第2話 【スキル】獲得

「今日も行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

「あ、イロアス。もし出来たら、リフレそうを取ってきてくれるかい?」


 出発しかけた俺の背に、ステラばあちゃんが頼みごとを言う。


「リフレ草って、あの山菜だろ。分かった。」


 じゃあ、レベリングついでにリフレ草を探すか。


 ◇

「スライムは狩り飽きたし、もう少し森の奥まで行くか。」


 この辺のスライムはほとんどLv1なので、Lv10である俺のレベリングには物足りない。

 ということで、森の奥へと突き進む。

 帰り道が分かるように、木々に印を付けておいた。


「あれは、ゴブリンか。」


 普段は4匹ぐらいのグループで固まって暮らしているらしいが、どうやらそのゴブリンは1匹のようだ。ちょうど良い、どのくらいの強さか試してみるか。


「〈鑑定〉。」


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 ゴブリン Lv7

 ・森などに多く生息している低レベルの魔物。

 ・集団で行動することが多く、武器を使うなど多少の知能がある。

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 レベル差は3しかないから、不意打ちで1撃で済ませたい。仲間が来ても厄介だしな。

 物影に隠れたまま、ゴブリンとの距離を縮める。途中で、『【称号】[忍び寄る者]を獲得しました。』と現れたが無視しておいた。


 ゴブリンまであと3m・・・・2m・・・・1m


「はぁっ。」


 背後から胸を一突き。剣を抜くと、ゴブリンは倒れた。


「レベル12になりました。魔力量が60000に上昇し、ステータスポイントが20ポイント付与されました。【スキル】〈忍び足〉を獲得しました。【称号】[暗殺者]を獲得しました。」


 なんだか一気に色んなものが来たな。[暗殺者]はかっこいいけど、〈忍び足〉はなぁ、なんか弱そう。なかなか使えそうだけど。


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【スキル】

 ・〈忍び足〉Lv1…消費魔力100/m

 自身の足音を立てにくくする。Lv10で走っても無音になるが、その分消費魔力量が増える。

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 LvMAXで無音は最強だが、一分で100魔力消費はなかなか多い。Lv1でこれだから、Lv10だともっと多いのだろう。


「そういえば、ステ振りはどうしようか?」


 知力も欲しくなってきたところだが、この世界の魔法について詳しくは知らない。

 ただ、筋力がSTRストレンジなら、知力はINTインテリジェンスだと思うので、魔法を使うなら知力は必須のステータスだろう。

 しかし、攻撃ステに振りすぎて防御がおろそかになっていると、今世も早死にしかねない。


「今んところは、防御両方に5ずつ振って、筋力にも5振るか。あとは、保留にしておこう。」


 このあたりの魔物に殺される心配はないだろうし。


「あ、あれは。リフレ草。」


 よく見ると、辺りにはリフレ草が群生ぐんせいしていた。

 これなら乱獲らんかくしても大丈夫だろう。


「これもあれも。1ヶ月分くらいは採れたな。・・・・・ん?・・・これは、何の草だ?」


 リフレ草の中に、点々と生えている草に意識が向く。その草からは、ハーブのような心地いい匂いが漂ってくる。


「〈鑑定〉。」


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 ボタナ草

 ・薬草の一種。

 ・リフレ草の近くで稀に見つかる。

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 稀にってレベルじゃないくらい生えているんだけど。

 リフレ草は大量に群生しているので、点々と生えているボタナ草も結構の数があった。


「薬草だし、ある程度は残しておこう。」


 ところで、薬草からポーションは作れるのだろうか?もし作れるのなら、もっと乱獲したいが・・・まぁ、ばあちゃんに聞いてみるか。あの人、なんでも知っているし。


「日が暮れるまでレベリングだな。」


 …


 ◇

「ただいま。」

「おお、イロアスか。お疲れ様。」

「あれ?ばあちゃんは?」


 家の中に居たのはカールじいちゃんだけだった。


「ばあさんなら、裏で風呂沸かしとるぞ。」

「分かった、ありがとう。あ、そう言えば、じいちゃん、はいこれ。」


 今日の収穫をじいちゃんに渡す。


「ヌーガ鳥2羽にオロ鹿1匹、まったくイロアスやは、りっぱな男の子じゃ。」

「ありがとう。じいちゃん。けど、少し多かったかな?」


 3人でこの量となると、1人あたりが多いはずだ。


「余ったら、干し肉にするけえたくさんとって来てええで。」


 おお!干し肉か。レベリングのおともに良いな。

 てか、じいちゃんが鹿とか鳥とか解体しているんか。あとで見せてもらおう。


「分かった。じゃあ、ばあちゃんにリフレ草渡してくるね。」


 ◇

「ばあちゃ・・・


「〈ファイヤ〉。」


 ばあちゃんがそう言うと、炎の渦が空に向かって伸びた。

 一瞬で、その炎は消えたが、熱波がこっちまで来た。


「あら、少しやりすぎたかのぅ。まぁ、だいたい火が付いたしこのくらいでいいかね。」


 ふぁ、〈ファイヤ〉だと⁉初めて見た。この世界の魔法。〈ファイヤ〉ってもっと小さいものだと思っていたんだけど、この世界は違うのか。炎の竜巻みたいだったし。

 てか、ばあちゃんなんかかっけえ。魔女みたい。あ・・・魔女は悪口なのか?


「おばあちゃん。リフレ草こんなに持ってきたよ。」


 あらかじめ【アイテムボックス】から出しておいた、・リフレ草×30をわたす。

 まぁ、残りの42枚くらいはまだ【アイテムボックス】の中にあるが、あの中では時空が止まっているらしいので、いつまでも保存は利くだろう。


「まぁ、よくこんなにぎょうさんあったのぉ。」

「たくさん群生している所があってね、そこでこれも見つけたんだ。」


 そう言ってこれもまたあらかじめ【アイテムボックス】から取り出しておいた・ボタナ草×3をばあちゃんにわたす。


「これはボタナ草じゃないの‼。よく見つけたわね、なかなか生えていない珍しいものなのよ。これで傷薬が作れるの。あとでつくってみるわ。」

「そうなんだ!じゃあ、ポーションは作れるの?」


 魔力回復ポーションとかはつくれたら重宝するだろう。けど、アルケミストじゃないと作れなかったりするのだろうか。はたまた、アルケミースキルがなければ作れないとか。


「ぽーしょん?何だいそれは。」


 あれ?物知りのばあちゃんが知らないのか。

 ってことはもしかしたらポーションが存在しないのか?

 それは残念だ。けど、まぁ、ないものは新たに創り出すしかないな。あとで書斎を調べておこう。


「あ、ばあちゃん火の番代わるよ。」


 さっきの〈ファイヤ〉についても聞きたいが、またあとでにするか。


「ありがとう。ごはんになる前に帰っておいで。」

「はーい。」


 …


「さてと、薪を燃やすか。」


 綺麗に切られた薪を、風呂底にくべる。

 おれにも使えるのかな、魔法。ばあちゃんの書斎から魔法書でも借りてみようかな。


「-っふー。」


 深呼吸をして、目を閉じる。

 体内のエネルギーを右手に集めるイメージで、1歩左足を踏みd・・・・・


「いっ。」


 近くの薪に足をぶつけ、体勢を崩す。


「あっ、ヤバ・・・あっ熱っ‼。」


 盛大に転び、左手は炎の中に・・・・。

 痛いイタイイタイイタイ。なんかデジャヴ。あっつ、てかヒリヒリしてジンジンするんだけど。

 炎の中に突っ込んだ左手は肘から手のひらにかけて、大きく水ぶくれができていた。


「【スキル】〈熱耐性〉を獲得しました。」


 文字通りの焼けるような痛みに耐えている中、視界に通告表示が出される。


「そんなのは、後で良いから、応急処置をしないと。」


 えーっと、手持ちで使えそうなのは・・・・ボタナ草!


「ちょうどいい。これ単体でも薬草だから、貼っとけばどうにかなるだろう。」


 希少種なんだし、それなりの効果は期待していいはずだ。

【アイテムボックス】から・ボタナ草×4を取り出して、患部かんぶに貼る。冷やすついでに、・スライムの破片×2をその上から乗せる。

 ひんやりとした感覚が気持ちいいし、ローションみたいななめらかさが、傷口に浸る。


「【スキル】〈回復促進〉を獲得しました。」


 回復促進?つまりは、傷の治りが早くなるのか?そうだといいけれど。この火傷、痕が残りそうだな。

 傷自体は、萌え袖をすれば隠せるが、戦闘に支障が出る。早く治ってくれ。

 しかし、軽微の火傷を繰り返して、〈回復促進〉をLvUPさせたいな。


「まずい。そろそろごはんだ。」


 俺は、火傷をかばいつつも、ダッシュで家に戻った。




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