婚約破棄されたのでイメチェンしたらモテました
茜カナコ
第1話
ある朝、令嬢ベリンダ・ムーアは呆然と立ち尽くしていた。
「大丈夫ですか? ベリンダ様」
「ええ。……ちょっと一人にさせて下さい」
手紙を届けたトーマス家の使いを屋敷に帰すと、ベリンダはもう一度手紙を読んだ。
「貴方は大人しいだけで、何を考えているか全く分からない。婚約破棄させてもらう。コンラッド・トーマス。……読み間違いではありませんね」
ベリンダは一人呟いた。
「ずっと、我慢してきたのにこんなことって有るのですね! それでは私も好きなようにさせて頂きましょう!」
ベリンダは町の髪切り屋を呼び寄せると、腰まであった金色のロングヘアーをショートカットに切ってもらった。
「大分、軽くなりましたわ。次はドレスを買い換えましょう!」
ベリンダはそう言うと、町一番のドレス店に行き、深紅のドレスを身にまとった。
「今までは、地味で目立たない物をえらんでいましたが、もう自由に好きな色を選べますわ!」
ベリンダは金髪のショートヘアーに深紅のドレスで、さっそうと町を歩いた。
「コンラッド様はよい方でしたけれども、他人の目を気にするところがありましたからね。こんな格好を見られたら、卒倒されてしまうかも知れませんわ」
ベリンダは気持ちが軽くなっていた。
「あら、あそこにいるのは騎士のシリル様ですわ」
ベリンダはシリルに挨拶をしに行った。
「ごきげんよう、シリル様」
「……はじめましてでは有りませんか? ……!? あなたはベリンダ様ですか!?」
ベリンダは驚くシリルを見て上機嫌だった。
「これは、何かあったのですか? ずいぶんと雰囲気が変わっておられますが」
シリルは言葉を選んでいた。
「私、婚約破棄されましたの。ですから、自由に振る舞うことに決めたのですわ」
「それは、お気の毒に……というよりも嬉しそうですね」
「ええ、今までは自分を押し殺しておりましたから」
ベリンダはそう言って微笑んだ。
シリルの顔が赤くなる。
「それでは、今度舞踏会に誘ってもよろしいですか?」
「まあ、喜んで」
シリルの申し出にベリンダは快諾した。
「コンラッド様はもったいないことをしましたね」
シリルがそう言うと、ベリンダは答えた。
「無理をしていた私が悪いのですわ。今はこんなに軽やかな気分ですもの」
シリルが言葉を探しているとベリンダは話し続けた。
「コンラッド様には申し訳ないことをしましたわ。今の私なら、違う答えを出せたかも知れませんもの」
ベリンダはそう言って、シリルにお辞儀をすると去って行った。
「ベリンダ様がこんなに可愛らしいだなんて、コンラッド様は気付いていなかったのですね」
シリルは軽やかに歩いて行くベリンダを見送った。
婚約破棄されたのでイメチェンしたらモテました 茜カナコ @akanekanako
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