第一章 異世界でレベリング

第1話 目を覚ました先は森

  ……


 そして今は・・・・・・・・見ず知らずの森の中。

 ここは誰?私はどこ? なんちって。

 着ている服は、日本では見ないローブみたいなモノ。靴は動物の革靴みたいなやつ。

 ほっぺたをつねっても・・・


「痛っ」


 夢ではないようだ。もしかしたら、走馬燈かな?けど、あれって今までの記憶が甦るっていうもののはずだ。しかし、残念ながらこんな雄大な自然に見覚えは全くない。


 あれ、俺って死んだはずじゃ、しかも、奇跡的に生きていたとしても、普通は病室で目を覚ますし。……もしかして、


「これって異世界転生ってやつじゃね?」


 いやいや、そんなまさか。もしかしたらテレビ局が大掛かりでやったドッキリかもしれない。なんで俺が対象なのかは不明だが。

 でも、もし本当に異世界転生なら、めっちゃ大はしゃぎしたい。生粋きっすいのラノベオタだった俺の最大の願いがかなったのだから。

 まぁ、欲を言うならもう少し長生きしたかった。死に方はかっこいい方だと思うけど・・・・うん、そう思いたい。


「てか、ここってどこだよ。さっきまで駅の近くだったのに」


 俺の呟きは鬱蒼うっそうとした森に消えてゆく。

 周りを見渡すと少し冷静になってきた。今までだって信じられないくらい冷静だったが、どうやらあの事件から少しだけ自分が変わったみたいだ。


 よし、転生したかどうか分かるのが、テンプレのだろ。試してみるか。


「〈ステータスオープン〉」


 俺がそう言うと、目の前にゲームでよく見る、半透明の板みたいなのが現れた。



 ――――――――――――――――――――――――

 イロアス 5歳 Lv0 魔力量 0000/0000


【称号】

   ー


【イレギュラーユニット特典】

 ・1LvUPごとに魔力量+5000、ステータスポイント+10。

 ・10LvUPごとにエクストラポイント+2


【ステータスパラメーター】  SP…0

 ・筋力…1     ・魔法防御力…1

 ・知力…1     ・物理防御力…1

 ・素早さ…1    ・器用…1


【エクストラスキル】    EP…0

 ・〈鑑定〉


【スキル】

   ー


【アイテムボックス】

   ー

 ――――――――――――――――――――――――

「へー、ラノベとかでしか見たことなかったけど、本当に出るのか」


 ただ、これでドッキリ説はほぼ無くなった。これを現実で再現できる技術は流石にないだろう。ホログラムだって映し出すにはなんかしらのスクリーンが必要だし。


「なんだ?イレギュラーユニット特典って」


 察するに、俺がイレギュラーユニットってことだろうが、そうなると誰かが意図的にこの特典を与えたことになる。まるでゲームの中の世界のようだ。Lvとか【ステータスパラメーター】とか、しかも、【エクストラスキル】って超強そうだ。

 そんな事できるのは神とかか?それともこの世界の管理者的な存在が・・・・


「まぁ、いいか。そんなこと考えても答えは出ないだろうし。今は出来る事からやってこう」


 前世よりは長生きしたいし、もう少しましな人生を歩みたい。スローライフとまではいかなくても、そこそこの自由が約束された生活が望みだ。

 そのためには、このわけのわからない状況か抜け出さないといけないが、自分がどこにいるかも分からない場合は下手に動かない方が良い。


 まずは、SPとEPについてはステータスポイントとエクストラポイントだと分かるが、1LvUPで魔力量+5000とか上昇幅がすごいな。・・・・この世界の基準知らんけど。

 次は、エクストラスキルとかいう、いかにもヤバそうなやつから確認するか。


「〈鑑定〉ってこれまたテンプレだよな。あとは大賢者とかテイムとか」


 ステータス画面に表示されている〈鑑定〉って部分をタップしてみると、詳細情報がさらに表示された。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

【エクストラスキル】    EP…0

 ・〈鑑定〉Lv1…消費魔力0

 鑑定したいものを見ながら〈鑑定〉と念じると、そのものの詳細情報が表示される。Lvを上げると、より多くの情報が分かる。見たいものを選択して、特定の一部分だけを見ることも可能。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――


「まぁ、試してみるか」


 そこらに落ちている小枝を拾い、〈鑑定〉を発動してみる。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 〔セプチーニの枝〕

 ・針葉樹セプチーニの枝

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ここら一帯に生えているのは、セプチーニって言う木なのか。前世ではそんな名前の木なんて聞いたことないしな」


 他のものも〈鑑定〉しようと近くのものを見渡したとき、木々の向こうに居たおじいさんと目が合う。第一村人発見!って雰囲気ではない。

 まずい、周りに対して注意が散漫だった。森なんて魔物の巣窟だろうに。相手は盗賊には見えないが、味方かどうか分からない。

 だが、バレてしまったので仕方がない。とりあえず声をかけてみた。


「あ、どうも」

「…」

「ば、ばあさんや。子どもがおるぞ、森に子どもがおったぞ」


 おじいさんは驚いて大声でおばあさんを呼んだ。

 ヤバい、言語通じるのか?という不安はすぐに打ち消された。召喚主の力で相手の言語が日本語に変換されているのか、めちゃくちゃ流ちょうな日本語が返ってきた。


「あ、あの~」

「どうしたんじゃ?なんでこんなとこにおるんじゃ」


 おじいさんは心配そうに尋ねる。

 弱いが魔物もいる森に子供一人でいたのだ。心配するのも無理はない。


「いや、気づいたらここにいて・・・・・」

「そうかそうか、怖かったろうに」


 おじいさんは俺に近づいて頭を撫でてきた。

 ん?待てよ、おじいさん高すぎない?・・・・・いや、俺が縮んでいるのか!?

 アポ○キシンでも飲んだかのように、気が付くと身体が縮んでしまっていた。

 見た目は子供、頭脳も子供……


 ◇ おじいさんおばあさんに連れられて近くの村へ

「今さらだけど、子どもに転生するとは。まぁ、高校生も子どもか」


 なぜ、中途半端に成長した5歳児くらいの身体になったのか。まぁ、赤ちゃんよりは自由に動けるけど、子どもだと色々と不自由が多い。


「ほれ、飯でもくいなはれ」


 考えごとをしていた俺に、おばあさんはごはんを用意してくれたらしい。

 そういえば、学校帰りから何も食ってないな。

 考えごとをやめ、顔を上げた先にあったのは、茶色い米と味噌汁、キノコと何やら分からん山菜のサラダだった。


「おお!米はこの世界にもあるのか」

「なんじゃ、米を見るのは初めてか?なんせここでしか育たない特産品だからのう」


前世のに比べると、精米技術が発達していないのか玄米だった。しかし、自分になじみのある物があって良かった。ホームシックにはならなそうだ。


「あら、おじいさん。そんな我が物顔で言われても困ります。愛情込めて育てたのはわたしですから」

「そうじゃった、そうじゃった。どうだ、美味いだろう、ばあさんの手作り米は」

「とっても美味しい!」


 一口食べた俺は、大きな声でそう言った。

 おじいさんとおばあさんは、嬉しそうに顔をほころばせた。


 …


 その後、おじいちゃんとおばあちゃんに色々と聞いて分かったのだが、ここはアルミラーノ帝国の東端に位置する、名もなき村らしい。近くには王国があるのだとか。そして、この世界では魔法が存在し、帝都にはマグルス魔法学園があるらしい。入学は15歳かららしいので、あと10年でチート無双できるステータスになりたい。


 ◇


「鏡よ、鏡。鏡はどこだ?」


 夕食後、俺は鏡を探してうろついていた。

 なぜなら、転生した顔を見たいから。前世はフツメンだった。悪くはなかったと思いたい。俺に圧倒的コミュ力があればモテたかもしれん。


「あ、あった」


 何故か風呂場がなく、おばあさんの部屋に鏡があった。

 どれどれ、俺の顔は?


「おお」


 なかなかかっけえ。

 蒼氷アイスブルーの髪に、鋭い眼つき、前世より高い鼻、それに、紅蓮ぐれんの瞳。

 髪の毛と眼の色が蒼と紅と綺麗な対比になっていて、存在感を際立たせる。


「いいな、異世界。俄然がぜんやる気が出てきた」


 ◇ それから数日後

「カールじいちゃん。俺、森に行ってくるよ」

「ああ、日暮れまでに帰ってこいよ」


 良し、準備万端。ちゃんと剣は持っているし、ここらへんの魔物は弱いはずだ。

 ステラばあちゃんのお弁当も持ったし、大丈夫だろう。


「さぁ、レベリングだっ!」


 カールじいちゃんとステラばあちゃんは、身寄りの無い俺を引き取り、可愛がって育てることを約束してくれた。

 この恩に報いるには、少しでも貢献しないと。

 ◇

「いた‼スライムだ」


 スライムはこの世界の魔物の中で、一番弱い魔物らしい。(ばあちゃん情報)

 ラノベの中では、打撃攻撃が効かなかったり、核とかコアを壊さないと死ななかったりするのもいるけど、この世界のはどうだろうか?


「〈鑑定〉」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 スライム Lv1

 ・この世界で最も多い魔物。

 ・この世界で2番目に弱い魔物


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――


 な、何‼1番弱い魔物が他にいるのか。

 だけど、2番目でも弱いはずだ。


「よし、いくぞ!」


 じいちゃんから貰った剣を大きく振りかぶって、スライムに振り下ろす。コアみたいなのは無かったので、とりあえず切ってみる。


「プギィ」


 断末魔の悲鳴を上げてスライムはただの肉塊、いやただのゼリー塊になった。


 そうして続けること約1時間


『レベル2になりました。魔力量が5000に上昇し、ステータスポイントが10ポイント付与されました』

「うわっ、ビックリした」


 目の前でいきなり、その通告表示画面が出された。1体ずつ倒していたから良かったけど、群れと戦っているときに出てくるのは悪仕様だろ。


 そう言えば、【イレギュラーユニット特典】でそんなものがあったな。

 ステ振りどうしよう?最近のMMORPGは、極振りが強いけど、この世界はそうだと限らない。というか、多分、最初はバランス良く振るべきだ。

 だが、本当にこれでいいのだろうか?ゲームでは特殊アイテムとか、○周年記念の特典でリセットできたが、ここではできない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

【ステータスパラメーター】  SP…0

 ・筋力…3     ・魔法防御力…2

 ・知力…2     ・物理防御力…2

 ・素早さ…4    ・器用…2

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――


 さんざん悩んだ挙げ句、素早さと筋力にちょっと振って、あとは、+1ずつしといた


 よし、もっとレベリングしよう。


 ◇

「ただいま。カールじいちゃん、ステラばあちゃん」

「おかえり、イロアスや」

「おかえりなさいイロアス。怪我はないかい?」

「大丈夫だよ。それよりも見てみて!鹿を捕まえたんだ」


 今日の成果を2人に見せる。


「オロ鹿じゃないか。良く取れたな」


 まぁ、素早さ重視のステ振りだからな。不意をつけばこの身体でもいける。それに相手は逃げてくだけだから反撃の心配もいらないしな。


「今日の晩御飯は豪勢ね」


 あー、こういう生活も悪くない。

 自給自足生活というか、山暮らしみたいな。


 ちなみに、今の俺のステータスはこんな感じ。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 イロアス 5歳 Lv10 魔力量 50000/50000


【称号】

   [俊足の暗殺者]


【イレギュラーユニット特典】

 ・1LvUPごとに魔力量+5000、ステータスポイント+10。

 ・10LvUPごとにエクストラポイント+2


【ステータスパラメーター】  SP…6

 ・筋力…10     ・魔法防御力…10

 ・知力…10     ・物理防御力…10

 ・素早さ…50    ・器用…10


【エクストラスキル】    EP…1

 ・〈鑑定〉


【スキル】

 ー


【アイテムボックス】

 ・セプチーニの枝×1

 ・スライムの破片×3


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 素早さに振った戦闘スタイルを中心にしている。ヤバくなった時に早く逃げれるし。






 ______________________________________

 2024 7/29:行間とセリフ細部、説明不足を修正





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