第11話 揺れる双丘とむっつり心

池から出てきたなにかは、カイルの右腕に激しく噛み付いた。


「ぐぁ…っ!」


噛み付いたのは、ワニのモンスターだ。



「「カイルさん!!!」」


「大丈夫だ!

 こっちに来るんじゃねえ!」


「でも…!」


「だ、大丈夫!

 こいつは…、ワニダイルか…。


 にしちゃあ、力がつええな…。

 は、外せねぇ…。」



噛み付いて離れないワニダイル。


鋭利な歯はますますカイルの腕に食い込んでいく。



「ぐ…。

 もしかして、ス、スキルか…?


 ロック!

 こいつのスキル奪ってみてくれ…!」


「スキルを!?

 わ、わかりました!


 <スキルスナッチ>!」


(おねがい!

 カイルさんを助けたい!)



『【力30%UP】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』



「【チャンバラ】!」



『【チャンバラ】スキルは完全に消滅しますが、よろしいですか?』



「いいよ!」



『【チャンバラ】スキルと【力30%UP】スキルを入れ替えました。』



「カイルさん!?」


「や、やっぱりな…。


 ぐっ…、


 ふんっ!!」



カイルは左手でワニダイルの上顎を掴み、口をこじ開けた。


そして体制を崩したワニダイルの口の中に、一本の矢が突き刺さった。



「カイルさん、大丈夫!?」


タイミングを計ってたティナの放った矢だ。



「ゴヮァ…!」


ワニダイルは矢を抜こうともがいている。



「レベルが20近く低いはずなのに、力がやけに強いと思ったぜ。

 なんかスキルで力をあげてやがっただろ?」


右腕から血をダラダラと流しながら、ワニダイルを睨みつけるカイル。



「はい!

 力を30%あげるスキルでした…!」



「<ミドルヒール>。」


カイルの右腕と、添えてある左手が淡く光る。



「うしっ!」


噛まれた右腕をグルグル回し、そのまま拳でワニダイルを殴りつけたカイル。


矢が刺さって口を閉じることもできないワニダイルはもうフラフラ。



「ティナ、もう1本喰らわしてやれ!」


「はいっ!」



パシュッ!



もう1本の矢も口の中に突き刺さり、ワニダイルは息絶えた。



『レベルが上がりました。』






「気をつけろって言いながら…、恥ずかしいなぁ。

 ちくしょう。」


「あんなモンスターに噛まれて平気なんですから、びっくりですよ。」


「ほんとね。でもびっくりしたわ…。

 魔法で治る傷でよかった。」


「さっきのティナの矢、すごい威力だったね!

 レベルだいぶ違うのに!」


「スキルでステータスを50%UPして攻撃したの。

 助けなきゃって思って。


 きっと、口を開けてたから、急所に入ったのね。

 じゃなきゃダメージは与えられなかったと思うわ。」



急所攻撃になると、防御力無視ダメージを与えることができる。



「それでね。

 さっきの戦闘で、レベルが上がったの!」


「よかったな!

 しっかり攻撃が効いてたってことだ!」


「おめでとう!

 見せて見せて!」


「うん!

 ステータス。」




************


名前:ティナ

パーティ:ラフリンクス

Lv:5→7

HP:462→593

MP:64→86

体力:47→61

力:37→51

素早さ:39→53

器用さ:43→60

魔力:62→84

スキル:

【   】

【慈愛の祈り ★★★】

【全能力50%UP ★★★★】


************




「一気に2つ上がったわ!」


「おおー!すごいね!

 僕もがんばらなきゃ!」


「さっき奪ったスキル見せてみな。」


「はい!」




++++++++++++


【力30%UP ★★】・・力が15分間30%UPする。MPを6分の1消費する。


++++++++++++




「お、使えそうなスキルが手に入ったな!」


「よかったね!ロック!」


「カイルさんが噛まれた時はどうしよう、って思ったけど、大収穫だったね!」

  

「カイルさん、カエルの誘惑が実は効いてたんじゃない?」


「ば、ばっかやろう!

 俺はカエルに恋する趣味はねえ!」


「ハハハハ!」


「ふふふ。ムキになるところが怪しいのよね。」



仲良く談笑しているが…、


2回目の矢を射った時のティナの双丘の揺れが頭を離れないロックだった。



(あの丘の揺れは震度5くらいあったな…。


 …カイルさん、怪我までしてたのに…。

 ごめんなさい。)


誠実なのにむっつりで、すぐ自己嫌悪になるロックだった。

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