第6話

雪が、しんしん降る夜に、おときは泣きながら、おじさんの家を出て行きました。


 雪はおときの小さな肩に、頭に降り積もっていきます。冷たさに声を出すことも、泣くこともできません。行く当ても無く歩いて、歩き疲れたおときは、いつに間にか、村のはずれの小さな神社の前に来ていました。冷たい雪は、まだ降り止みません。


おときは古い木の鳥居をくぐりました。


 静かな夜でした。なにひとつ物音はしません。ただ空から雪がふりそそぐだけでした。


 おときは、大きく両手を上げると、その場に、眠るように倒れてしまいました。


(おとき……)


 しんしん降りそそぐ、雪の中から、優しくおときを呼ぶ声が聞こえてきました。


(おとき……)


 その声はもう一度、おときを呼びました。


 こんな優しい声で呼ばれたことなど、今まで一度もありませんでした。


(もしかして、神様……)


 おときは、心の中で問いかけてみました。


 雪が、おときの倒れた身体の上に降り積もります。なのにちっとも冷たくありません。


 おときは、夢を見ていました。


 優しく抱っこされてる夢。


 おときは、心の中にしまいこんでいたけれど、ずっと呼びたかった言葉を口にしました。


「お母ちゃん……」   


 おときは幸せでした。


優しいお母さんの胸の中で眠る夢を見ていました。冷たさも寒さも感じません。


おときは、いつの間にか深い眠りにつきました。

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