第5話

ある日のこと、事件が起こりました。


 戸棚の中に入れておいたお饅頭が、一つ、無くなっているというのです。


 すぐに、おときが呼ばれました。


「おとき、ここにあったまんじゅうを、食ったのはお前かぁ!」


 おじさんは、顔を真っ赤にして、大声で怒鳴りました。


そして、おときの小さな体を蹴ったり、叩いたりしました。この時代のお饅頭というものはとても高価で、おじさん一家でも、一年の内のほんの数回しか食べることができません。


「あたしじゃない。あたしじゃありません」


 おときは、一生懸命、自分ではないと訴えました。


「お前じゃなかったら、誰が盗ったと言うんだい」


 おときは知っていました。おじさんとおばさんが、出掛けて誰もいないとき、おのぶとおせんが、おいしそうにお饅頭を食べていたのを、


「でも、あたしじゃ、ありません」


「お前以外、誰が食べるんだい。お前みたいなうそつきのどろぼうは、家に置いとくわけにはいかない。今すぐ出て行け」


 どんなにあやまっても、もう、おときは許してもらえませんでした。

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