第71話 事件の真相

男が下を向くと、白銀に輝く剣が自分の腹部を貫いている。



「なん…で?」



剣を抜き取り、男のそばからティナの方に移動するロック。



「残念だけど、そのスキルは僕には効かなかったみたいだね。」


「ば、バカな…。

 そのブレス…レットの色、C級冒険者だ…ろ。

 効かないはずが…。


 くっ…。


 [ミドルヒール]。」



男は【中級回復魔法】を持っているようだ。



(<スキルスナッチ>。)



『どのスキルを奪いますか?』


『【マインドコントロール】スキル

 【中級回復魔法】スキル』



(…これでミラやティナをおかしくしてたのか…。

 【マインドコントロール】。)



『【マインドコントロール】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』



(【中級回復魔法】。)



『【中級回復魔法】スキルは完全に消滅しますが、よろしいですか?』



(うん。)



『【中級回復魔法】スキルと【マインドコントロール】スキルを入れ替えました。』




男が自分を回復している間にスキルを奪ったロック。



スキルの効果を確認する。



++++++++++++


【マインドコントロール  ★★★★】・・対象を洗脳する。相手との魔力の差によって深さが変わる。


++++++++++++




(恐ろしい能力だな。

 相手の魔力が僕よりも高かったら終わってた…。)


ロックが男を刺した時から動きが止まっていた、ティナが気付く。


「…え?

 え?わ、私…?」


「ティナ大丈夫?

 こいつのスキルで操られてたんだよ。


 さて…。」


「いい気になるなよ?

 もう1度洗脳してや…」



男がそう言いかけたところで、ロックが相手に向けて手を向け、こう呟いた。



「【マインドコントロール】。」



「なっ!!?」



驚愕の表情を浮かべる男、…だったが、洗脳され虚な目の感情のない表情に。



「…どういうこと?」


「こいつの【マインドコントロール】っていうスキルで洗脳されてたんだ。

 ティナも、おそらく後ろに繋がれているミラやその隣の人も。

 

 今、スキルを奪って逆に洗脳状態にしたから、2人を助けよう!」



繋がれているミラともう1人の女性の元へ駆け寄るロックとティナ。


「鎖の鍵がいるわね。」


「そうだね。

 

 おい、鍵を渡せ。」


「…はい。」


無感情に返事をし、素直に鍵を渡す男。


「洗脳…、怖いわね…。」


「うん…。」



鍵で鎖を外し、2人を横に寝かせた。


2人は気を失っている。



「さて…。」


男の方を向くロックとティナ。


「聞かれたことに正直に答えるんだ。

 いいな?」


「…はい。」


「お前はスレッグ大佐か?」


「…はい。」


「なぜこんなことをしていたのか話せ。」


「…はい。」


スレッグ大佐は虚に話をし始めた。



大佐によると、ミラが最初に覚醒したのはユニークスキルだった。


その名は【スキルギフト】。


自分のスキルを人に与えるスキルらしい。


そのことを部下から報告され、すぐに無理矢理担当を変わった。


まずはミラの残りのスキル覚醒のため、マンツーマンで無茶な訓練を行った。


早くレベルを上げるために高ランクモンスターと1人で戦わせたのだ。


もちろん死なれては困るので、【マインドコントロール】でモンスターを洗脳してから。


ただ、深い洗脳は自分の精神力も消費する。


最低限の洗脳で戦わせたので、ミラは何度も死にかけたようだ。


ミラはスキル4つ持ち。


全てのスキルを覚えたのがLv25とかなり遅かった。


その当時のミラのスキルが




++++++++++++


【スキルギフト ★★★★★】・・対象へ自分のスキルを与える。与えられたスキルは入れ替えなくてもよい。与えたスキルを対象が受け入れなかった場合、そのスキルはなくなる。ユニークスキルは与えることができない。


【中級回復魔法 ★★★】・・中級までの回復魔法を全て使用できる。


【杖使い ★★】・・杖術が下級レベルになる。


【魔力30%UP ★★】・・魔力が15分間30%UPする。MPを6分の1消費する。


++++++++++++



(魔法よりの強力なスキル構成だな。

 ただ、ユニークスキルはミラにとってはプラスにはならなそうだ。

 逆に…、こんな悲劇を起こしてしまった。)



スキルを全て覚えた後、スレッグ大佐はミラを洗脳した。


そして、【スキルギフト】で【中級回復魔法】を与えさせ、自分の★1で弱かったスキルと入れ替えた。


残りのスキルも自分の腹心である部下に与えさせた。



…それで終わりではなかった。



スレッグ大佐は【スキルギフト】をなんとか他の冒険者に与えさせようとしたのだ。


だが、スキルの説明には『ユニークスキルは与えることができない。』と書いてある。


洗脳されていても、ミラには【スキルギフト】を与えることはできなかった。


それでも諦めなかったスレッグ大佐はミラを拷問し、隣に捕まっていた女性へ【スキルギフト】を与えることを強要していたのだ。


ここ数日は食事もまともにさせていなかったらしい。



スレッグ大佐はそこまで話すと、口を閉ざした。

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