異世界化物譚〜固有スキル【吸収】のせいでパーティ追放されました〜
Leiren Storathijs
プロローグ
俺の名は高橋透。ごく普通の何処にでもいるような高校生だ。俺は四人の親友と呼べる友達がいる。
いつも俺のテンションに合わせて盛り上がってくれる
いつもぼーっとしていて何を考えているか分からない
四人の内のムードメーカー。いつも明るい
大体おどおどしていて、場に何かと溶け込めずによく姉の香織に助けてもらっている神崎
俺たち五人は幼稚園の頃から一緒で、本当に仲が良い。
ある日のこと。俺はとある小説で読んだ異世界転生についてを話題に上げた。
死後の世界は天国か地獄しかない。それは俺らの普通の認識だ。たが、もし本当に死後に来世というものがあるのなら。もし本当に夢のような異世界があるのなら。
今から死んでも行ってみたい。
そんな望みは俺たちを学校の屋上へと足を駆り立てた。
「よぉし、これだけの高さがありゃ確実に死ぬだろ」
「ひゅーたっけー!」
「高い……」
「あるかもわからない場所に、あたしら死ぬまで行こうとするとかほんっとバカね」
「ほ、ほんとにここから飛ぶの? 落ちたら死んじゃうよ?」
それぞれ本当に異世界の存在を知りたいと考えている。今更死ぬことを心配している詩織だって、異世界の話をしている間は目をキラキラさせていたからな。
そう、俺達は夢を叶えるためなら死ぬのも躊躇わない。そんな五バカと言われていた。
実際そうだ。俺たちはこれから本当に死ぬのだから。だがこれは決して失敗してはならない。奇跡的に一人生き残るなんてことあっちゃならないんだ。
「天気も風もいい感じだ。みんな、柵を乗り越えろ。先に落ちんじゃねぇぞ?」
「ははは! なんなら俺がてめぇの背中押してやろうか?」
「俺の惨たらしい死体を見たいならどうぞ? 見たくねぇんなら、一緒に死ぬ方が良いだろう?」
そうして俺たちは柵を乗り越えた。ここから一歩踏み出せば俺たちは死ぬ。人生に悔いなんて無い。だってこれから新たな人生を歩むことになるのだから。
「じゃあみんな。手を繋いで、いっせーので飛ぶぞ。恐怖なんて捨てろ。思いっきりテンション上げて飛ぼうぜ!」
「おうよ!」
「あぁ……」
「うん!」
「はわわわわ……」
息を一気に吸い込む。腹一杯に空気を入れたら……。
「いっせーの! いええええええい!!」
「ふおおおおおぉ!」
「っ……」
「いやっほおおおぉう!」
「わああああぁ!!」
俺は隣の晃の手を絶対に離すまいとしっかり掴み。思いっきりジャンプする。
全身に真下落下する重力と、向かい風が打ちつける。
だんだんと近づく地面。楽しさいっぱいに俺は叫ぶ。
そして俺は一瞬にして意識を失った。全身に伝わるはずの激痛さえも知らない程に。俺たちの死に様はどんな感じだったのだろう。
辺りは真っ暗で何も見えない。地獄か天国かも分からない。だがなぜか真っ暗な空間にいるという意識はあった。恐らくこれが死後の世界というものなのだろうか。
俺はしばらくそこで彷徨っていると、真っ暗な空間に一筋の光が見えた。あれは脱出口か、それとも天国への入り口か。俺はただ何も考えずにその光へと走った。
近づけばどんどん光は眩しくなり、聞き覚えのある声も聞こえてくる。そう、あの四人の声。
おまえら、そこにいるのか? そこは異世界か? なら待ってろ! 俺もすぐに行く!
俺は光にむかって更に走る。更に眩しくなる光。やがて光は俺を包んだ。
一気に視界が開ける。そこは小説で見たようなファンタジーな王宮だった。さらに周囲に唖然とした表情の四人もいた。
「成功だ……成功したぞおおおおぉ!」
「うおおおぉ! すげえええぇ!」
「出来た……本当に出来た……」
「やったああああぁ!」
「ここが異世界……わぁ……!」
俺は喜び、叫び、とにかく皆んなと喜び合った。生きてる。生きてる。俺たちは生きて異世界に来れたんだと。
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