第62話 魔武器を求めて⑩

「ゴオオォ!!」



猛攻を続けてくるミスリルゴーレム。


さすがA級モンスター、一筋縄ではいかない。



(【力30%UP】は持続時間が15分。その時に隙ができないか…?)



ロックの淡い期待は裏切られる。


【力30%UP】も攻撃をしたまま発動するミスリルゴーレム。


(【力30%UP】の消費MPは最大MPの6分の1。MP切れを待つって手もあるけど…。

 それまでかわし続けるのは厳しいな…。

 攻撃するにしても【中級回復魔法】を奪わないと、相手は回復し続ける…。)



ロックが打開策を見つけられずにいると、突然矢がミスリルゴーレムにヒットし始める。


ティナがミスリルゴーレムとの距離を詰めて攻撃している。


「ティナ、危険だ!

 もう少し距離とって!」


「でもこのままじゃ打つ手がないでしょ?!

 私だけ安全なところにいられない!」


まともに当たれば、確実にHPを削るティナの矢。


ミスリルゴーレムもティナを無視できなくなってきた。



「ゴオオ!」



再び全身が淡く光り、[ミドルヒール]を発動するミスリルゴーレム。



「くそっ!」



その直後、ティナも淡く光った。


【全能力50%UP】をかけ直したのだ。


そしてミスリルゴーレムも【力30%UP】を発動させた。


これで半分以上はMPを消費しているはず。


(このままMP切れを待つべきか…?

 【起死回生】もあるけど、HP1で肉弾戦は危険すぎる…。)



迷いが生まれ、集中力が途切れたその瞬間をミスリルゴーレムは見逃さなかった。


ミスリルゴーレムのしかけたフェイントに引っかかってしまうロック。



「くっ!」



避けきれないと判断し、剣で受け止める。



ピシッ。



「あっ!

 剣が…!」



パキー…ン…。



ずっと使い続けてきたディランの剣が…、折れてしまった…!


そして攻撃を受け止められず、敵の攻撃がロックを直撃する。



「ぐあっ…!」



吹き飛ぶロック。


HPは半分以下に。



「ロック!!!」



「…大丈夫!!

 ティナは離れてて!」


(こうなったら【起死回生】で隙ができた時に、【中級回復魔法】を奪う!)



格闘技には慣れていないため武技は使えないものの、【武闘家】スキルによって格闘技術はかなり向上してるロック。


剣が折れているため、ミスリルゴーレムとガチンコの殴り合いをする。



「うおぉお!」


「ゴォォオオ!!」



HPが全快であれば、この殴り合いもロックに分があっただろう。



…【中級回復魔法】がなければ。



お互い直撃を避けながら攻撃を繰り出し、HPが徐々に減っていた。



が、ミスリルゴーレムはHPが半分ほどになると、[ミドルヒール]で回復してしまう。


ちょうどその頃、ロックのHPが尽きかけていた。



そして…。



「ゴォ!?」



突如ロックから衝撃波が発生し、ミスリルゴーレムが後方に弾かれる。


だが、盗賊たちの時と比べるとその距離は短い。




「<スキルスナッチ>!」




だが、チャンスは今しかない。


【中級回復魔法】を奪おうとスキルを発動。



しかし…!



距離が足りない。


ロックのHPは1。


攻撃力は2倍になってるが、相手の攻撃がかすりでもしたら死ぬ。


しかも、スキル発動中で相手の攻撃に集中しきれない。



(くそ…っ!

 避けろ…!)



攻撃を回避しようとするが、死にかけている身体は思うように動かない。



(まずい…!!)





ゴシャッッ!!









ミスリルゴーレムの拳が直撃した。











吹き飛んだのは…、ティナ。





「ティ…、ティナーー!!!」

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