜこんな死亡ルートを通るんだ?

 普通、ボスオークは洞窟にいないはずなのに。

 異世界、長生きしたいな。


 俺の願いがどっかの管理者的存在な神に祈ろう。いるかどうか知らんが。




 今日は疲れた。魔力石を【アイテムボックス】にしまったら帰ろう。




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【スキル】〈英雄の一撃〉LvMAX 消費魔力30000

 ・精神的や身体的、立地的条件などで、不利な状況での、体力や精神力、残魔力量を加味して、最後となる攻撃が超大幅に強化される。

 ・この【スキル】は自動で発動し、不利な状況に追い込まれれば追い込まれるほど、強化の度合いが大きくなる。

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